《リクエストノベル》
Aufheben(アウフヘーベン)
(学園ファンタジー、ホラー寄り)
高校の軽音部に所属する3人の大森、若井、藤澤。
ある日、学校で不可解な噂が流れる。
「最近、旧校舎から叫び声が聞こえるらしいよ」
気になった3人は、順番に旧校舎へと足を運ぶ。
それは—— 自分の弱さを写し出す“鏡”だった。
果たして、3人は自分の“鏡”に向き合うことができるのか——。
構想途中のため、章数不明です。
アウフヘーベンの歌詞を元に… 結構時間をかけながら、色々勉強させてもらってます。
ありがとうございます☺️
(哲学書とかも参考にさせて頂いてます)
徐々に仕上げていきます。
放課後の校舎は、いつもよりも静かだった。
窓の外では夕焼けが街を赤く染めている。
軽音部の部室に入ると、机の上に散らかった楽譜の上でスマホが振動していた。
SNSの通知音がけたたましく鳴る。
誰かが何気なしに呟いた言葉が炎上し、拡散され、そして忘れられていく。
「またか……」
大森はスマホを伏せた。
この世界はまるで、大きな振り子に操られているかのように、右へ左へと揺れ続けているように見えた。
SNSのタイムラインも、ニュースの速報も、誰かの意見も、すぐに逆方向へと振れ、昨日の正解が今日は嘲笑の的になる。
情報が膨らんでは消える様は、まるでヘリウムガスの詰まった風船のようだった。
どれだけ集めても、中身は空虚で軽い。
——こんな歪んだ世界、いつ滅んでもおかしくない。
そんな感覚が、大森の胸に巣くっていた。
扉が開き、藤澤が入ってくる。
手にはコンビニの袋をぶら下げ、いつも通りの笑顔を見せた。
「はい、アイス買ってきたよ。休憩の時に食べよー」
続いて若井がギターケースを背負って現れた。
「おーい、早くやろうぜ」
軽音部の練習が始まると、空気は一変した。
若井のギターが軽快に鳴り響き、藤澤の鍵盤がその上を舞う。
大森の声が乗ると、狭い音楽室が一気に広がったように感じられる。
「もう一回、頭から!」
三人が揃って音を鳴らす時間。
それが大森にとって唯一、街の喧騒や空虚さから逃れられるひとときだったはずなのに——今日の音はどこか歪んでいた。
休憩中、アイスを食べながら三人は机を囲んで座った。
「……なあ、俺たちの音って、なんなんだろうな」
大森がぽつりと口を開いた。
「音?」
若井が笑う。
「元貴が歌って、俺が弾いて、涼ちゃんが重ねて。それでいいじゃん」
「そう……だよね」
大森は二人の間を見つめ、言葉を飲み込んだ。
——自分の音は、本当にここにあるのだろうか。
——自分が歌う意味は、どこにあるのだろうか。
ざわめく心を打ち消すように、大森はギターを手にした。
だがその時、背後からひそひそと囁くような声が聞こえた。
『生きたりない』
『もう嫌だ』
『逃げていたい』
『羨ましい』
耳の奥に直接流れ込んでくるような声。
振り返っても、誰もいない。
藤澤も若井も気づかずに、ただ辺りを見ている。
『——ほら、こっちへおいで。』
その瞬間、音楽室の窓ガラスが、ふっと揺れたように見えた。
そこには、一瞬だけ自分たちとは違う「三人の影」が映っていた。
笑っているのに、目だけが笑っていない影。
大森は背筋を冷たいものが這い上がるのを感じた。
世界が歪み始めている——そう直感した。
コメント
4件
リクエスト答えてくれてうれしいです!!怖いのかなって思った瞬間にえ!?って思いました なう(2025/09/28 01:06:51)
すごい!すごい!主さん、すごすぎます!(語彙力消失すみません) 今回の作品、私が好きな雰囲気です✨️ 今回も終わりまで見届けます!