テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
阿部の涙は止まらなかった。
ずっと我慢していたのだろう。
別れを切り出した日も、その後もずっと。
「……ごめん」
目黒は思わず苦笑する。
「そればっかり」
阿部は困った様に泣きながら笑う。
昔からそうだった。
自分が傷付く事を厭わず、周りには笑っていてほしいと思う人だった。
「俺ね」
阿部がぽつりと呟く。
「怖かったんだ」
店内は静かだった。
いつの間にかみんなは空気を読んで離れた席に移動している。
翔太が露骨に「これは二人で話した方がいいだろ」と言って、みんなを引き連れて行った。
さすがに気を遣ったらしい。
「何が?」
目黒が聞くと、阿部は俯いた。
「10年後とか」
「うん」
「20年後とか」
「うん」
「蓮が後悔したらどうしようって」
その瞬間、目黒は目を閉じた。
(……あぁ、本当にこの人は)
「俺さ、自分の事ならどうでもいいんだ」
知ってる。
「でも蓮の事は違う」
知ってる。
「蓮には幸せになってほしい」
知ってる。
全部知ってる。
だから苦しい。
「阿部ちゃん」
「…ん?」
「俺の事好き?」
阿部が固まる。
「……え?」
「好き?」
逃がさない。
絶対に逃がさない。
阿部は真っ赤になった。
「この状況でそれを聞くのか」、という顔だった。
「答えて」
阿部は俯きながら答える。
「……好き」
小さな声。
でも確かにしっかり聞こえた。
「今も?」
「……うん」
「別れてからも?」
「うん」
「……じゃあ何で」
目黒の声が震える。
今度は怒りじゃない。
悲しみだ。
「何で俺から離れたの」
阿部が唇を噛む。
しばらくして、やっと本音を零した。
「だって俺と居たら……、居たら…っ…」
涙が落ちる。
「……俺には、普通の幸せをあげられないから……」
目黒は何も言わず、阿部が紡ぐ言葉を受け止めていく。
「結婚も、子供も、世間から祝福される未来も」
阿部の肩が震える。
「俺にはあげられない」
その言葉がどれだけ長い間阿部の中にあったのか、分かってしまった。
「……馬鹿だなぁ」
目黒が呟くと、少しだけ不満そうに阿部が顔を上げる。
「……何それ」
「馬鹿」
「……ひどい」
「ひどくない」
目黒は優しく笑った。
でも、絶対に譲らない顔で。
「阿部ちゃん」
「……」
「俺さ」
一呼吸置いて続ける。
「結婚したいんじゃない」
阿部の瞳が揺れる。
「子供が欲しい訳でもない」
「……」
「世間から祝福されたい訳でもない」
一歩。
また一歩、心の距離を詰めていく。
「俺が欲しいのは」
目黒は真っ直ぐ見つめる。
逃げない、逸らさない。
「阿部ちゃん自身だよ」
阿部の息が詰まる。
「え……」
「阿部ちゃんと居たい」
「……」
「阿部ちゃんと笑いたい」
「……」
「阿部ちゃんと歳を取りたい」
阿部の瞳から涙が溢れる。
もう止まらない。
「他はいらないんだよ」
目黒は静かに言った。
「それだけでいい」
「蓮……」
「だから」
少しだけ声を強める。
「俺の幸せを勝手に決めるな」
阿部は声を抑えて泣いた。
子供みたいに。
ずっと、ずっと、泣いた。
目黒は急かさなかった。
ただ待った。
何年でも待てると思った。
この人なら。
しばらくして、阿部が小さく呟く。
「……ずるい」
「何が」
「……そんな事言われたら、戻りたいって思うじゃん」
その瞬間、目黒は目を見開いた。
そして数秒後、顔を覆った。
「……蓮?」
「…………いや、ちょっと待って……」
「何…?」
「今の反則」
「え?」
「阿部ちゃん」
阿部から出た本音を噛み締め、目黒は言う。
「それ、もう一回言って」
「やだ」
「お願い」
「いや」
「お願いだから」
「絶対いや」
そのやり取りを遠くから見ていた深澤が小さく呟く。
「やっと戻ったな」
向井が優しく微笑む。
「やっとやなぁ」
そっと見守っていた皆どこか安心した顔だった。
#ご本人様には関係ありません
桜瑠璃(3代目)高浮上?
100
#nbdt
コメント
4件
癒されました☺️

ホッ😌 良かった🥹 メンバーも優しいな。
よかったあ…🥹🥹🥹🖤💚