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ℳ
745
(KAIRYU視点)
2人が帰ってから、いろんな気持ちが駆け巡って、情けなくなるほど1人で泣いた。
ランは、いつも真っ直ぐに俺を見て、照れずに言葉にしてくれる。
時々強引なくせに、一番に俺の事を考えてくれて。
そんなランに、最初は戸惑っていたのにどんどん惹かれていく自分がいた。
いつも優しくて、いつも俺を優先してくれる。
そんな安心感が、いつの間にか恋に変わっていた。
リーダーとして、年上として、尊敬していたたっくん。
俺が酔って醜態を晒してしまってから、本当は少し恥ずかしさと気まずさを感じていた。
でも、それをからかいながらも可愛いと思ってくれた大人なたっくんに、少しずつ色気を感じ始めていた。
ランとブレスレットを買ったとき、恥ずかしかったけど嬉しくて。
“ランの好みだ”と指差しあって、「よくわかっとうね」と笑ってくれたとき、胸が高鳴った。
ランの事が、あの時にはもう好きだったと思う。
好き、なんて言えなくて、「かっこええからなんでも似合う」「ランの事はなんでも知ってる」なんて、今考えたら回りくどいアピールをしていた気がする。
ブレスレットをたっくんに取られた事を、知られたくなくて嘘をついた。
ランに、嫌われたくなかった。
「それ以上聞かない」と放られた時、胸が張り裂けそうやった。
このまま、ランが離れていったら。
ずっと不安だった。
ずっと、ランの事ばかり考えて、自分が熱がある事すら気付かなかった。
あの時、たっくんが助けてくれてよかったと思ってるし、感謝してる。
でも、頭の中にはずっとランがいた。
ランが会いに来てくれたとき、心臓がドキドキして、嬉しくて。
やっぱり、ランの事が好きだと思った。
あの時ベランダに出てきたたっくんの顔を見て、悲しそうな顔をしたランに、思わず泣きそうになった。
早く、ランと話したいと思った。
ランに、会いたくて仕方なかった。
看病してくれたのに、たっくんに申し訳ない、そう思いながらも考えていたのはランの事で。
でも、どこまでも大人なたっくんの去っていく背中を見て、胸の中が少しザワついた。
ランに、「会いたかった」と抱きしめられて、感情が溢れ出した。
もう、どこにも行かないで、そう思いながら、精一杯の気持ちでブレスレットを見せた。
たっくんに、酔った勢いで「大好き」と言ってしまってから、たっくんは俺をからかい始めた。
「実は俺の事大好きなんじゃない?」なんて言われて、冗談だったけど、たっくんの事は本当に尊敬してるし、メンバーとしてもちろん愛がある。否定はできなくて、それはそう、なんて言ってしまった。
リスペクトを込めて、褒めちぎった。
メンバーには皆、リスペクトがある。
その中の1人、だった。
でも、からかわれて、年上の余裕みたいなものが見えるうちに、少しだけ、その余裕を崩してみたいと思った。
ラジオで話した事を聞かれて、本当は聞いていたくせに俺に言わせようとしてきた。
…何て言ったら、たっくんは、”くそ、やられた”、って思うんやろう。
ふと、そんなことを思った。
『甘えたいんでしょ?』と言うたっくんに、”そうや”って言ったら、どう返してくるんやろ。
ほんの少しの、悪戯心だった。
『うん、甘えたい。』そう送って、やっぱり恥ずかしくて、飯奢れ、なんて付け加えた。
そのまま本当にご飯に行くことになって、なんだか少しだけ緊張していた自分がいた。
また、からかわれる気がして。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、メイクさんから勘違いされ、バッチリ整えられてしまった髪。早々に気付かれ、「デート」なんてやっぱりからかわれた。
たっくんが言うと、変に意識してしまう、そんな魅力があると思った。
ふいにブレスレットの話をされ、ランへの気持ちがバレるのが恥ずかしくて、流れで、なんて誤魔化した。
ラインの内容にしっかり突っ込まれて、内心戸惑った。
あんなの冗談やろ、と上手く誤魔化して笑ったけど、また何かを見透かされる気がして帰ろうとした。
そしたら、「もうちょっと付き合ってよ」と強引に連れて行かれて。
少しヘマをしたら、全部見抜かれる、そんな危うさがたっくんにはあった。
ゲームに誘ってきて、まんまと負けた。
教えてあげると背後に立たれたときは、仲間なはずなのに、妙に色気があって、緊張してしまった。
そのせいで、ブレスレットの事もあまり考えずに頷いてしまっていた。
