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フィンレイ様 初対面


フィンレイは馬車に乗ってデビルズパレスに向かっていた。

新しい主は幼い上にキノコが生えているし、お供のロボットは凶暴だし、主の世界は汚染されているらしいし、問題児のラトが妹にしているし・・・といった諸々の事実確認と多すぎる問題点の整理のため、直接確認しに行くことになったのだ。

(何事もないといいのだが・・・)

せめて仕事に支障が出ない程度のダメージで済みますように、と祈りながらデビルズパレスのドアを叩いた。


ドローイングルームに通され、ベリアンが淹れてくれたお茶を飲む。

「・・・それで、新しい主はどこに?」

フィンレイの言葉に、ベリアンの笑顔が凍りつく。

「そ、それが・・・」

ベリアンが事情を説明しようと口を開いた瞬間、ノックの音が響く。

ベリアンはあからさまにホッとした様子でドアを開け、その人物を招き入れた。

入ってきたのは小さな女の子を抱えたミヤジとラト、そして箱のような機械だった。

「フィンレイ様、こちらが新しい主のトリコ様でございます」

ベリアンはミヤジの肩に顔を埋めたままの少女を主だと紹介した。

「そうか、顔を見せてくれるかい?」

「はい・・・」

ミヤジはフィンレイの横に膝をつき、トリコにフィンレイの方を向くように促す。

「ほら、主様。フィンレイ様にご挨拶しよう?

大丈夫、さっき練習したじゃないか。ね?」

そう言われて、少女は恐る恐るフィンレイの方を見た。

『ぁう・・・ぇと、あくましちゅじの、あぅじになぃました・・・とりこ、ともうしましゅ・・・』

泣きそうになりながら何とか挨拶をしたトリコをミヤジが全力で撫でて労う。

確かに、頭に何か付いていると思ったらキノコだった。

間違いなく、頭からキノコが生えているようだ。


「ミヤジ先生、トリコの仕事はもう終わりですよね?

