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仕事を終えて、守はいつものアパートに帰ってきた。部屋のドアを閉めると、
ため息をついて猫を撫でた。
(今日は散々だったな……でも、もし俺が倉庫にいなかったら、
佐々木はエスカレートしてたかもしれない……いや、すぐに天城くんが来ただろうけど)
守はそんな考えを振り払うように猫の背を優しく撫で続けたが、心の中では自分自身に嫌悪感が渦巻いていた。
目の前で好きな人、紗良がセクハラをされているというのに、一歩も動けなかった自分。
無力で、ただ見ていただけの自分が、どうしようもなく情けない。
だが、それは今に始まったことではない。守は苦々しい気持ちで思った。
(俺は43年間ずっとこんなだ。何も変わらない、この先もずっと……)。
気持ちを紛らわせるために、守はパソコンを開いてゲームにログインした。
ギルドに入ると、相変わらず多くのアバターたちが立っている。
そこに「フクさん」と呼びかけられた。シンシアだった。
シンシアのアバターは髪型が変わっていることに気づき、守は声をかけた。
「シンシアさん、髪型変えたんですね。」
シンシアはすぐに返事をした。「はい、フクさんとかぶってしまったので、今日はポニーテールにしました。」
守は思わず微笑んだ。シンシアの中身は48歳のおじさんだが、ゲームの中ではその年齢は関係ない。
フクは言った。「今日はどこに行きましょうか?」
2人はギルドを出て、モンスター狩りに出かけた。現実世界で感じたストレスを解消するかのように、
今日のフクは気合が入っていた。銃を構え、次々とモンスターを撃って、撃って、撃ちまくる。
その動きはいつにも増して激しく、シンシアが驚くほどだった。
「フクさん、なかなかやりますなぁ」とシンシアが感心して声をかける。
フクは苦笑しながら答えた。「はは、今日はなんだか激しく暴れたい気分なんです。」
モンスターを倒して進んでいると、突然2人組の男性アバターに声をかけられた。
「こんばんは。良かったら一緒にどうですか?」
昨日、セルフという男に騙されたばかりだったため、守は警戒心を抱いていた。
だが、シンシアが言った。「プロフィール非公開だし、大丈夫じゃないですか?」
フクは一応、念のため男性たちに向かって言った。
「僕たちはおじさんです。それでもかまいませんか?」
すると、男性アバターたちは爽やかに笑って答えた。
「もちろん。一緒に遊ぶことが目的だから、関係ないですよ。」
その返答にフクは少しホッとし、2人組と一緒にモンスター狩りを再開した。
2人組の男性アバター、トラストとマジルと共に、フクとシンシアは次々とモンスターを攻撃していた。
激しい戦闘が続き、フクは自分のレベルでは手に負えないような危険な領域まで進んでいたが、
不思議な爽快感が胸を突き上げていた。
「やばい場所まで来ちゃったな……」と少し不安になりつつも、手は止まらなかった。
しばらくして、トラストが声をかけた。「少し休憩しませんか?」その提案に皆が頷き、
4人は火を焚いて一息ついた。フクも疲れた体を休めようとその場に座ろうとしたその瞬間――。
突然、トラストがシンシアに殴りかかった。
「ドカッ!!」
驚愕に目を見開いたフク。「え?」
シンシアも驚きの声を上げた。「こ、これはどういうことですか?」
トラストは冷笑を浮かべながら答えず、再びシンシアを蹴り飛ばした。
彼の振る舞いにフクはただ立ち尽くすしかなかったが、
その背後から急に電撃のような痺れが走り、体が動かなくなった。
「う…!?」フクは苦しみながら叫ぶ。「な、なんで…」
シンシアも倒れ込んだまま、痛みに震えながら問いただした。「どういうことなんですか…」
「どういうことって?」トラストは嘲笑を浮かべたまま、
楽しそうにシンシアを蹴り上げる。「ただの遊びさ。」
その時、マジルが口を開いた。「今月何人目だ?」
トラストは腕を組んで、楽しげに数を数えるようにして言った。「これで21人目かな。」
「じゃあ、俺のほうが上だな。」マジルはそう言って、フクの背中にさらに強力な電流を流し込んだ。
フクは体中に稲妻が走るような痛みに耐えながら、体力がみるみる減っていくのを感じた。
「な、仲間じゃないか!なんでこんなことを……」
トラストは薄笑いを浮かべて答えた。
「知らないのか?このゲーム、プレイヤー同士でも殺し合いができるんだよ。」
「こ、殺し合いって……!」
フクの驚愕の声を無視して、マジルは冷たく言い放つ。「俺たちの目的はちょっと違うけどな。」
シンシアは必死に声を絞り出した。「目的って……?」
トラストは笑いながら続けた。
「このゲームでは何でもできるんだよ。殺し合いも、妊娠も、出産も……つまり、そういう行為だってな。」
マジルがさらに残酷な声で続けた。
「おじさんだろうが、おばさんだろうが関係ない。俺たちは誰でもいいんだ。数を競って楽しんでるんだから。」
そう言うと、マジルはシンシアの服に手をかけ、無情にも破り始めた。シンシアの悲鳴が響く。
フクは必死に体を動かそうとするが、痺れと恐怖でどうにもならなかった。(やめろ……やめてくれ……!)
しかし、声にもならない叫びが胸の中で空しく響くだけだった。