「んんんっ……あれっ!? 私どうして?」
葵さんは体を起こすと辺りを見回していた。
「イッ…」
すると痛そうな表情をしながら頭を押さえていた。
「頭痛むの?」
「紺野さん、私……」
「覚えてないの?」
「うぅん…覚えてる。私、公園で倒れたんだよね…。ゴメンね、迷惑かけちゃって」
「迷惑なんかじゃない。葵さんがする事は、僕が責任もって受けとめるから何も心配する必要ないよ」
「紺野さん…」
葵さんは、ジッと僕を見つめていた。
すると次第に目には涙が溜まり、唇は小刻みに震えていた。
そして手で口を押さえると、横を向いてしまった。
泣いているようだった。
しばらく沈黙が続いた。
「何か聞きたい事があるんじゃないの?」
僕が黙り続けていると葵さんから口を開いた。
「別にないよ…」
「知りたいんじゃない? 私が倒れた理由を?」
「何か未来を見たせいなんでしょ?」
「うん…」
「教えられる日が来たら、教えてくれればいいよ」
「一生教えられないかもしれないよ?」
「その時はその時だよ。葵さんが、そう決めたなら僕は何も文句はないよ」
「ありがとう」
「何だか水臭いな。僕たち、もう恋人同士なんだよ」
「そうだっけ?」
すると、葵さんの頬はピンク色に染まり、照れ臭そうに僕から顔を背けようとした。
「んんっ」
でも、僕の方が一瞬早く葵さんの動きを封じた。
「誰かに見られたらどうするの?」
唇を離した葵さんは、そう言いながら指で唇を撫でていた。
「大丈夫。誰もいないよ」
「それなら私もいいかな?」
ベッドの上の葵さんは僕の腕を引っ張って抱き寄せると、恥ずかしそうにキスをしてきた。
葵さんの誕生日から僕と葵さんは恋人となり、付き合い始めた。
だからといって2人の関係に特別変わった所はなかった。
只、葵さんは、あの未来の映像を見てから何かが変わってしまっていた。
佐藤家は、お金に困る事など一生ないような裕福な家庭であるにも関わらず、葵さんは何故かアルバイトを始めた。
学校が終わると週3日のペースでアルバイトに行って仕事をしていた。
スーパーで働いていると言っていた。
驚きだった。
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