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グリルタ
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それぞれの中学1年の1学期はあっという間に過ぎた。その間は晶子とカンナはたまに街で会った時立ち話をするぐらいで、ゆっくり共に時間を過ごす事もなかった。
夏休みが始まったばかりのある日の夕方、晶子は久しぶりにカンナとスーパーで出会った。
「お、晶子。久しぶりだな」
半袖のTシャツにデニムの半ズボンといういで立ちで近寄って来るカンナに、半袖のワンピースを着た晶子は小さく手を振る。
二人とも自分の家のお使いだったので帰りの荷物も多くなく、二人で並んで踏切の方へ歩く。
カンナは相変わらず、両腕を頭の後ろで組んだまま、背中にスーパーのレジ袋をぶらぶらさせて歩く。晶子は斜めに伸びるカンナの影の中に入って日差しを避けるかのように寄り添った。
「カンナは夏休みの予定とかもう立てた?」
「いや、なんもなし」
「あれ? 陸上部に入ったとか言ってなかった?」
「ああ、部活は辞めた。陸上部なら金かからないと思ったんだけど、夏休みの合宿に全員参加って言われてさ。あたいの家そんな金出せねえから」
「ええ? カンナは足早いからピッタリだと思ったのに」
「合宿は全員参加が義務なんだと。学校の先生はそんな家の事情なんて考えちゃくれねえしさ。他の部員ともその後ギクシャクすんのは目に見えてるし」
「ううん、確かに合宿に一人だけ参加しなかったら、気まずいよね」
「あたいのとこの学校は、夏休み前に退部するやつ多いんだ。多分同じ理由だろうな。そうだ、晶子は部活何やってんだ?」
「あたしは文科系。日本史研究会」
カンナは立ち止まり、珍獣でも見るような表情で晶子の顔を見つめた。
「何だそりゃ。部活でまで勉強してんのか?」
晶子は苦笑しながら顔の前で掌を小さく振った。
「勉強ってわけじゃないよ。教科書には書いてない、面白い話を詳しく調べるっていうか」
「だめだ、あたいの頭じゃついて行けねえ。やっぱ晶子は頭いいんだな」
「そうだ、だったら次の水曜日何も予定ないよね。一緒にこれ行かない?」
晶子は肩から下げているポシェットから2枚のチケットを取り出した。
「ほら電車で五つ向こうの駅に大きなプールのある遊園地あるでしょ。あそこの入場券もらったの、お父さんから」
カンナは気乗りしない表情でチケットに目を近づける。
「行きたいけど、いくらなんだ? あんまり金ねえんだよな今」
「これ無料招待券だよ」
カンナの顔がパッと明るくなる。
「タダ券って事か?」
晶子がうなずくと、カンナは両手を空に向けてその場で跳び上がった。
「そういう事なら行く、行く!」
「それでカンナは運動得意だから教えて欲しいの。あたしクロールの息継ぎが苦手で、休み明けの体育の授業で実技テストあるんだ」
「おう、任せとけ!」
当日の午後1時、二人は電車の駅前で待ち合わせ、遊園地のプールに向かった。
更衣室で一緒に水着に着替える時、Tシャツを脱いだカンナを見た晶子が思わず言った。
「わあ、カンナ、もうブラジャーしてるの?」
「あれ、知らなかったか? あたい、小6の時からしてたぞ。ああ、6年生の時はクラス別だったな」
「なんか、カンナだけずるいな」
晶子はバスタオルの下の、まだぺったんこの自分の胸をさすりながら羨望の目で親友の体を見つめた。
カンナはバスタオルの下でスクール水着を身に付けながら、相変わらず男の子のような豪快な笑い声で言う。
「なんなら触らせてやろうか? 1回百円」
「ああ、あたしの事馬鹿にした!」
「そんなんじゃねえって。大丈夫だよ、こういうのは人によって早い遅いがあるって言うし。そうだ、揉むと大きくなるって言うぞ。あたいが揉んでやろうか?」
いたずらっぽい笑みを浮かべ、両手を前に突き出して近寄って来ようとするカンナを晶子は片手を伸ばして突き放す。
「もう! カンナのエッチ!」
スクール水着に着替え終わってプールに向かう。歩きながら晶子はカンナの体つきをちらちらと見ずにはいられなかった。
同い年の親友の胸は、普段の服の上からでは分からない程度ではあるが、こうして水着姿になると明らかに膨らんでいた。
いつも外を走り回っているためか、カンナの肌はうっすら小麦色で、しかし陽の光が当たると艶々と光の反射が目に付くほど滑らかな表面になっていた。
晶子の肌は色白だが、まだ光沢を帯びるほどの艶はない。カンナの襟足までのボブカットの髪を見ながら、晶子は自分の小学生の時と同じオカッパの髪をつまんでみた。今の晶子がカンナに勝てるとしたら、髪の毛の艶やかさぐらいかもしれない、そう、晶子は思った。
「おおい、晶子、何やってんだ、行くぞ」
そう言ってプールサイドへ小走りで駆けて行くカンナの後を追いながら、晶子はなぜか、髪を伸ばそうと考えていた。
コメント
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第13話、読み終えました。夏休みのプールの約束が、二人の距離を一気に縮めた感じがして、すごくドキドキしました。特に更衣室での何気ない会話——カンナがからかいながら「揉んでやろうか?」なんて言うところ、晶子の照れとちょっとした憧れが混ざった反応が、思春期の空気をそのまま切り取ったようで、とても素敵だなと思いました。髪を伸ばそうと決めるラストも、彼女の中で何かが変わり始めた予感がして、続きが気になります🌷