ナガチカは優しい笑顔を浮かべてこの集落の成り立ちまで遡って説明を始める。
一通りナガチカの話を聞いていたナッキは感心した様に感想を口にした。
「へーじゃあここに暮らしている人間や魔獣、悪魔たちは皆、世界を守る為に集まった、そうなんだねー」
サニーも小さな体を水面(みなも)から飛び出させて感動を言葉にする。
「世界中から聖女と聖戦士が集まって、『抵抗者(レジスタンス)』を作り上げたなんて格好良いよね? 種族が色々なんて所も正義の集団って感じで最高だよ!」
二匹とも大絶賛だったが、当のナガチカは自嘲気味な笑いを浮かべながら答える。
「彼らを集めたのは私じゃなくて義理の父母、真なる聖女と聖魔騎士の二人だったんだよ、普通の人間も魔獣も、強力な悪魔、魔王や魔神ですらその人間的魅力で惹きつけたんだよ…… 二人が旅立った後は、二人の叔母、リョウコさんとリエさんが個性豊かなメンバーを纏め上げていたんだけどね…… お二人が相次いで倒れた後、リョウコさんの『オニギリ友の会』の面々は様々な研究結果を世に広げるべきだ、リエさんの『六道(りくどう)の守護者』を構成していた聖女や聖戦士、大型の魔獣達はもっと積極的に戦いをすべきだ、そう言って去って行ってしまったんだよ…… 私がリーダーとして優れていればこんな風に瓦解させる事も無かったんだろう、そう思うと忸怩(じくじ)たる思いなんだ……」
そう言って寂しそうに視線を足元に落としたナガチカの肩に大きな掌をそっと重ねて声を掛けたのは、彼の右に座っていた巨漢であった。
「お前のせいではない、自分を責めるなナガチカ」
左からも同様の言葉だ。
「そうよナガチカ、『抵抗者(レジスタンス)』だけじゃない、ドラゴンも魔獣も殆(ほとん)どがアナタを信じて残っているじゃないの」
ナガチカは左右の巨体を見上げて言う。
「ありがとう、ジロー君ユイちゃん」
この言葉を聞いたサニーは、ナッキを振り返って言う。
「ねえナッキ、この大きいニンゲンの名前もジローとユイなんだね? 良く有る名前なのかな? ね!」
ナッキも頷きを返しながら言う。
「本当だね、ドラゴが昔一緒に戦ったって言っていたジロー様ユイ様と同じだねー」
「へ? ドラゴ、ってトンボのドラゴ? 何、ナッキ殿達ってドラゴ知ってるのかい?」
ナガチカが素っ頓狂に聞き、左右からジロー君とユイちゃんも驚いた顔で覗き込んでいる。
ナッキは三人の視線を受けながらコクコクと頷いてナガチカに答える。
「う、うん、トンボのドラゴだったら僕の子分になったけどぉー、○ンコと引き換えにね? 後はゴイサギのヘロンとか、ザリガニのランプ君とか…… 大きなカメのキトラ爺さん、長老さんとかねぇー」
「ドラゴだけじゃなくヘロン、ナイトヘロンもか?」
「キトラ…… アーティファクトの悪魔…… 大物じゃないの……」
「ランプ? 誰だ? 誰か知っているかい?」
ジローとユイ、ナガチカはヘロンとキトラの事も良く覚えていたようだ。
若しかしたら、そんな淡い期待をこめてランプの名前も出してみたナッキであったが、三人とも聞き覚えが無かったようで首を傾げている。
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