勝った方の言うことを聞く、という約束でまたラジオの事を聞かれて、距離が近いことにドギマギして、つい本音を漏らしてしまった。
たっくんが持っていたブレスレット。
それをランの前で出してきたときは、たっくんにはやっぱり危うさがあると思った。
でも、俺が熱で倒れそうだったとき、「そんなフラフラで放っておけない」と一晩中付き添ってくれた。
熱が下がった俺を見て、「心配だったから」と抱きしめた。
その時、少しだけ感じたたっくんの弱さを、可愛いと思った。
お礼で、「1日俺にちょうだい」と言ったのに、ランと俺を見た瞬間にその場から去った。
たっくんが、分からなかった。大人で、余裕があって、隙がない。
そこが、つい気になってしまった。
延期にしたお礼をしたいと言うと、「行きたいところに付き合って」と言ってきた。
たっくんが行きたいとこってどこやねん、そんな大人な店、俺あんまり知らんぞ。なんて呑気なことを考えていたら、行き着いた先は全く頭になかった水族館だった。
正直に言うと、水族館?何考えてるんやって思った。
ますますたっくんが分からなかった。
でも、デートだの本気だの、嘘か本当か分からない言葉で翻弄され、手を繋がれたときに本気で照れてしまった。
俺、照れてもうてるやん、って自覚したら、妙にドキドキし始めて、さらりと言い放つたっくんの言葉ひとつひとつにいちいち反応してしまっていた。
手を離してくれず、「離さないよ」と言われた時、たっくんの事を一瞬恋人のように感じてしまった。
イルカショーを見ていたとき、「カイリュウが楽しそうにしてるのが見たかった」とたっくんが話してくれた。
なんで、?と気になった瞬間水がかかって、びしょ濡れになった。
2人で、あまりのびしょ濡れ具合に笑い合った。
いつになく楽しそうな表情のたっくんの事を、一瞬、愛おしいと思った自分がいた。
髪の毛を拭かれて、自然とたっくんの髪の毛も拭こうと身体が動いていた。
自分の中で、たっくんと距離が縮まったのを感じていた。
カワウソを眺めながら、俺の事を「可愛い」と言ったたっくんに、からかわないでほしい、どうせ冗談なんやから、と内心なぜかモヤモヤして、笑いに変えられずその場から逃げるように歩き出した。
クラゲを見ていると、また至近距離で俺に迫ってきた。
それ以上はひっかからんわ、遊んでるだけなんやろ、そう思いながら、余裕を見せようとした。
でも、ふいに、恋人のように思ってしまった事を突かれ、動揺してしまった。
「変な意味に取るなや?」
自分にも言い聞かせていた。
「取るでしょ、」
そう返されて、目が合った。
さっきまでからかっていたくせに、本気の目に見えて、目が離せなかった。
あの瞬間、たっくんに惹かれてしまった自分がいた。
ランと、たっくんで、揺れてしまいそうになった。
でも、ランから明日は俺にちょうだいと言われて、ランに会って、抱きしめられて、「会いたかった」と言われたら、やっぱり好きな気持ちが溢れて。
ベッドに誘われて、腕をあんな風にされて、目を見られた時、……キスしてほしい、と思った。
朝までここで寝て、と言われて、心臓がドキドキして、うん、と答えた。
ブレスレットを外されて、「俺だけ」と言われた時、たっくんに外された事をふと思い出した。
ランが、ずっとその事を気にしていると感じて、大丈夫やで、と応えるかのようにその言葉に頷いた。
ランの事が好きや、と、そう思いながら眠りについた。
朝、目覚めて、ランが愛おしくて、珍しく素直に甘えた。
本当は、少し不安だった。
その日の仕事は、たっくんと2人やったから。
その不安を消したくて、無意識に甘えていた。
ランに、そろそろ起きないと、と言われて、行きたくないと思った。
たっくんの所へ行ったら、俺は、もしかしたら揺らいでしまうんちゃうか、正直そんな事を考えていた。
「起きたない」、そう素直に言ってみた。
俺にとっては、精一杯のアピールだった。
ランに、今、”好きだ”と言われたら。
言ってほしい。
俺を、揺らがせないで。
繋ぎ止めてほしかった。
でも、ランから出たのは「可愛い」だった。
普段から言う、ランらしい言葉。
……でも、あの時は、欲しくなかった。
思わず少し拗ねて、ベッドを離れた。
スマホを見ると、たっくんからのラインが入っていた。
何の変哲もないライン。なのに、変に緊張して、返事を打とうとする手が画面の上でウロウロしていた。
そこに、ランが勝手に文字を打つ。
“変なことすんなよ。”
一丁前に、嫉妬だけはするんやな。
俺に言うこと、あるんとちゃうん?
