薄暗い中に一際光を集めるステージ
MVの撮影で来た現場は大きなホールだった
メンバーより一足先にステージへ上がり
全体を見回す
あ…ピアノ,,
懐かし…
小さい頃ピアノの発表会で失敗して泣いてたっけ笑
それから…仁人、お前と出会って
お前の隣でピアノを弾くようになって
…
回想にふけながら指でなぞるピアノは
ホコリっぽかった。
屋根を開け、突上棒を立てる
鍵盤蓋を開け、赤いキーカバーを譜面台の横に置いた
そして椅子を引き、静かに腰をかける
譜面台からふと横に視線を流すと
仁人と視線が合う
優しそうに愛おしそうに…そしてどこか悲しそうに歌う顔と歌声が大好きで
その曲ばかり弾いた
楽譜なんてものはなくても、
俺の指が音を覚え
俺の耳がお前の歌を覚えてる
静かに鍵盤に指を置き
その曲を弾いた
隣で仁人が歌っているのを想像して
いつも仁人は俺を天才だとか言うけど
気づいてる?
お前も天才だってこと
歌詞に乗せる思いの込め方
綺麗に伸びるトーン
そんでもって自分なりにアレンジする力
元々お前の歌なんじゃないかと錯覚するほど
その歌を,,自分のものにしてる
俺は知ってるよ
感動する曲を歌ってる時、
お前が静かに泣いてんの
お前は、努力だと言い張るけど
それ以前に秘められてる才能を持ってんだよ
仁人、
あなたはまだ、歌っていますか
歌う理由を…持っていますか,,,