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任務帰還後 ― 神里屋敷
夜。
長期任務を終え、帰還した二人。
屋敷の廊下。
他の家臣達はすでに下がり、静寂だけが残る。
ト「はぁ……やっと終わりましたね」
綾「ご苦労だった、トーマ」
ト「綾人様こそ。無茶しすぎです」
綾人、歩みを止める。
綾「君がいたから無茶ができた」
ト「それ褒めてます?」
綾「もちろん」
⸻
綾人、ふと思い出したように。
綾「そういえば任務前での件だが」
ト「――――っ」
一瞬で顔が赤くなるトーマ。
ト「蒸し返さないでください……」
綾「なぜ?」
ト「なぜって……」
綾「君は答えを濁したままだ」
ト「……あの状況で答えられる人います?」
綾人、一歩近づく。
綾「では今なら?」
ト「……今も無理です」
綾「逃げるのかい?」
ト「逃げてません」
綾「なら聞こう」
さらに距離を詰める。
廊下の柱際。
自然と、トーマは背を預ける形に。
綾「君は私をどう思っている?」
ト「…………」
視線が泳ぐ。
⸻
観戦席(外)
屋敷の塀の上。
空「帰還後すぐ本番!?」
タ「いやぁ進展早いねぇ」
ダ「……覗くなと言いたいが、俺も少し気になる」
⸻
ト「……大事な人です」
綾「主として?」
ト「それもあるけど……」
綾「それ“も”?」
トーマ、観念したように目を閉じる。
ト「家族みたいで、でも家族じゃなくて……」
綾「……」
ト「誰にも取られたくないって思う時もあって……」
言った瞬間、顔を覆う。
ト「……言わせましたね今……!」
綾人、静かに息を吐く。
そして。
トーマの手首を取る。
ト「……綾人様?」
綾「それは困るな」
ト「何がです?」
綾「私も同じだからだ」
ト「――……え?」
そのまま柱へ軽く押さえ込む形。
いわゆる――壁ドン未満、でも逃げ場なし。
綾「君が誰かに触れられるのを見ると落ち着かない」
ト「……っ」
綾「家臣に向ける感情ではないと分かっている」
ト「……」
綾「だが、もう誤魔化す気もない」
綾人、額をトーマの額へ。
至近距離
綾「君は残酷だ」
ト「またそれ……」
綾「無自覚に距離を詰め、
私だけを揺らしていたと思っているのか?」
ト「……無自覚じゃない時も、ありました」
綾「……ほう?」
トーマ、震える手で綾人の襟を掴む。
ト「温泉の時……」
綾「うん」
ト「続き、気になってました」
沈黙
⸻
外の観戦席
空「言った!!!」
タ「確定演出入ったねぇ」
ダ「……終わったな」
⸻
綾人、完全に理性が切れる音。
小さく息を吐き。
綾「……もう止めない」
ト「……はい」
静かに顔を寄せる。
逃げないトーマ。
そして――
触れるだけの、短い口づけ。
だが離れない。
綾「これで後悔は?」
ト「……全然」
綾「ならもう一度」
二度目は、少し長く。
⸻
外野
空「うわああああああああ」
タ「任務成功っと」
ダ「……帰るぞ。これ以上は礼儀に欠ける」
空「えー!?」
タ「いやだいやだ〜!」
⸻
廊下
額を合わせたまま。
ト「これ、主従の距離じゃないですよね」
綾「今さらだね」
ト「……屋敷の人にバレますよ」
綾「構わない」
ト「え?」
綾「君を手放す気はないと言っただろう?」
トーマ、苦笑。
ト「……ほんとズルい主だ」
綾「今は主じゃない」
ト「じゃあ何です?」
綾人、もう一度距離を詰め――
綾「答えはこれから教えよう」