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第50話 「新主将」
2021年9月。
夏の甲子園が終わった。
柳城高校は全国準優勝。
胸を張れる結果だった。
しかし。
優勝旗は手に入らなかった。
グラウンドには、まだ悔しさが残っていた。
三年生が引退する日。
主将・柴田たちは最後のミーティングを終え、後輩たちの前に立った。
「甲子園はすごかったぞ」
誰かが笑う。
部員たちも笑う。
だが柴田は続けた。
「でもな」
空気が変わる。
「準優勝は一番悔しい」
誰も言葉を返せなかった。
優勝を目の前で逃した者にしか分からない悔しさがあった。
柴田は塁と史陽を見る。
「お前たちなら行ける」
「でも、俺たちを追いかけるな」
どこか聞き覚えのある言葉だった。
「お前たちの柳城を作れ」
それが最後の主将の言葉だった。
数日後。
福間監督は全部員を集める。
新チーム発足の日。
新主将発表。
部員たちの緊張が高まる。
福間監督が名前を呼ぶ。
「佐伯」
二年生の内野手だった。
堅実な守備。
冷静な判断力。
そして誰より練習する男だった。
佐伯は前へ出る。
少し緊張している。
「甲子園準優勝は過去です」
選手たちが顔を上げる。
「俺たちはまだ何も勝ち取っていません」
力強い言葉だった。
「目指すのは日本一です」
拍手が起こる。
新しい柳城が始まった。
練習後。
塁と史陽はグラウンド整備をしていた。
「主将って大変そうやな」
塁が言う。
史陽は笑う。
「お前は絶対向いてない」
「お前もやろ」
二人のやり取りに、舞が吹き出した。
「確かに」
三人で笑う。
甲子園準優勝の余韻は、少しずつ消えていった。
その頃。
東京。
早川実業大学。
小早川啓介は大学一年生として新しい生活を送っていた。
高校野球のスター。
そう呼ばれることもある。
だが本人は変わらない。
授業を受ける。
練習する。
寮へ帰る。
その繰り返しだった。
ある日。
スポーツ記者の氏原からメッセージが届く。
『柳城、準優勝だったな』
啓介は少しだけ考えた。
そして短く返信する。
『よくやったと思います』
それだけだった。
グラウンドの隅には、まだ一年生の啓介の居場所はない。
今は大学野球に必死だった。
柳城も。
啓介も。
それぞれの場所で前へ進んでいる。
秋の大会まで、あとわずか。
福間監督は夕暮れのグラウンドを見渡した。
新主将。
新チーム。
そして成長を続ける双子。
柳城高校の新たな挑戦が始まる。
第50話 終
#高校生
コメント
1件
第50話読み終わった! 新主将・佐伯の「甲子園準優勝は過去」「俺たちはまだ何も勝ち取っていません」って言葉、めちゃくちゃカッコよかった🔥 柴田主将の「お前たちの柳城を作れ」ってバトンも熱いな… 塁と史陽の軽口叩き合ってる感じも相変わらずで安心したわw 小早川先輩もそれぞれの場所で必死なんだな〜 秋の大会、めっちゃ楽しみ!