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岩窟の入り口で背の荷物を降ろしたレイブは、その背嚢(はいのう)の上部にぶら下げていた二つの大桶を手にすると、ペトラとギレスラに向かって言う。
「じゃあ僕は水を汲んでくるからさっ! その間に他の荷物を穴ぐらの中へ隠しといてよ」
『ワカッタヨ、グガッ』
素直なギレスラに微笑を返したレイブは軽い足取りで遥か遠くにある水場へと向かおうとしたが、その背にペトラの声が投げ掛けられる。
『レイブお兄ちゃん、水だったら穴ぐらの中に滴り落ちているわよ? それを溜めれば良いんじゃない?』
「へぇ~、そうなんだ! そりゃ楽で良いね、んじゃそうするよ、じゃあ皆で持って来た荷を隠しちゃおっか?」
『ウン』
『そうだわね』
お互い納得した後は、岩窟の奥にある倉庫に向かい、バケツリレー宜しく、効率的に荷物を運び続けていくスリーマンセルであった。
倉庫内ではレイブが荷物の種類や一度に渡せる最適量のピッキング、通路になっている狭い穴を行ったり来たりして荷物を送るのはギレスラ、穴ぐらの奥で品目別に荷物を移動しストックし続けているのがペトラである。
なんと言うか…… 素晴らしく効率的なチームワークを見せている、そう言って良いだろう。
セッセセッセと運び続けた荷物は、アッと言う間に穴ぐらの奥へと消え去り、この顛末(てんまつ)に満足したレイブは誇らしげに言うのであった。
「わはっ、もう運び終わっちゃったね、うふふ、有難うねギレスラ、ペトラ♪ ふぅ~、チョット喉が乾いちゃったな? 奥に水が滴ってるんだったよね? 早速だけどギレスラかペトラのどっちか汲んで来てくれないかなぁ、ほら、僕ってまだ入れないからさっ! 頼むよ」
まあそうだろうな…… 半日以上歩き続けた上で休む暇も無く荷物の収納作業だもんね、喉のひとつくらい渇いてしまうのも当然だろう。
レイブの渇望に答えたのは通路から顔を出したギレスラである。
『ワカッタヨ、ホラ、オケ、カシテッ」
「ああ、これ頼むね、ギレスラ」
『ン、グガァ? ンンン? ガッガッァ! コ、コレハッ!』
「ん?」
『何? ギレスラお兄ちゃん、早く桶を渡して頂戴よ、レイブお兄ちゃんが渇き捲っちゃてるんでしょう?』
倉庫のレイブの声と穴ぐらの奥のペトラの声を聞いたギレスラは、中間の通路の中から困惑したような声で答える。
『オケ…… トオラナイヨ…… エット、ドウスレバ?』
『ええっ!』
「ま、サイズ的には確かにね……」
『グガッァ……』
なるほど、レイブが準備してきた水桶二つは揃って大振り、一見しただけで倉庫から更に奥の穴ぐらへの通路を通り抜けるなんて真似は、どうやっても不可能な代物だったのである。