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『メインディッシュに淡く溶け出す花の香は』
「これは、愛なのだろうか」

薄暗い部屋の中、淡く灯った蝋燭の火が暖かかった。部屋の天井が窓になっていて、満天の星が煌めいていた。

そんな中、俺はなんとなく纏わりついている切なさを紛らわすように御前―

一文字則宗に意味も無く問いをぶつけた。

「…それは、分からない」

御前は複雑そうで、どこか悲しそうな表情で静かに問いに答えた。


そうだろう。

こんな理不尽な問い、誰が答えられると言うんだ。

俺は自分自身にとても腹が立った。御前にぶつけた問いはただの八つ当たりにしか過ぎない。そんな理不尽な問いに答えてくれる御前がとても優しいと感じた。


御前が優しいから、俺は調子に乗ったんだろう。

御前に八つ当たりをして、何が変わるというのか。


「ごめんなさい」


言葉を伝えるたびに重い感情が俺を締め付けた。


「こんな問い、理不尽だっただろう」


御前の目に俺はどんなに醜く映っているのだろうか。


「…お前さんが謝ることではないだろう」


嗚呼、その言ノ葉がどんなに美しく、優しいものか。


分かっていながら、俺は醜さを見せ続けている。こんなはずじゃないのに。


違う。きっと、思い違いだろう。


俺の。


杞憂であってくれ。


どうして、此処にいるんだろう。


俺は、此処にいてはいけない。


彼岸に逝ってしまった、美しい刀剣たちに別れも告げられないままでいた。

こんな、守られるだけの俺は此処にいてはいけない。


どうして、俺は助けられなかった。


どうして、俺は力が無かった。


どうして、俺は…


「俺は、愛していた。愛してしまったんだよ」


「ただの武器を」


だが、愛さなかったら、君たちは居なかっただろうね。


「……お前さん」

俺を慰めるような声だ。何か言いたげだったが、言うのをやめてしまった。


「許しておくれ」


「愚かな、この臆病者を」


「君たちを守れなかった。最低の主を」


冷たい声だ。

俺の声は。

まるで、硝子の様だ。


砕け散った、想いを。


愛していた、この想いを。


諸刃の剣と成りしこの想いを。


「…さぁ、メインディッシュだ」

則宗が物悲しそうに言う。


「…嗚呼、甘くて、ところどころ苦くて、星のように輝く、この感情は……遠くて、でも…近い。この美しい感情は…」


「愛、だそうだ」


「…愛、か俺が、何よりも大切にしていた…ものだ」


視界がふいに遠くなっていく。

淡く、ぼやけていく。

しだいに、何も見えなくなっていった。まるで、深海に沈んだみたいだ。


ただ、花の香だけが残っている。


懐かしい。この香り。


そうだ。


「喰ってしまおう」


「この花の香も、何もかも、全て」


「そうすれば、何も残さず逝ける」




「どうだ?」


「此処も駄目だ」


「全滅だよ…」


「特にこいつは…愛されていたんだろうな」


「審神者を庇って折れた一文字則宗が、審神者の手の中で眠りについている」


「審神者の様子は」


「これは、おそらく起きないだろう」


「少し、香るな」


「花の香…か」


「いずれ消えるだろうさ」


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コメント

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色々と補足説明 審神者は情が深く、刀剣たちに愛情を注いでいたので刀剣たちも審神者を愛していました。そのため、遡行軍に襲われそうになった審神者をとっさに庇ってその結果遡行軍をさばききれなくなって折れました。ほとんどの刀剣たちが数に圧倒され、この本丸は潰れました。ちなみに最後に話しているのは調査しに来た政府の者です。 ちっちゃい御前を食べようとして思いついたはなしです。アレェ…?目から冷却水が…

ユーザー

感動で涙出た... 家沈みました!

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