晴陽は昨夜、
警察が少年を取り逃したY公園にむかった。
見晴らしもよく
人通りも多いこの場所で一瞬で人1人、
しかも警察官の大勢が見失う理由を探す。
写真の脇差からは
晴陽にしか分からない妖気が漂い、
それだけで気分が悪くなる。
それをぐっと堪え、
晴陽は現場を丁寧に
スキャン
した。
右手の広場
左手のベンチ
正面の小径
全て魔の気配はない。
おかしいな。
晴陽は集中レベルを一段階上げる。
さわそわさわさわ
風が木々を揺らす。
心地よい空気が晴陽の気も
清浄化してゆく。
ありがとう。
晴陽は風に髪をなびかせて、
少し微笑んだ。
ふと、
その清浄な空気の中に
ピリと苦味走った味を感じた。
いる。
晴陽は慎重にその「味」の出所をさがす。
正面小径の脇、大きな楠の幹。
ぽっかり空いた洞の中にそれはあった。
緋色の髪一筋。
写真の少年と覚えた緋色。
見つけた。
晴陽は背筋にゾクっと寒気を走らせた。
少年は消えた瞬間、
なんらかの方法でこの木の洞に入り込んのだと
知り得たからだ。
こんな事が可能なのはやはり・・・
晴陽は少し震える指先で緋色の一筋をとる。
ここから晴陽と霧人との運命の糸が
深く複雑に絡み合っていくこととなる。
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