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青年は尻ポケットから財布を引っ張り出した。カードホルダーには銀行のカードが並ぶ。コンビニ給与が振り込まれているもの。引越バイトの給与が振り込まれているもの。前の工場の給与が振り込まれていたもの。その他、自分でもいつ作ったのか憶えていないものもあった。
リラ札を引っ張り出すと、拍子に中に入っていたものが床に散らばった。大学時代の学生証を拾う。物理学科の文字が見える。
「研究室のクタイって奴は、トルコ人だけどいい奴だったね、昔は」
イスタンブール・ボールと書かれた広告紙を拾う。
「そいつにボーリングを教わった」
行きつけのバーの会員証を拾う。
「この店はそこの金角湾沿いにあるんだ。ベリーダンスを週末やってるよ。お客にたまに可愛い子も来る。そこで知り合った子と、ケバブの美味い店とかの情報交換してる。今夜行ってみる?」
「誘いは有難いけど、今夜の汽車でこの街を経つ。これは?」
それは「起業家を目指すあなたのビジネスミーティング」と書かれたカードだった。
「いつまでこんなままでもしょうがないしさ」青年はファスナーの一部壊れた大きな鞄見た「何か立ち上げるのもいいかと」
そして寝癖のついた後ろ髪に手を廻した
「でも、今はまだ、何やるか全然決まってないよ」
「いろんな顔があるんだね、ジャンルごとに」と旅人が言った。
「まあ、そういうことになるのかな」と青年は言った。