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それでは、
どうぞっ。
ーーーーー
午前。
屋敷の応接室は、珍しくざわついていた。
🩵「本日は大事なお話がございます。」
來亜はソファに座りながら、無意識に指を絡める。
向かいには、父と見知らぬ男。
『こちら、〇〇家のご子息だ。』
軽く頭を下げるその人に、作り笑顔を返す。
嫌な予感はしていた。
でも。
『君との婚約を前提に話を進めていきたい。』
はっきりと言われてしまうと、逃げ場がない。
🤍「……そう、ですか。」
自然に返事が出来た自分に、少し驚いた。
視線の先に彼女がいる。
壁際で、いつも通り控えている。
何も変わらない顔で。
『異論はないな?』
父の言葉。
少しだけ、間を置く。
本当は_
🤍「はい……」
そう言うしかなかった。
ーーーーー
部屋を出た瞬間、息が詰まった。
🤍「…、最悪。」
小さく吐き捨てる。
廊下の奥、足音がついてくる。
分かってる。
振り返らなくても。
🩵「お嬢様。」
その声に思わず立ち止まる。
🩵「お話がございます。」
🤍「…なに。」
振り返ると、いつもと同じ距離で立っている。
その距離が、今日はやけに腹立たしい。
🩵「先程の件ですが、」
淡々とした声。
🩵「お嬢様にとって、最善のご縁かと思います。」
一瞬、意味が分からなかった。
🤍「……は?」
🩵「家の発展、そして_」
🤍「ちょっと待って。」
遮る。
🤍「それ、本気で言ってる?」
彼女は一切表情を崩さない。
🩵「はい。」
迷いもない。
🤍「ふざけないで。」
声が低くなる。
🤍「私の事なんだと思ってるの。」
🩵「お嬢様です。」
即答。
その一言が、胸に刺さる。
🤍「……それだけ?」
聞いてしまった。
聞くつもりなんてなかったのに。
ほんの一瞬。
彼女は言葉を失った。
でも。
🩵「それ以上、それ以下でもございません。」
静かにそう言った。
その瞬間。
何かが、はっきりと壊れた気がした。
🤍「そっか。」
小さく笑う。
🤍「じゃあいいや。」
もういい。
何も期待しない。
🤍「貴女はそういう人だもんね。」
背を向けて歩き出す。
止めて欲しいなんて思ってもない。
でも。
ほんの少しだけ、期待してしまった自分が嫌になる。
🩵「……お嬢様。」
呼び止める声。
だけど、振り返らない。
🤍「何も言わないで。」
それを聞いたら、多分。
戻れなくなる。
NEXT.
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