テラーノベル
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最初に見たのは、まだ会場が小さかった頃だ。
ステージに立つ仁人くんは、今より少し幼くて、でも目だけは真っ直ぐだった。
あの日、俺は客席の後ろの方でペンライトを握っていた。
正直、最初は軽い気持ちだった。
友達に誘われて、なんとなく。
でも、気づいたら目が離せなくなってた。
歌いながら、誰よりも楽しそうに笑う人。
ファン一人一人にちゃんと視線を送る人。
…この人、好きだな。
アイドルとして、じゃなくて、一人の人として。
そこからは早かった。
ライブは全部行ったし、リリイベも可能な限りは全部行った。
CDも積んだ。
SNSの更新は秒でチェック。
周りからは「古参じゃん」と笑われた。
でも誇らしかった。
だって俺は、まだ会場が半分も埋まらなかった頃から、ずっと見てきたから。
ある日の特典会。
順番が回ってくる。
心臓がうるさい。
今日も言えないんだろうな。
💛「ありがとう、いつも来てくれてるよね?」
その一言で、時間が止まった。
……認知されてる。
「あ、はい……」
情けないくらい声が震える。
でも、仁人くんはにこっと笑う。
💛「勇斗くん、だよね?」
そう言われた時、頭が真っ白になった。
名前、覚えられてるんだ。
その瞬間、嬉しくて堪らなくて。
ずっと固まっちゃってたな。
年月は流れて、会場はどんどん大きくなった。
武道館、
アリーナ。
歓声も、照明も、規模も、全部が変わっていく。
でも俺は、ずっと同じ場所にいる。
客席。
ファン。
古参。
それでよかったんだ、本当は。
だって、越えちゃいけない線があるって分かってたから。
でも、あの日。
アンコールで、仁人くんがステージの端まで来た。
視線が、合った。
たった数秒。
だから、逸らさなかった。
仁人くんとも、目が合っていたと思う。
そのまま、ほんの少しだけ笑う。
俺に向けたのかなんて分からないけど…
俺だって思ってもいい?
その日、帰り道で泣いていた。
好きすぎて。
どうせ、届かないのに。
そして、今日。
俺はまた客席にいる。
隣の席の子が言う。
「佐野くん、ほんと毎回いるよね。」
「まあね。」
笑って誤魔化す。
でも本当は、毎回怖い。
もし俺がいなくなったら、
あの人は気づくのかな。
でも、気づかなくていい。
気づかれたら、終わる。
だって俺は、ただのファンだから。
ステージ上の仁人くんがマイクを握る。
💛「ずっと応援してくれてる人、ちゃんと見えてるよ。」
胸が跳ねる。
💛「昔から来てくれてる人も、最近好きになってくれた人も、みんな。」
その目が、また一瞬こっちを向く。
俺はペンライトを強く握る。
俺はずっとここにいる。
好きだなんて、言えなくていい。
触れられなくていい。
ただ、あなたの夢が叶う瞬間を、一番近くで見ていたい。
それだけでいい。
……はずなのに。
ライブ終わり、スマホが震える。
知らない番号だ。
出ると、低くて聞き慣れた声。
💛「勇斗くん?」
息が止まる。
「……え。」
夢、?
💛「ちょっと話せる?」
心臓が、壊れそうなほど鳴る。
どうして、?
どうして俺に…?
💛「会いたい。」
その一言で、世界がひっくり返った。
┈┈┈┈┈┈┈
続きます♪
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