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小鳥のさえずりと共に、カーテンの隙間から朝日が差し込んできた。 私は深く息を吸い込み、ゆっくりと目を開ける。体が軽い。前世の不調が嘘のように、今の肉体はエネルギーに満ち溢れている。
(やっぱり、若いって素晴らしいわ。……それに)
* 私は隣に視線を向けた。 広大なベッドの端っこで、カイル殿下が布団にくるまっていた。漆黒の髪が寝癖でぴょこんと跳ねている。彼は私が起きた気配に気づいたのか、布団からわずかに顔を出し――私と目が合った瞬間、ボッと音がしそうなほど顔を真っ赤にした。*
「っ……!」
《な……っ。昨夜あんなに……破廉恥なことをしたのに、なぜそんなに涼しい顔をしているんだ……!》
* 彼は何か言おうとして口をパクパクさせた後、パッと視線を逸らした。羞恥で爆発しそうになっているのだ。*
(あらあら、可愛いこと。最初は「義務だ」と突っ張っていたくせに。最後には私の腰にしがみつき、涙目で名前を呼んで求めてきたのはどこの誰かしら?)
* 顔は国宝級、体も騎士団で鍛えられているだけあって極上。テクニックは皆無だが、素直で反応が良い。夫としては願い下げだが、夜のパートナー(セフレ)としては、合格点だ。*
「おはようございます、殿下。昨夜はよく眠れましたかしら?」
「……あ、あぁ」
* 彼は布団からわずかに顔を出し、蚊の鳴くような声でようやく返事をした。私は彼を弄ぶように、ベッドから起き上がる際、わざと掛け布団を床へ落とした。*
* 薄いネグリジェの隙間――首筋から肩、そして胸元にかけて、肌に点々と残る鮮やかな赤紫のキスマーク。それらが朝日に照らされると、カイル殿下は息を呑み、まるで毒でも盛られたかのように身を硬くした。*
「どうなさいました? 夫婦なのですから、恥ずかしがることなんてありませんわ」 「ふ、ふしだらだぞ……! 服を、着ろ……!」
「あら。昨夜は『その服が邪魔だ、早く脱げ』と強引に引きちぎらんばかりの勢いだったのは、どこの誰でしたかしら?」
「~~~~ッ!!」
* カイル殿下は耳まで赤くして、言葉を失っている。 いじり甲斐がありすぎて、笑いが止まらない。私は悠然とバスローブを羽織りながら、ベッドの上の彼を見下ろした。*
「ご安心ください。私は完璧な皇太子妃を演じてみせますわ。……世継ぎのためには、回数が必要ですものね。今夜も、しっかりと『義務』を果たしていただきませんと♡」
* そう、完璧な「仮面夫婦」を演じてみせる。そして、十分な資金をゲットしてからドロンするのだ。*
* 私がウィンクをして見せると、カイル殿下はそのまま布団の中に沈没していった。*
* (チョロすぎる……。これなら、逃走資金なんてすぐに貯まりそうね)*
* 私は鏡の前で髪を整えながら、口元に余裕の笑みを浮かべた。死亡フラグ回避どころか、この世界での生活は案外、楽しめるかもしれない。*