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「樹・・大丈夫なの!?」
「大丈夫だって言ってたでしょ。ちゃんとこれは予定通りだから問題ない」
「えっ、予定通りって・・意味わかんない」
「わかんなくていいの。ちゃんと説明するから」
「ねぇ・・どこ行くの?」
「いいから。ついてきたらわかるよ」
なんかこれ前にもあったような・・・。
あの時もすれ違った後、こんな風に連れ出してくれたんだったな。
正直戸惑いながらも、本音は樹と今こうやって一緒にいれることが嬉しくて。
樹の気持ちが伝わるくらい強く握って来るこの手の力の強さも嬉しくて。
ずっと会いたくて仕方なかった樹が今目の前にいて、すぐ傍にいることに本当はそれだけでもう胸がいっぱいで熱くなる。
結局ずっと忘れられなくて諦められなかった樹がここにいて。
例え少しの時間でも嬉しくて。
やっぱりずっと一緒にいたいと思ってしまう。
また同じように接してくれることにキュンとなる。
この瞬間だけでも、また前みたいに勘違いでもいいから同じ時間が過ごせるならそれでもいい。
また会えなくなって後悔してしまうくらいなら、今いる樹との時間を大切にしたい。
そして、そのまま連れて来られた場所は前に来た最上階の、あの想い出の部屋。
「ここ・・・」
「そっ。覚えてる?」
「もちろん」
「まだ覚えてくれててよかった。じゃあ入って」
「うん・・・」
同じ部屋に入った瞬間、あの時の幸せな時間を想い出して胸が苦しくなる。
「そこ。座って」
樹にそう促されて部屋の中にあるソファに座る。
そしてその隣に樹もそっと腰を下ろす。
いざこんな近くで座るのが久しぶりでドキドキしてしまう。
それどころか、隣に座ってる樹の顔でさえ見れなくなる。
「透子・・・」
「何・・・」
なんとなく樹はすぐ近くで私の顔を覗き込むようにしてずっと見つめている。
だけどまだ私は恥ずかしくてその目さえ合わせられない。
なんで、私今更こんなドキドキしてんの。
1年会えなかったくらいで、なんでこんな緊張してんだか。
「こっち向いて」
そんな色っぽく言われると余計に心臓が持たない。
でもそんな樹も見たくて、そっと隣りへ視線を動かす。
すると、やっぱり真近くで見つめている樹。
視線が重なるその瞬間、また心臓が跳ね上がる。
やばっ、樹。こんなにかっこよかったっけ?
そんな色っぽい目で見つめられても困る。
ホントに心臓おかしくなる。
私は耐えられなくなってすぐ目を逸らす。
「なんで目逸らすの?」
「いや~なんでかな~ハハ」
さすがに久々に見た樹が、カッコよすぎな上に色気ありすぎて眩しすぎるから直視出来ないから・・・とは、恥ずかしくて言えない。
「透子。ちゃんとオレの方見て」
すると樹は私の気持ち関係なく、真剣モードで私の身体をクイッと樹の方に向け逃げられないように樹の真正面にロックオンされる。
だから直視出来ないんだって~!
仕方なく樹の顔を見るも・・・。
あ~、ヤバい。
こんな状況やっぱり好きな気持ち溢れ出そう。
「透子。会いたかった」
そんな言葉。一撃でやられちゃう。
ずるいよ。なんでそんな目で見つめるのさ。
この心臓も涙腺も一気に崩壊する。
さすがにもう溢れて来る涙を止められないまま、樹をそのまま見つめる。
「なんで泣くの・・」
そう言いながら優しく笑って私の涙を指でそっと拭ってくれる。
「ずるいよ・・・」
「何が?」
泣きながら言う私の言葉にまた優しく笑って答える樹。
「私だって・・ずっと会いたかった」
なぜか私は泣きながら悔し紛れに言ってしまう。
「ごめんな・・・透子。今まで待たせて」
するとそう言いながら優しく抱き寄せ、樹の肩に私の頭を乗せポンポンと触れてなだめてくれる。
私は樹の肩に顔をうずめて、そのまま泣くことしか出来なくて。
「もう心配ないから。もうこれからはずっと一緒にいられるから安心して」
そしてまた涙が止まらなくなる今度は嬉しすぎる言葉をくれる。
「ホントに・・?これからずっと一緒にいられるの・・?」
思わず顔を上げて樹の顔を見る。
「もう大丈夫」
するとまたとびきり優しい笑顔と共に嬉しい言葉をくれた。
「ここまで時間かかっちゃってごめん。でもホントはオレも不安で仕方なかった」
「不安って・・?」
「こんなに待たせて透子に愛想つかされても仕方ないなって思ってたから。でも透子がオレ好きじゃなくなって離れていっちゃうかもしれないって考えると気が狂いそうだった」
「そんなことあるはずないじゃん。樹のことどうやったって忘れられないし諦められないし、それどころか好きな気持ち逆に大きくなっちゃうし、ホント大変だった」
「・・・それすげぇ嬉しい」
樹が少年のように可愛く照れた表情で嬉しそうに微笑む。
「樹は・・?まだ好きでいてくれるの?」
「いや、当たり前でしょ。オレ絶対透子に比べモンにならないくらい透子のことヤバいくらい好きだから。そんなの出会ってから今まで一回もブレたことないし」
「よかった・・」
私も素直に嬉しくて微笑む。
「オレだって今の方がもっと透子のこと好きで仕方ない」
「樹・・・」
面と向かってそんなストレートな言葉を言われると照れくさすぎる。
「だから透子ももっとオレを好きになって。壊れるくらいオレを好きになって」
あぁ、こういうとこがたまんなく好き。
もう理由なんてない。
もう今もこんなに樹が好き過ぎる。
「もうこんなに樹が好き過ぎて壊れて困ってる。ここまで好きにさせたんだから、ちゃんと責任取ってよね」
「もちろん。喜んで」
そう優しい言葉と極上の笑顔と共に、そっと唇が降って来た。
私の気持ちが伝わるように、私も目一杯腕を伸ばして樹の首に手を回す。
そして樹もそれに応えてくれるように、同じように手を回し返して強く抱き締めてくれる。
今まで一番優しくて愛しくて幸せを感じられる瞬間。
ようやくまた辿り着けた幸せな瞬間。
普通に当たり前だと思ってたことが、どんどん出来なくなってきて、ただ一緒にいることさえも出来なくなった。
どれだけお互い好きでも一緒にいられない時間があるのだと実感した。
待ち続けても、もう叶わない想いだと思った。
もしかしたらこの縁は、もうこのまま終わってしまうのかもしれないって思っていた。
だけど、まだこの縁を信じられるならまた信じたい。
ずっとこの縁が繋がっていくように。
もう二度と途切れないように。