矢太郎はそよに連れられ町に買い物に来ていた、矢太郎の服の無頓着さに見かねて服を選びに来た。色々と着せられかれこれ二時間程連れ回されている、小さな店に入ると装飾品が所狭しと並んでいた。矢太郎はある簪に目を引かれた、そよに似合いそうな花飾りの簪。矢太郎は、そよに隠れてその簪を買った。店員が綺麗に包んでくれた、そよに連れ回され昼時になった。ちょうど良いので昼食にすることにした、入ったのは珈琲の香りのする喫茶店。食事も美味しく良い雰囲気だ、そよへの贈り物を渡す時を伺っていると外から悲鳴が聞こえて来た。食事も済ませてあったので素早く会計し外に出ると女性と男性が血まみれになっていた、どうやら男性が女性に目玉を刺されたようだ。よりによって、凶器が簪だと言うこと。女性は駆けつけた警察に取り押さえられた、矢太郎はそよへの贈り物を渡すタイミングを逃したのであった。そよはその後も何事もないかのようにまた服を選び出した、矢太郎はそよの言いなりになり服を選ばれ着せ替え人形の様になっていた。矢太郎はほとんど諦めていた、そよへの贈り物を渡すのはまた今度かと。日が暮れ始めそろそろ帰るかと言う時間帯になり、探偵事務所に寄って荷物を置き解散するとなった時、そよが口を開いた。「矢太郎、今日の午後辺りから少し変だったけどどうしたの?もしかして色々連れ回したから怒ってる?」
といつもの自信に溢れた声とは違い少し悲しげな声だった、それにいつもは矢太郎の事を詩軸と名字で呼ぶため、矢太郎は少し困惑した。矢太郎は昼の事件で渡そうとした簪を渡せなかった事を白状し、買っていた簪を差し出した。そよは、安堵と喜びが混じった様に笑った。夕陽が二人の顔を朱色に染めていた、矢太郎とそよは照れた様に笑い合い家路に着いた。
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