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めんどくさがりの魔法学校！

第4話 - 第4話

1,001

2023年01月06日

#ワイテルズ

#我々だ

#ら運営

Chara@Mammy🦄👊

入学受付の列は、数人分しか伸びていなかった。受付が分散されているのもあるが、既に多くの新入生は手続きを終えているのだろう。「舟もなかった」と思ったところで、菜乃葉は学校側が舟不足を把握してない事を思い出した。

菜乃葉

「ごめん。ちょっといい？」

「はい、なんでしょう」

菜乃葉

「実は……」

近くの係員に声をかけ、新入生の舟が足りていないことを説明する。もしかしたら今も、舟が足りないせいで学校に来れていない生徒がいるかも知れない、と。自分達が飛行魔法で来たことは伏せて係員に話した。

「そうですか、今年は新入生が多いから……情報ありがとうございます。すぐに迎えを手配させますので」

菜乃葉

「うん、よろしく」

そうこうしているうちに列は順調に進み、あっという間に菜乃葉の順番が来る。受付に入学願書を提出するとすぐに、特殊な魔道具を使った魔法確認の作業が始まった。

本物の入学願書は、魔法学校の入学資格がある者のみが持っている物だ。各国は常に総力を上げて、稀少な魔法素質保有者を探している。そして素質を見出された者は入学願書を与えられ、魔法学校の入学資格を得る。

どこからどう手に入れたのかは知らないが、菜乃葉が持っているのも本物の入学願書だ。願書を手渡してきた弟から、菜乃葉はそう聞いていた。

「入学願書が本物である事を確認しました。菜乃葉さん、御本人で間違いありませんね？」

菜乃葉

「うん」

「了解しました」

受付の人は手元で何か操作をすると、言葉を続けた。

「菜乃葉さんの魔法パターンを登録しました。これ以降、学校の結界を出入りできます。奥の扉を出て結界に入り、入学試験会場に移動して下さい」

菜乃葉

「……入学試験？」

入学資格があることは、既に入学願書で証明されている。ここからさらに試験があるのか、と菜乃葉は意外に感じた。

「願書を受け取る時に、担当者から説明されませんでしたか？　入学時には簡単な試験を行います。とは言っても、現在の到達度を確認するためのものです。試験結果によって入学が取り消しになる事はありません。どうぞリラックスして、自分の実力を発揮できるように頑張って下さい」

菜乃葉

「へぇ…そんな試験が……」

説明を聞いてみれば、なるほどそういう試験があってもおかしくは無い。菜乃葉はぺこりとお礼を述べ、説明された奥の扉へ進む。

「弟め、説明忘れてたな」そう口の中だけで呟きながら、扉を開けて外に出る。するとすぐに、前方に建つ光る壁が目に入った。遠くから見た時に学校全体を囲っていた光の半球ドームと同じものだが、近くで見るとバカでかい光る壁にしか見えない。

菜乃葉

（もう結界を出入りできる、とは言っていたけど……）

おそるおそる、指先を少しずつ光の結界に近づける。ちょん、と指先が触れた瞬間＿＿菜乃葉の身体は、全く違う場所に転送（テレポート）された。

菜乃葉

（……はいはい、入るってそういう）

周囲を見渡しながら、菜乃葉は小さくため息を漏らした。ついさっきまで立っていた場所からは、かなり離れた場所に飛ばされた事を察する。空には光る結界が見えるから、結界の中、学校の中庭のような場所だろう。魔力パターン毎に予め登録してある場所に転送する、おそらくそんな術式が結界に仕込んであるのだろう。

そしてここに飛ばされた理由も、周囲を見れば分かった。等間隔で並んで立つ射撃標的、そこに魔法を打ち込んでいく若者たち。誰かが魔法を放つたびに、近くの試験官らしき魔術師が紙に何かを書きこむ。どうやらここが、入学試験の会場らしい。

美音

「うわぁっ、びっくりした！　……って、え？　ここどこ？」

菜乃葉

「美音、無事手続き終わったんだね。ここは試験会場みたいだよ」

美音

「な、菜乃葉ちゃん！」

近くに転送されてきた美音に声をかけ、菜乃葉が歩み寄る。そうしている間にも、二人と同じように転送された新入生が、ポツポツと出現する。

そうして10人ほどの新入生が集まった頃、試験官らしき魔術師が近寄って来て、大声を張り上げた。

「いま入ってきた新入生の方々、試験の説明はまだ受けてませんね？　よろしい。では実技試験の説明を始めます！　試験方法は簡単。各々の好きな魔法で射撃標的を撃つだけです。皆さんの魔法は制御力コントロール、威力、発動速度、正確さ等々、あらゆる方面から総合的に評価をします。ですから、皆さんは自分が最高だと思う魔法を、とにかく全力で放って下さい。試験は順番に行いますので、呼ばれるまで待機して下さい。担当者に名前を呼ばれたら、自分の標的に移動して試験開始です。説明は以上！」

そして待つことしばし。目の前では他の新入生が次々と案内されていき、それぞれ思い思いの魔法を放っていく。

「母なる地・圧結の砂・打て、【岩砲ロックガン】」

「青き海・滴る雫・穿つ、【水槍アークラン】」

放たれる魔法は様々で、術者の技量もまちまちだ。見事標的に命中させる者もいれば、明後日の方向に飛ばしてしまう者も、そもそも発動すら覚束ない者もいる。

ただ、と菜乃葉は思う。見た目から受ける印象とは裏腹に、彼らにそれ程の力量差はない。標的に魔法を命中させた者にしても、やっとどうにか届かせた、という程度だ。その証拠に、どの標的も傷ひとつ付いてない。つまり、頑丈な標的を傷付ける程に威力のある魔法は、まだ誰も放てていない。

「透き通る刃・霧氷化の諸刃・斬る、【氷剣ザングース】」

そんな中、一人の子が空中に氷でできたと思われる剣を操り、標的のド真ん中に命中させ、頑丈な標的に深く刺さった。

青色のボーイッシュな髪型で、横髪は赤く、白いアホ毛が生えていて、赤い炎を煮詰めたような瞳と蒼い冷たい正反対の瞳の中性的な男…かな？男の子。

氷魔法の氷剣をあんな的確に操れる人なんて、そうそういない。おじさんが言った有力な新入生が多いとは、強ち間違いではなかった。

「空気の流れ・大地より吹きでる風よ・呼べよ、【大嵐ルウガ】」

そしてあの青年も凄い。

目付きが鋭い若葉色の瞳の下には隈があり、所々跳ねている黒髪は緑がかっていて、赤色のヘッドホンをしている。