テラーノベル
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【登場人物】
俺(主人公): 20〜30代の男性。常識が通用しない世界に迷い込み、困惑している。
女主人: 年齢不詳。感情があるようで、その実「板」のように平坦で冷ややかな声。
〇 謎のカフェ・店内
(遠くで板が重なるような、乾いた「パタパタ」という足音が聞こえる)
(食器が触れ合う音も、陶器ではなく木板がぶつかるような鈍い音)
俺:……なんだよ、ここは。
俺(モノローグ):気がつくと、辺り一面が「板」だった。店の机も、通りを走る車も、横断歩道の標識も──ぜんぶ、平たい板の形をしている。
(混乱して周囲を見渡す衣擦れの音。だが、その音さえも紙が擦れるような質感)
俺(モノローグ):いつものカフェが空いていなくて、代わりを探して歩き回っていたことは覚えている。人の気配がない、妙に静かなカフェを見つけて入った。そこまでは普通の記憶だ。でも、その先がない。気づけば、世界が板に置き換わっていた。
(板の靴音が近づき、目の前で止まる)
女主人:ご注文はどうしますか?
俺:……っ。
俺(モノローグ):目の前にはカフェの女主人が立っていた。もちろん、女主人の着ている服も板だ。形だけは服のままだが、どう見ても平面。
俺:……なあ、わかってんのか? カフェの内装どころか、外の車もスマホも、なにもかもが板になってるんだぞ!
(窓の外、板の車が通り過ぎる「シュッ」という風切り音)
俺:あいつら……あんな板の車を運転して、板のスマホで平然と通話してやがる。なんなんだよ、この空間は!
(カバンをまさぐる音。やはり木札が当たるような音がする)
俺:カバンも、服も……全部「板」だ。なのに、ちゃんと機能してる。どうなってるんだよ……。
女主人:(感情を読み込ませない声で)ご注文は、いかがなさいますか?
俺:……あ。……あぁ、じゃあ……コーヒーとサンドイッチ。
女主人:(少しだけ不気味に、含み笑いをして)……かしこまりました。
〇 数分後
(板がテーブルに置かれる「コン、コン」という軽い音)
女主人:お待たせいたしました。コーヒーとサンドイッチです。
俺:……これ、か。
俺(モノローグ):運ばれてきたのは、板のコーヒーと、板のサンドイッチ。形は確かに“それ”なのに、質感はぺらぺらだ。
俺:……おい、これって一体?
女主人:(ニヤリと口角を上げるような気配で)……ふふ。
俺:……?
女主人:これが、貴方の世界と、私の世界の違いよ。
(低く、不気味なハミングのような音が響き始める)
俺(モノローグ):板の影が床に長く、長く伸びていく。世界が、ひとつ。僕は言葉を失ってしまった。
(全ての音が止まり、静寂)
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