テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「いやー、俺も驚いたよ。今朝に突然、連絡があってな……」
そう言いながらダグラスさんは、1枚のカードを私の前のテーブルに置いた。
手に取ってみると、今持っている錬金術師ギルドのカードよりも、少しだけ豪華なカードだった。
装飾が少し多い程度なんだけど、ランクのところには『S』と刻まれている。
「おぉ……、これは……」
「うん、新しいSランクのカードだ。今持っているカードは回収するからな」
「あ、そうですね。それではよろしくお願いします」
そう言いながら、今まで使っていたS-ランクのカードをダグラスさんに渡す。
何となく寂しいような気もするけど、ここは切り替えて、新しいカードをお迎えすることにしよう。
「はい、確かに。
アイナさんは知っていると思うが、S+ランクは3人、Sランクは7人、S-ランクは10人の定員だ。
これで名実ともに、世界の上位10人に入ったことになるぞ!」
「それは嬉しいんですけど……、何で急に?」
「いや……。俺も今朝、突然ギルドマスターから言われてな。
どうも、王国の方から強い推薦があったようで……」
「王国から?」
「俺も詳しくは分からないんだが、アイナさんは王族の依頼もたくさん受けているし……。
あと、調達局の方で一定の成果を上げたって聞いたぞ。何かしたのか?」
「1回だけ依頼を受けたことはありますけど、大したものでは無かったですよ?
まぁ、品質はいつもの通りでしたが」
「うーん、そうなのか……。
いつもの通りってことは最高品質だろうから……、それが認められたのか……?」
「さて……?
ところで私のランクが上がったっていうことは、誰かが下がったってことですよね?
勝手に話が進んでいて、何だか申し訳ないというか……」
「あ、そこは気にしなくても良いぞ。
一緒に連絡があったんだが、王国に仕えていたSランクの錬金術師が引退したっていうことだから」
「引退?」
「自分の研究に没頭するあまり、他の仕事を全然やっていなかったそうでな……。
その研究も上手くいっていなかったようで、そこら辺を理由に錬金術師を引退、って話だ」
なるほど……?
話を聞く限り、何となくクビにされたような印象も受けるけど――
……まぁ邪推しても仕方がないし、それはそれで受け止めておこう。
「それでは、遠慮なくSランクを拝命いたします。
ちなみにS-ランクと、何か違うんですか? Sランク以上の依頼っていうのがあったり?」
「いや、特には無いぞ」
「えーっ」
「正直なところ、実質的な差は無い。
冒険者ギルドだったら、『英雄』への挑戦権ができたりするんだけどな」
「え? 英雄への……?」
「ああ。冒険者ギルドでSランク以上になると、所有者のいない神器の試練を受けることができるんだ。
神器の装備条件には『英雄であること』っていうのがあって、それをクリアすれば神器を所有できるようになるって寸法だ。
……今は全部に所有者がいるから、誰も挑戦できないんだけどな」
「はぁ、そういうのがあるんですね。
神器に認められた人が『英雄』になる……と」
「もちろんそれ以外でも、偉業を達成した者は『英雄』と呼ばれることがある。
ただ、そういったことをしなくても、神器にさえ認められれば『英雄』になれてしまうのさ」
「へぇ……?」
「ま、神器の力を使えば偉業を達成することなんて容易いだろうがな。
そもそも、その力を手にすること自体が凄いんだから」
「……確かに」
「おっと、話が逸れてしまったな。申し訳ない。
それでは改めて、おめでとう。今後ともよろしく!」
「あ、はい。
こちらこそ、よろしくお願いします!」
「よーし、ここからは依頼の話をするか!
