コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
詩篇とは、 神の言葉で綴られた予言書である。
つまりは、神の言葉そのものだ。……まぁ、 そんなことはどうでもいいのだけれどね。
ただひとつ言えることがあるとすれば、 それは……神にとっての詩篇は 人のそれとはまったく異なるということだ。
詩篇は、神の意思であり、 同時に神の意志そのものでもある。……故に、人にとってはただの創作物でも、 神にとっては魂にも等しい存在なのだよ。
この詩篇によって神は、 人と対話することができるようになる。
しかし、神が一方的に語りかけるだけならば、 人は神を理解することなどできないだろう。……この結晶がもたらすものは、 人の心を動かすことはできない。
ただひたすらに純粋で、無垢な痛み……。
その傷跡を見るたびに、 私の胸にも痛みが走る……。
私は、かつて彼に言ったことがある。
「お前にとっての正義とは、なんだ?」
と……。
その時の答えは、こうだったよ。
『わからない』とね。
だが、今にして思えば……
それが彼にとっての真実だったのだ。
彼なりの正しさを信じて 戦い続けてきたという訳だな。………………。……もういいかい?…………。……ああ、待たせたな。
それでは始めようか。………………………………。……どうやら、ここまでのようだな。
君のおかげで、少しは気が晴れた。
ありがとう。…………。……そういえば、君は、 私がここに来る前に何をしていたか 興味はないかね?……そうか。………………では話そう。
私はね……ある男を追っていたのだ。
この国の中枢に近いところにいる、……まぁ簡単に言えば政治家という奴だな。
その男が先日、突然姿を消した。
どうにも怪しい動きをしているようでね……。
少しばかり気になって調べていたのだが、 なかなか尻尾を見せなくて困っていたところだよ。
そんな時に君が現れたものだから驚いたよ。
君が何を求めようと知ったことではないがね。
私の興味を引くようなものではないことを祈るばかりだよ。……この娘をどうするつもりだい? 私が答えてやる義理はないが……
まぁいい。
この娘の妄想は、実に単純明快なものだからな。
君の想像通りのものだと思うが、違うかな?……私は私の望むままに生きるだけだ。
それは、とても難しいことなのだけれどね。
この娘の妄想は、 かなり特殊で、強いものだな……。
だが、だからこそ、 これほどの力を持ったのかもしれない。
この妄想は……
おそらく、彼そのものだ。
そして、この娘自身も……。
これは……
彼の記憶なのか……?……だとしたら、 あの時のことは、 本当にあったことだったのか……?……私にも、わからない。
この娘自身でさえ知らないことを、 私が知るはずもない。
ただひとつ言えることがあるとすれば、 この娘は、彼に救われたということだ。
妄想という殻に押し込められていた 彼女の心を解き放ち、 悪夢を終わらせるきっかけを作ったのだからな。
それにしても、 なぜ、こんなものがここに……? ここは、妄想の世界なのか……?……いや、そんなはずはない。
現実ではあり得ないほどの 濃密な妄想が、ここにはある。
これは、 彼の中に渦巻いている感情の ほんの一端に過ぎないはずだ。
だが、これだけでも、 十分に強力な妄想と言える。
彼は、何を想って生きていたんだろうな……。
いや、 これは、あくまで私の推測にすぎない。