ームラクモの世界でー
駆け足で、俺はとある世界と繋がる裂け目を探した。
絶対にこの近くにあるはずなのは分かる。
だけど見つからない。
「…ねぇ、あの白いヒビみたいなのって何、?」
黒神MZD「!何処だそれ、!?」
「右側の路地裏、小さいけど何か見えるよ、!」
言われた通りに右側を見ると、
小さい白い光が見えた。
そこに俺は駆け足で向かった。
黒神MZD「…これだ。このヒビを大きくして入るぞ。」
その白いヒビに左手をかけ、
右手でカッターを持った。
その持った右手のカッターで、
その白いヒビを削った。
案外簡単にそのヒビは広がり、
自分が入れるくらいの大きさになった。
黒神MZD「っと、こんなもんだろ。さて、中に入ってみっか。」
俺は頭の上に乗せていたうさぎと猫を抱え、
裂け目に慎重に入った。
しかし、バランスを崩して頭を打った。
抱えていたうさぎと猫は無事だったので安心した。
打った部分を手で押さえて回りを見渡してみると、
うっすら霧がかかっているようだった。
…いや、霧じゃない気がする。
黒神MZD「…これ、雲か、?周りは薄緑色の空ってところか…」
MZD?「…ハテナ?あのMZDに何したの、!」
声の先には、
白い服で、灰色の帽子を被った、
黒神になる前のMZDによく似た少年が立っていた。
黒神MZD「…もう1人の、神さま、?」
「!もう1人の僕、!!」
MZD?「あの子を返して!」
黒神MZD「……分かったよ。神さまが望むかは知らないけどさ。」
そう言って、
ハテナは僕に憑いていたのを解いた。
僕の体は軽くなったように感じ、
前に倒れそうになった。
?「(…大丈夫か?)」
MZD「う、うん、」
白ハテナ「(さっきぶりだな。あの時俺が見えてたかは知らないが。)」
MZD「!白い、ハテナさん、!」
MZD?「白ハテナとでも呼んであげたら〜?ま、それは置いといて、ムラクモの世界へようこそ。ムラクモMZD。あと、僕のことは、辿る君とでも呼んで!」
MZD「…ムラクモの世界、?ムラクモMZD、?それって、僕のこと、?」
辿る君は、そんな事を急に言い出したので、
僕は少し頭が混乱してきた。
MZD?「そう。ムラクモMZDは君の事だよ。この世界は、君の記憶の闇が作り出した世界。君はここから自力で抜け出さないといけないんだ。僕はもう”諦めた”けどね。」
MZD「……どうして、諦めたの、?」
MZD?「…君はまだ知らなくて良いんだ。いつか、自然と知ってしまう時が来るまで、忘れておいてよね。」
帽子の影からうっすらと見える辿る君の表情は、
今にも泣きそうな、
苦しそうな表情だった。
だから、僕はそれ以上聞くのをやめた。
MZD?「さて、ムラクモくん、!君はここから出るために、黒ハテナさんの助けを借りずに、自力で出口を探すんだ。絶対、ムラクモ君なら出口に辿り着けるよ!」
MZD「…分かった、!絶対諦めないで出口を探すよ、!」
そう言って僕は出口を求めて歩き出した。
辿る君達に見守られながら。
MZD?「……これで良いんだ。僕はもう救われないけど、ムラクモ君は、まだ…」
?「(辿る君。お前だって、必ず救われんだよ。俺には分かる。だから、そんな悲しい顔すんなって。)」
白ハテナ「(黒ハテナの言う通りだな。お前だって必ず救われるんだから。お前にとっては予想外の人にな。)」
MZD?「…黒ハテナ、白ハテナ……ありがとう、まだ、僕にも、希望はあったんだね…」
猫「にゃあ!!」
うさぎ「きゅ〜!」
MZD?「…元々、僕が行こうとして諦めた道を、ムラクモ君というもう1人の自分が辿る…その道を、”辿る君を超えて”いくのも、悪くないかもね……」
MZD「……これは、遊具、?滑り台に、ブランコ、鉄棒もある…」
辿る君達がもう後ろを向いても見えなくなった時、
遊具が沢山設置されている場所に着いた。
周りを見回してみると、