そう思って、少しだけモヤモヤした。
たっくんに会うと、やっぱり緊張が走った。
ラインの事もあって、余計にそうなる。
少し機嫌が悪い気がして、近づかれてもそっとしておくしかなかった。
たっくんに会うと、言葉のひとつひとつが危なっかしくて、罠にかかりそうになる。
ここに溺れたら、俺は多分そのまま落とされる。
そう、気を張っていたのに。
ふいに、首にキスをされて、身体が反応してしまった。
たっくんに触れられて、動揺した。
必死に保っていたのに、試すかのように首にキスなんてしてきて、ランもたっくんもはっきり好きだと言わないくせに、それっぽい事だけして惑わせて、俺をどうしたいねん、遊ぶなや。
揺さぶっといて、ごめんってなんやねん、もう遅いわ。
思惑通りや。ランの事が好きなのに、いざたっくんに会うとやっぱり揺れてしまう。
その気持ちに気付いて、酷く混乱した。
2人に惹かれていると自覚してから、しばらくスケジュールの都合で顔を合わせることがなかった。
数日経って、仕事終わりにランから電話がかかってきた。
『着信:ラン』の 文字を見て、胸が高鳴った。
出ると、寂しくて電話したと言われた。
可愛いと思ったし、キュンとした。
少し浮かれながらも、撮影の事を聞かれセイトの事を話すと、「妬いたかも」とランが言って、ごめん嘘だと訂正した。
久しぶりに感じたランからの嫉妬に、一丁前に嫉妬だけしやがって、なんて言ってた俺を殴りたいくらいときめいてしまった。
やっぱり、ランの事が好きだ。
ランに、急に会いたくなって、会いたいと漏らした。
俺も会いたいと甘い声で言うランにたまらなくなった。
ランが好き、その気持ちでいっぱいになった。
家に行っていい?と少し神妙に聞くその声に、もしかして、と期待してしまった。
今日、もし、”好きだ”と言ってくれたら。
そんな気持ちを隠しながら、うん、ええよ、と平静を装って返事をした。
ドキドキしながら家で待っていた。
着信音が鳴って、ランだと思いスマホを見たら、そこにはたっくんの名前が表示されていた。
たっくんとは、俺が当たり散らした日以来会っていなかった。
その後の仕事はそつ無くこなしたが、別れ際は挨拶だけで、特にそこへのやりとりはせずじまいだった。
少し悩みながらも、電話に出た。
「ねぇ、今から会いたい。」
急にそんな事を言われて、戸惑った。
また、たっくんに惑わされる。
家の前にいると言うたっくんの言葉にびっくりして、すぐさまベランダに出ると車の前で電話しているたっくんが遠くに見えた。
「話したい、ちょっとだけでいいから。」
もうすぐ、ランが来る。
そうしたら、…今日、もしかしたら。
ずるいやろ。なんで今やねん 。
なんで、今来るねん……
そう思っていたら、カイリュウ、と切羽詰まったような声で名前を呼ばれて、その余裕が崩れた声に、負けてしまった。
たっくんが家に来て、緊張が走った。
話って、なんやねん。
そう言うと、たっくんが、これ、と、飾っていたカワウソのぬいぐるみを指さした。
前にランからもらったフィギュアと一緒に、並べていた、カワウソのぬいぐるみ。
俺が2人で、揺れている証拠だった。
焦ってぬいぐるみを取り、貰ったから、と誤魔化した。
その瞬間、背中が壁に打ち付けられた。
たっくんに腕を取られ、キスをされた。
拒否しなきゃ、と肩を持つも、
たっくんの熱に絆された。
それに、本当は。
心の奥底では、あの日、水槽の前で、こうすることを想像してしまっていた。
そのしまい込んでいた気持ちが、たっくんが舌を絡ませてくる度にふつふつと沸いてきて、抗えずに背中に手を回してしまった。
たっくんの事を、求めてしまった。
唇が離れて、たっくんが「好き」と告白をしてきた。
俺がずっと欲しかった言葉。
なんで、今言うねん、
なんで…
たっくんに惹かれている気持ちがどんどん溢れていく。
困らせてごめんね、とたっくんが出ていった。
気持ちが抱えきれず、涙になって流れた。
ランの顔が浮かんだ。
他の男とキスした奴なんて、ランは冷めるだろう。
嫌だ。ラン、いかないで。
でも、最後のわがままと言ったたっくんの言葉も、離せなかった。
俺、ほんまに、最低や、
ランから電話が来て、ランにどういう顔をして会えばいいかわからずに電話にしばらく出れなかった。
なんとか落ち着いて出ようと覚悟を決め電話に出るも、ランの声を聞いたら涙が止まらなくて、ごめんという言葉をただただ繰り返した。
ランが来て、すぐに抱きしめてくれた。
その安心感で、余計に罪悪感と涙が溢れ出した。
嫌われたくない、と願うずるい俺は、ただ謝ることしかできなかった。
ランは何かを察したように、何も聞かずに、「カイリュウが幸せになることだけを考えて」なんてどこまでも優しすぎる言葉だけを残して帰っていった。
俺が、ひとりで考えなきゃと、引き止めることはできなかった。
熱を全て俺にぶつけてきて、
告白してくれたたっくんと、
自分を抑えてまで俺を包み込んで、
告白してこなかったラン。
俺が、1番欲しいのは、
床に転がったカワウソのぬいぐるみを拾って、腕にはめたブレスレットと一緒に抱きしめた。
コメント
14件
みちさんのお話を見れば見るほど、カイリュウへの愛が深まります。解像度高すぎて、助かってます🥺大好きです🫶
うううう最高ですぅぅぅぅ😭😭😭😭