後は、この部屋でロボットさんと私と3人で遊んでいて良いのでしたよね?」

挨拶が済んで、少女が少し落ち着いてきたところでラトがミヤジに声を掛けた。

「あぁ。あまり煩くしないようにね」

「はい、分かりました。

それじゃあ・・・トリコ、お兄ちゃんと遊ぼう?」

ミヤジはラトに少女を任せ、ルカスを呼びに行った。

どうやらラトが主を妹にしているというのも本当らしい。

3人は部屋の隅で大人しくお絵かきを始めた。


「失礼いたします、フィンレイ様。

ご足労賜りまして、誠に有難うございます。」

ルカスがやってきて、やっと主についての話し合いが始まった。

「・・・ルカス、あの少女が主であることは分かった。

しかし・・・あの、頭のキノコは本物なんだな。騙されているのかと思っていたよ」

「ふふふ、そうでしょうね。私も信じられなくて何度も確認いたしましたが、頭と右目から生えています」

「右目からも生えているのか・・・」

「はい、恐らく右目は見えていないと思われます」

「そうか・・・」

フィンレイは幼い少女がキノコに侵食されて、片目の視力を失っていることにチクリと胸が痛んだ。

「また、報告書に記載した通り、主様の世界は汚染されて人類が滅亡していて、主様も汚染の影響を受けています。

つい最近も体調を崩したことをきっかけに、全身からキノコが生える奇病に罹ってしまわれました」

「ぜ、全身からキノコが!?」

「はい・・・

幸い、抗生物質で進行を抑えて、主様の世界で作ってもらった除染薬を投与することで元気になられました」

「そ、そうか・・・」

フィンレイは一つ一つが衝撃的な話題を何とか理解しようとして頭を抱えた。

「・・・済まない、少し、頭を整理させてくれ・・・」


お茶のおかわりを飲んで一息ついたところで、主がベリアンの魔導服の裾を引っ張った。

『べりあ〜』

「はい、何でしょうか主様」

ベリアンは嬉しそうに少女の目線に合わせてしゃがむ。

主は先程描いたであろう絵をベリアンに差し出した。

『べりあ、あげぅ』

「おや、ありがとうござ・・・

いやああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

礼を言いかけたベリアンは悲鳴を上げて、腰を抜かしながらルカスに縋り付く。

「ど、どうしたんだい、ベリアン!?」

珍しく取り乱しているベリアンにルカスも驚いている。

ベリアンはルカスの髪に埋もれながら震える声で呟く。

「主様が、虫さんをっ、描いてて」

「あ〜、うん、分かったよ・・・」

ルカスは遠い目をしながらベリアンを座らせ、呆然としている主のもとへ向かう。

「主様・・・」

『・・・かしゅ・・・べりあ、ないちゃった・・・?とりこ、きらいになった・・・?』

主はベリアンが悲鳴を上げて逃げたことで嫌われてしまったと思ったらしい。

口にしたことで実感したのか、まあるい頬に大粒の涙が伝っていく。

『っふぇ、べりあ、ごめなしゃ・・・

ぅうぇっ、ゔぁぁあああっっ、あ゛〜〜〜〜っ』

パニックになって泣き出した主をルカスが必死に慰める。

「大丈夫ですよ、ベリアンは主様のことが大好きですよ。

ベリアンは虫さんの絵にびっくりしちゃっただけなんです」

『っうえぇぇっっ、ひっく・・・きらい、じゃ、ない・・・?』

「嫌いになんてなるはずありません」

『ぐすぐす、でも、でもぉっ・・・』


泣き止まない主にルカスが焦りだすと、ラトが主をひょいと抱き上げた。

「トリコ、ベリアンさんの好きなものを描いてあげたらいいよ。

それか・・・そうだ、似顔絵にしましょう。さっき描いていたお兄ちゃんの絵、とっても上手だったから、ね?

ベリアンさんも喜んでくれるよ」

ラトが主の背中をトントンと叩いてやりながら優しく諭すと、主はすんすんと鼻を鳴らしながら、こくっと頷いた。

「ほら、トリコ。似顔絵を渡して仲直りしよう、ね?」

『うんっ』

泣き止んだ主はラトの腕から解放されるとすぐにお絵かきを始めた。

ラトは頑張って描いている主をニコニコと見守っている。


「すごいな・・・あのラトが・・・」

フィンレイは手が付けられないほど凶暴で人嫌いだったラトが、幼い主を慈しみ育てていることに感動した。

「はぁ、助かりました・・・

どうも私は子どもの相手が苦手で・・・」

苦笑いしながらルカスはベリアンの隣に腰を下ろす。

「ね、ベリアン」

「ルカスさん・・・私・・・なんてことを・・・」

真っ青になって震えているベリアンを慰めるようにルカスが肩を抱く。

「大丈夫だよ。ラト君が上手くやってくれたから。

後でちゃんと謝って、仲直りすればいいよ」

「・・・はい」

ベリアンも持ち直したところで、話し合いを再開した。


「それでは、ファクトリーAIについて説明いたしますね。

彼・・・彼女かもしれませんが、それは人工知能と名乗りました。

ファクトリーAIは今までロボットに集めてもらった材料で、主様のためのシェルターから薬まで、様々なものを作っていたそうです。

ロボットは、そこにいる緑色の機械の子で、汚染の中でも動ける特性を活かして、廃墟と化した街や工場を探索して、主様の食べ物や薬の材料などを集めていたそうです。

危険な生き物や機械達と戦っていただけあってとても戦闘能力が高いので、主様の護衛に割く人員を削減できると考えています」

「なるほど・・・」

「それで、転送装置の件ですが、ファクトリーAIが作ってくれたものを屋敷の2階の廊下に設置しております。

我々は汚染を受けないようなので、地下の3人を一度探索に向かわせました」

「そうか。それで、どうだったんだ?汚染された世界というのは」

「はい、人間が住んでいた区画は植物が生い茂っていて、至る所に瓦礫が転がっている状況でした。

また、ロボットや虫が襲ってくるのであまり深い層に行くのは危険と判断しました。

もし、薬の材料などが深い層にある場合は、ロボットに取りに行ってもらうことになります」

「そうだな、それが良いだろう」

「また、誰もおらず、何を壊しても問題ないため、執事達のストレス発散や、大人数での模擬戦に使用することを検討中です」

「そうか・・・」

「・・・とりあえず、お話するべきことはこれで全てでございます。

何かご質問等はございませんか?」

フィンレイは深く息を吐き、首を振る。

「いや、ちょっと考える時間がほしい。

何かあったらまた手紙を出そう」

「畏まりました」

「・・・それと、ルカス」

「はい、何でしょうか」

「主はどんなモノが好みかな?」

「・・・と、言いますと?」

「今度はおもちゃかお菓子を買ってこようと思ってね。

私も少しはあの子に好かれていたほうが良いだろう?」

「それでしたら・・・」


その後、フィンレイからトリコに高級な色鉛筆のセット、幼児教育用の教材、かわいいぬいぐるみなどが連日送られてきた。

そして、忙しいスケジュールの合間を縫って足繁くデビルズパレスに通い、トリコとお近づきになろうと奮闘するフィンレイであった。


また、ベリアンは仲直りの印に、と貰った似顔絵を大事に額縁に入れて寝室に飾っているという。

ボイテラ×あくねこ

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