今あるやつは、これくらいだったぞ」
ダグラスさんがテーブルに置いた依頼書を数えると、21枚あった。
今回は『賢者の石』とかの依頼はちゃんと抜いてあるし、受けられるものは全部受けていこうかな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
自転車和尚
1,366
#異世界転生
しめさば
8,228
#ファンタジー
成瀬りん
21,803
Tubling
1,962
「――ただいま戻りました」
「お帰りなさあああああああああああいっ!!」
「わぁっ!?」
ダグラスさんと受付に戻ると、テレーゼさんの大声と、突然の大声で驚いたエミリアさんの声が迎えてくれた。
「おい、テレーゼ。その大声、何とかならんのか」
「なりません!」
「いや、『何とかしろ』って意味だったんだが……」
「それはそれとしてですね」
「するなよ!!」
「アイナさん、通達って何だったんですか?」
ダグラスさんを無視して、遠慮なく聞いてくるテレーゼさん。
彼女らしいと言えば彼女らしいけど、悪い知らせだったら気まずくなるところだよね……。
今回は良い知らせだったから、問題は無いんだけど。
「えーっと、昇格しました」
そう言いながら、受け取ったばかりのカードをエミリアさんとテレーゼさんに見せてみる。
少しだけエミリアさんに、見やすく出したのは内緒だ。やっぱり近い人ほど、先に教えたくなるものだしね。
「わ、凄い! Sランクですか!!」
「うおおおおおお、アイナさん凄おおおおおおいっ!!」
普通に驚くエミリアさんと、大声で驚くテレーゼさん。
会話中までこのテンションでいられるのは、少しつらいかもしれない。
「テレーゼさん、まずは落ち着きましょう」
「えぇ……!? ……しゅーんっ」
よく分からない言葉と共に、テレーゼさんはクールダウンを試みていた。
故意にシュンとするような掛け声を……? テレーゼさんって、たまに良く分からない言動をするよね。
「でも、本当に凄いですよ! これはしっかりお祝いをしないと!」
「お祝いですか!? パーティですか!?」
エミリアさんの言葉に、テレーゼさんが強く食い付いてきた。
いやいや、パーティなんてするほどのことでも――
「お、いいな!
アイナさん、パーティをするなら俺も呼んでくれよ!」
「あ、主任ばっかりずるい! 私も参加します!!」
「……あの? パーティをするだなんて一言も……」
そう言いながら、救いを求めるようにエミリアさんを見ると――
「良いんじゃないですか? とっても楽しそうです♪」
……味方から、背中に攻撃を食らった気がした。
「うーん……、ただの食事会くらいなら、まぁ……。
それでも良いですか?」
「私は大丈夫ですよ! アイナさんのお屋敷にも行ってみたかったですし!」
「俺はついでに、アイナさんの工房も見てみたいなぁ。
どんなところで作業をしているのか……、ってな」
むむ、工房の設備は特に使っていないんだよね……。
……招待する前に、大釜くらいは使って使用感を出しておかないといけないかも……?
「それじゃ、次に来たときに食事会の予定をお伝えしますね。
日時は、夜ならいつでも大丈夫ですか?」
「うん、それで頼む!」
「仕事が残ってても行きますので!」
テレーゼさんの言葉に、ダグラスさんが冷たい視線を浴びせたものの、テレーゼさんは|頑《かたく》なにダグラスさんの方を見ようとしなかった。
このパターンも、何だか慣れてしまったなぁ。
「分かりました、それではまた後日。
今日はそろそろ帰りますね」
「うん、お疲れ様!」
「また早く来てくださいねー!」
二人に挨拶をしたあと、出口に歩きながら、これからの予定をエミリアさんと話す。
「アイナさん、これから白兎堂に行く元気はありますか?」
「あ、はい。大丈夫ですよ!」
そう言うや、後ろの受付の方から声が聞こえてきた。
「あれっ!? アイナさんたち、白兎堂に行くんですか!?
それなら私も――」
「お前は仕事中だろっ!!」
「ひぇっ!?」
――今日も錬金術師ギルドは平常運転である。
錬金術師ギルド……というか、テレーゼさんが、かな?
でも、それなりに離れていたのに……、よく聞こえたなぁ……。