テラーノベル
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翌日の放課後、約束通り蓮は図書室のいつもの席にいた。
静かな室内に、時折ページをめくる音だけが響く。窓の外は昨日の夕暮れが嘘のようにすっきりと晴れ渡り、差し込む西日が木製のデスクをオレンジ色に染めていた。
「遅くなってすみません、蓮先輩」
小さな囁き声と共に、ゆうが隣の席へ滑り込んでくる。カバンを床に置くと、嬉しさを隠しきれない様子で蓮の顔を覗き込んできた。
「……遅くない。俺も今来たところだ」
蓮は開いていた文庫本から目を切らずに返事をする。だが、隣から伝わってくる熱気のせいで、文字が全く頭に入ってこない。
「嘘ですね。先輩の本、さっきから1ページもめくられてません」
「っ……、うるせえな。集中しようとしてんだよ」
図星を突かれ、蓮が軽く睨みつけると、ゆうは待ってましたとばかりにくすくす笑った。その笑顔には、校内向けの「おとなしい後輩」の顔と、自分だけにしか見せない「意地悪な素顔」が絶妙に混ざり合っている。
ゆうは机の下でそっと手を伸ばし、蓮の開いた膝の上に置かれていた手の甲に、己の指を重ねた。
「……橘、ここ図書室だぞ。手ぇ離せ」
「静かに本を読むって約束しましたけど、触っちゃダメとは言ってません」
「屁理屈言うな……」
払いのけようと力が入る蓮の手を、ゆうは逃がさないように優しく、けれどしっかりと握りしめる。骨張った元ヤンの手と、一回り細いのに力強い後輩の手。交差した指先から、ドクドクと伝わる鼓動がどちらのものか分からなくなる。
「……先輩の手、温かいですね」
「お前の手が冷てえんだよ」
「じゃあ、温めてください」
悪怯れる様子もなく言い放つゆうに、蓮は深く溜息をついた。
いつもなら即座に拳骨の一発でも見舞うところだが、握られた手の温もりが心地よくて、どうしても本気で拒むことができない。
「……ほんと、調子狂う」
呆れたように呟きながらも、蓮は握り返すまいとしていた手の力を抜き、ゆうの指をそっと包み込んだ。
窓の外では部活動に励む生徒たちの声が遠く聞こえる。静かな図書室の隅で、二人の距離は昨日よりもほんの少しだけ縮まっていた。
コメント
1件
読ませていただきました〜!!😭💕 もうね、図書室の夕暮れの空気感が最高すぎる…!「先輩の手、温かいですね」からの「お前の手が冷てえんだよ」ってやりとり、蓮先輩のツンデレ具合が尊すぎて胸がギュッてなりました…!握り返すのを我慢してたのに、結局包み込んじゃうところがもうね、エモすぎて叫びたいです!!📚✨ ふたりの距離が確実に縮まってるのが伝わってきて、次の展開が気になって仕方ない…!続きめっちゃ楽しみにしてます〜!!🌸