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「どお?美味しい?」
璃奈を見ながらニヤニヤと笑う朱里。 そんな笑顔に、目を逸らす璃奈。
「うん、とっても美味してい」
「なら良かった」
ずっと見られてるのが気まづいのは璃奈は、スマホを取り出した。その時、ちょうど兄から電話がかかってきた。
「ごめんなさい、少し電話」
「分かった」
***
「もしもし」
『どうだ』
璃奈は兄の言葉に一瞬固まった。
─そうだ、何も聞いてない…久しぶりにリラックス出来たから、任された仕事忘れちゃった…逆になんで、人前でリラックス出来たんだろう…しかも、調べる相手の前で…
頭の中が、こんな考えしかなく、兄の掛け声も聞こえなくなった。気づいた時には、兄がキレてからだった。
「ご、ごめんなさい。なんも、聞けだせなくて」
『使えねぇ』
「最近、知り合ったばっかりだか…」
弱いフリを演じる璃奈。そんな璃奈に、兄の輝琉はまたキレた。
『いいからさっさと何か聞き出せ』
そう言ってすぐに切った。
「平気で言ってるの…?」
口に出るぐらい、璃奈が怒った。
***
「まった?」
「ぜーんぜん」
笑いながら朱里は答えた。今日の朱里はご機嫌だと璃奈は、やっと知った。
「今日は、ご機嫌だね」
「やっと気づいた?」
さっきのニヤニヤより、もっとニヤニヤになる朱里。
「まぁ?」
人をよく見る璃奈が、朱里のご機嫌に気づくのが遅かった理由は、ただ一つ。朱里の笑顔で、心が奪われ、なんも考える事も出来なかったからだ。
「なんで、機嫌いいの?」
「秘密」
人差し指を口の上に持ってって「シー」とやる朱里。璃奈は、朱里の行動を見て、「 ちょっとぐらいいいじゃん…」っと思った。
「お肉が冷めちゃうよ、早く食べよ」
「うん、焼いてくれてありがとう」
「もう敬語じゃなくなったね」
「たまにタメ口ですよ」
璃奈は朱里の言葉に少し、疑問を抱いた。その疑問は無意識に口から出たのだ。
「そうだけど、さっきからずっとタメ口だよ。」
私は朱里の一言で驚いた。 思え返せば、確かにそうだ。私は、焼肉屋に入ってからずっとタメ口だって事を
「タメ口ってダメなの?」
「ダメって訳じゃなくて、タメ口で話してくるの嬉しいって事。敬語だと、なんか他人みたいだから」
照れくさく笑う朱里。そんな朱里に、璃奈の心臓がだんだん強く動いた。何故か分からない。心の中では、「可愛い」の一言しか無かった。
「大丈夫!?顔赤いよ?」
朱里がそう言うと、手を伸ばし私の顔に触れた。
─まだ、知り合ったばっかりなのに、こんなあっさりと人の顔に触れるなんてっ
璃奈は、家族以外の人とせした事ないため、友達との距離感が分からなかった。
「だ、大丈夫」
そういうと私はすぐに朱里の顔から遠ざけた。その時に、兄からの任された仕事を思い出した。
「そういえば、朱里の家族ってどんな感じなの?」
私の言葉に朱里は驚いた顔をした。その顔がまるで、こんなアッサリと聞くの?っと言っているみたいだった。
「そうだね…私の親は、優しいよ」
朱里は、止まらずまた口をひらいた。
「でも私のお母さんは、間違えて、人を轢いたみたい。」
「え…」
その一言に私は戸惑った。轢いた?
「轢いた相手は…誰だっけな」
苦笑いをする朱里
「辛い記憶思い出させてごめんね」
そんな朱里の苦笑いを見て、罪悪感を感じたのか、すぐに謝る璃奈。その後に何かに気づく…
─優しい?優しいって、人を轢いたから優しいの? 「優しい」ってなに…?
「優しいって何?って顔してるよ」
私の顔を見て、朱里は笑った。そして、驚きの言葉を口にした。
「冗談だよ」
っと笑いながら、私にそう言った。
「もぉ、やめてよね」
私は気づいたら、朱里を警戒するのをやめていた。そんな事に気づいたのは、焼肉屋から帰った後だった。
「ただいま…」
─結構なんも聞き出せなかった…
「おかえり、なんか聞き出せたか?」
「ごめんなさい…」
兄の輝琉は、舌打ちしながらこう言った。
「使えねぇ」
っと、私はその言葉に俯いた。
─なら自分でやればいいじゃん…任せないでよ。
そう思いながら、兄に向かって謝った。
「次は聞き出せるようにするから」
「完璧にやれ」
「…はい」
家族なのに、家族じゃない行動をするこの家には、周りの目からしたら、とっても良い家族、そして、こんな家族になりたい。とな思われている。私はこの家族の人形として、扱われている…
お父さんに会いたい…お父さんなら私の味方でいてくれる…
そう思い、すぐに自分の部屋に行き、お父さんとの写真を取り出し、眺めた。そして、今日の一日を振り返った。今日は色んな事が起きた。例えば、執事の美嘉さんが帰ってきたのと…朱里に警戒を抜いた事だ。
璃奈が警戒を抜く人は、大抵信用できる人と、利用できる人だけだった。なのに、どっちでもない逆に兄から任された任務相手の朱里に警戒を抜くのは、ありえないことだった。
璃奈は何かを考えたのか、声にでる笑いで笑った。
─私も人を利用してるじゃん…利用できる人しか警戒外してないじゃん…ほんと、私もこの家族に似てきたな…
どうしたらいいの?お父さん_