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ふたりが出会う前の世界】
悪魔たちは天使を“粛清者”と呼び、
天使たちは悪魔を“汚濁の塊”と呼んだ。
出会えば殺す。
名前など必要ない。
天界の剣は、悪魔の心臓を貫くよう鍛えられ、
魔界の炎は、天使の羽を焼き尽くすために生まれた。
天使は過去に多くの“魔族の子”を浄化し、
悪魔は“堕ちた天使の骸”を吊るして見せしめにした。
この戦争は始まったのではなく、最初から世界の一部だった。
誰も疑問を抱かなかった。
それが、当たり前だったから。
だからこそ――
赤と水の“出会い”は、世界の常識をすべて覆すものだった。
天使に家族を奪われた悪魔と、天使の中で母を処刑された少年。
本来なら、絶対に交わってはならないふたり。
けれど、そのふたりが惹かれ合ったということ。
それこそが、何より残酷で、何より強い“真実”だった。
最悪の戦争期「千年灰の章」
それは、天界と魔界の争いの中でも最も悲惨で、最も長い戦だった。
後に「千年灰」と呼ばれた戦争。
何もかもが燃え、何もかもが消えた。
空は黒く、海は灰を溶かし、どちらの軍も損耗は限界に達していた。
天界は命令によってのみ動く精鋭部隊を量産し、
魔界は少年兵を魔術で無理やり強化し、戦線に投げ込んだ。
戦死した者の名前は記録すらされず。
記憶からも、世界からも、消された。
「誰のために戦ってるのか、もう分からない」
そんな声すら、命令違反で消された。
この戦いの末、無数の“堕天”と“魔気汚染”が発生し、
天使も悪魔も、子を産む数が激減した。
それでも争いは止まらなかった。
“過去の憎しみ”だけが、誰かの命よりも強かったからだ。
そのただ中に、今回登場する6人は皆、それぞれの幼年期を過ごしていた――