目の前が光って、人の姿が現れる。このポニーテールは……。
「あ、まふゆじゃ〜ん」
「絵名……馴れ馴れしいね」
「まふゆって人のことツンデレって言うくせに、実はまふゆも結構ツンデレじゃない?」
だって、昨日一昨日はあんなに甘えてきてたし。そのくせ馴れ馴れしい、なんて。まあ、誰にも話題提供できないけど。
「ここで描いてるの、待ち伏せ?」
「待ち伏せって言い方悪いけど、そうそう。誰かに会えるかなって。どうせなら誰かと話したい気分だったし」
「ふーん」
私のその言葉に気を遣ったのか、まふゆは私の隣に座った。顔をじっと見てみる。寝てる時とかはいい顔してるけど、今はやはり無愛想。
「……何?」
「いや別に。なんでもないかな」
「そう、描かないの?」
「うーん……」
私は持っていたスケッチブックと鉛筆を置く。
「絵名?」
「もう少しね、うん、笑顔でね、そう、過ごせばいいなって」
「……?」
まふゆの顔に触れて、口角を上げてみる。
寝てるときは結構優しい顔でちょっと口角が上がってたくらいだから、あの顔ならちょっとの力でいいんだよね。でも、口を広げて笑うまふゆが見たいな。
「えにゃ?」
「ふふ」
「……なにひてりゅの?」
「ちょ、その顔で怖い顔しないで」
いい子やってるからか、顔が柔らかい。人の顔なんて触ったことないから比べようないけど。しかし、どうやったらあんな無で保てるんだろ。
ほっぺた、むにむにしてて気持ちいい。ていうか、肌すべすべ。綺麗だし、体にいい食べ物食べてるんだろうな。野菜とか好き嫌いせずに。
「あ。ちょっと!」
体を逸らされて、顔が手から抜ける。そして手首を見事に掴まれる。
「絵名……どうしてこんなことしたの?」
「え、あー、笑顔が見たいなって思って?」
「ふーん」
手を離し、すかさずまふゆは私の頬に触れる。
「まひぃゆ?」
そして両手で包むように触っていく。
「いいね。肌もすべすべだし、触り心地がいい」
と言い、ほっぺたを伸ばしたり、つついたり。人の頬を粘土みたいに扱ってくる。
「ちょっと、遊んでる?」
「絵名に言われたくないけど」
「ちょっと、私は笑顔が見たくて触ったの!」
まあ、確かに途中から違うこと考えてたけど。
でもそれは不利になるから言わない。そして私はもう一度、まふゆの頬に手を伸ばした。
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