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【登場人物】
私: 明日の生活に汲々としている少女。宝石への憧れと、現実の厳しさの間で揺れている。
女の子: どこか冷めていて、本質を突くような少女。世の中の不条理を面白がっている節がある。
〇 街角・宝石商の前
(雑踏の音。時折、高級車の走り去る音や、着飾った人々の笑い声)
(ショーケースのガラスに、指が触れるかすかな音)
私(モノローグ):私は、街角にある小さな宝石商の場所を知っている。ショーケースの中には、光を反射してキラキラと輝く宝石が並んでいる。外からなら、誰だって眺めることはできる。もちろん、貧乏な私にも。
(店の中から、扉が開くベルの音。親子連れの楽しげな声が漏れてくる)
私(モノローグ):今日も私は、ショーケースの前で立ち止まっていた。ちょうど同じくらいの年の女の子が、親に誕生日プレゼントなのだろうか、宝石の付いたネックレスを買ってもらっていた。
私:(小さく漏れる声)……いいなぁ。
私(モノローグ):そう思いながら、指をくわえて見てしまう。私は明日をどうやって生きるかで頭がいっぱいだ。本来、宝石なんて食べられないし、火も起こせない。もちろん売ればお金にはなるけれど、それなら最初から食料や飲み物、泊まる場所が欲しい。
(自嘲気味に息を吐く)
私(モノローグ):宝石なんて、別にいらないのに。それでも街へ出ると、必ずここに立ち寄ってしまう。
女の子:……人って不思議だよね。
私:……っ!?(驚いて振り返る足音)
私(モノローグ):不意に声をかけられて振り返ると、私と同じ年くらいの女の子が立っていた。どうやら、この子は私がよくここにいることを知っていたらしい。
私:えっ?
女の子:だって、身につけても意味ないのに欲しがるんでしょ? ああいうキラキラしたもの。
私:……憧れちゃいけないの?
女の子:(クスッと笑う)憧れねぇ……。憧れって、そんなショーケースの中の物なの?
私:……。
私(モノローグ):その言葉に、私は口を閉じた。
(女の子がしゃがみこみ、地面の石を拾い上げる音)
女の子:ほら。この石でガラスを割れば、憧れは手に入るよ? もちろん怒られたり、捕まったり、追いかけ回されたりすると思うけどね。
私:……そんなこと、出来ないよ。
女の子:……そうなの? あなたの憧れを手に入れる一番簡単な方法は、今これくらいだけど。
私:(ゆっくりと、諭すように)……誰かに迷惑をかけちゃいけないんだよ。宝石だって、誰かが綺麗に細工して、ああやって輝くようにしてるんだから……その人たちに悪いよ。
女の子:(ニヤニヤと意地悪く)じゃあ、あなたの“キラキラ”は、人が作ったものだね。君は人が作った物に憧れてるんだ。人工物じゃん。
(女の子、飽きたように石を地面に放り投げる音)
私:そうかもしれないけど……! ああいう宝石を身につけて町を歩いてみたい。パーティにも行きたい。かっこいい彼氏とデートもしてみたい。
私(モノローグ):思わず、私はムキになって反論していた。
女の子:(深いため息)ふぅ……そうなのね。そういう願望があるって、羨ましいよ。憧れって、追いかけている間がいちばん幸せなのかもしれないね。
(女の子が去っていく、遠ざかる足音)
私(モノローグ):そう言い残して、その子は去っていった。私はしばらく宝石を眺め、それから店の前を離れた。
(独白のトーンが、より深く、重くなる)
私(モノローグ):宝石は美しい。美しいことは知っている。憧れることも知っている。けれど届かない。届かないから願う。願っても届かない。だから指をくわえて見ているしかない。
(一歩、一歩、歩き始める足音)
私(モノローグ):指をくわえることに飽きたら外へ働きに出る。働けば辛くなる。辛いから目標が欲しくなる。じゃあ、その目標はなんだ?
私:……。
私(モノローグ):宝石を身につけて町を歩くこと。親しい人と笑い合って過ごすこと。そういうことがしたい。でも叶わない。今の状況では絶対に叶わない。宝石を買える人は、限られている。
(街の喧騒が再び大きくなり、少女の姿を飲み込んでいく)