俺には特技がない。勉強も、スポーツも、ゲームでさえも、得意じゃない。これは、こんな何も取り柄のない俺のお話。
太陽がギラギラ輝いていた季節もあっという間にすぎて、木々が赤く染まってきた頃、俺は重い腰を上げて入学式以来2回目の学校へ行った。やっと受験で合格して入れた高校も、中学の時と変わらず、取り柄のない自分が嫌で逃げた。宇宙人を見るような目で見られ、教室の扉をガラガラとゆっくり開けた。クラスメイトの何人かは音に気づいて、こちらを一瞬見たが、何も言うことなく、目を背けた。まぁ、そうか。あっと、席替えをしていることに気づいた俺は、硬直した。誰かに聞かなければいけないが…。誰も俺のことなんか気づいてくれない。俺は一人で自分の名前が書いてある椅子をなんとか探し、席についた。そもそも俺がなんで学校に来たのか。それは、出席日数がやばいことに気づいたからだ。別にやりたいこともなければ、本当に好きなこともないから、どうでもいいのかもしれないけど、卒業はしないとだめだと思った。将来はテキトーに就職して生きていければいいさ。「あの、山村和真くん、ですよね?」…え?
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