砂場に、紫色の髪をした、猫耳の男の子と、
黄色い髪の、黒いうさぎ耳の男の子がいた。
猫耳の男の子は、砂で山を作っては壊してを繰り返して、
うさぎ耳の男の子は、枝を振り回していた。
小さい子供がよく「勇者の剣〜」って言ってる感じのだろう。
そんな光景を眺めていたけど、
この子達の邪魔になるかも知れないと思い、
立ち去ろうとした時。
さっきまで砂場で遊んでいた猫耳の男の子が、
僕の青い服の裾を掴んで僕を見ていた。
その猫耳の男の子の目は、前髪で隠れていて見えない。
それに、さっきまで砂場で遊んでいたので、
邪魔になったかなと思い、謝ることにした。
MZD「ごめんね、邪魔になっちゃった、?」
猫耳少年「……別に、邪魔じゃない……お兄ちゃん、名前はなんて言うの、?」
MZD「邪魔じゃ無かったなら良かった。あ、僕の名前はムラクモMZD。君は?」
猫耳少年「……名前、分からない…適当に呼んでいいよ。なんて呼ばれようと気にしないから…」
なんだろう。
名前が分からないから適当に呼んで良いよって、
少しハテナさんと似ていた。
でも、言葉遣いも姿も違うから、
別人だよねと思い、この子の名前を考えた。
MZD「…ウミくんとか?」
猫耳少年「ウミ…それでいいよ。僕はウミっていう響き好き。」
その子はウミと言う名前が気に入ったらしく、
ニコッと笑ってくれた。
猫耳少年「あ、ソラも呼んでくる。待ってて。」
MZD「分かった、!」
そう言って、今だに枝を振り回していたうさぎ耳の男の子の方にウミが行って、
その子をこっちまで連れてきてくれた。
猫耳少年「この子がソラ。僕のお友達。」
兎耳少年「初めまして!僕はソラです!お兄ちゃん名前はなんて言うの?」
MZD「僕はムラクモMZD。君たちは何してたの?」
猫耳少年「…遊んでた。でも、お兄ちゃん、ここが何処かは分かってるよね…?」
MZD「あ、うん…てことは、君たちって……」
兎耳少年「…ここから出れないんだ。だから、お兄ちゃんも出れないんじゃ無いかって…」
聞かなければ良かったと思いつつ、
この子達も出口に案内してあげれば良いんじゃ無いかとも思った。
MZD「…君たちも、僕について来る?僕は出口を探しているんだ。」
猫耳少年「…出口なんてあるの、?広いから、そんなの無いと思ってた…」
MZD「…じゃあ、白い蝶に導いて貰おうよ、!待っててね。魔法で作ってみるから、!」
そう言って、僕は目をそっと瞑り、
白い蝶をイメージした。
あの時、辿る君が作ってくれた、
導きの白い蝶を…。
パッと目を開けると、
自分の手のひらには白い蝶が止まっていた。
兎耳少年「お兄ちゃん凄い!!本当に魔法が使えるんだ!!」
猫耳少年「綺麗な蝶…お兄ちゃんなら、色と音で溢れた世界とか、作れそうなのに。」
MZD「色と音、か…ここから出れたら、君たちも招待するよ。僕の作る世界に、!」
そう言って蝶をひらりと飛ばし、
その後を3人で追いかけた。
途中、横断歩道の信号が赤になって止まったり、
白い背の高い建物が並んだ所を通ったけど、
やっぱり人は居なかった。
やがて、その白い蝶は、
1つの大きな扉に止まり、粒子のようになって消えた。
MZD「ここが、出口の扉…」
?「(辿り着けたか。それに、お前を求めていた人、見つかったな。)」
MZD「!ハテナさん、!」
そう言ってハテナさんは2人を撫でていた。
その2人は怖がることも嫌がることもなく、
大人しくしていた。
?「(さて、ここから出ようか。その後は、神さま次第かな。あ、あと、うさぎと猫は、俺が抱えてるから大丈夫だ。)」
そう言って扉を開けたハテナさんは、
その扉を潜った。
そして、僕たちも、その扉を潜って行った。
MZD?「……見守っているよ、これからもずっと。僕もいつか、ここから出て見せるよ。だからそれまで、待っててよね。ムラクモMZD。」