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あらかたの荷造りを終え、椅子に腰かけて窓の外を見る。今日もいい天気だ。フィル様は、そろそろ国境に着いた頃だろうか。 国境で見送るためについて行こうと思っていたが、第二王子が城まで迎えに来た。人のことを言えないが、過保護すぎるのではないかと呆れた。しかし第二王子の顔を見たフィル様が、とても喜んでいたから、俺は何も言えなかった。いらぬとこを言ってフィル様の顔を曇らせたくない。それにこれ以上、優しいフィル様を困らせてはいけない。
十日前、俺は奥庭でフィル様に想いを告げた。そもそも俺は、今までも隠そうとはしていなかったしフィル様も|既《すで》に俺の気持ちを知っていた。だが言葉にして伝えたくなったのだ。
想いを告げ抱きしめた俺に、フィル様は「ありがとう」と笑って抱きしめ返してくれた。だがすぐに身体を離して「でも」と真剣な顔で言った。
「僕はリアムを愛してる。ラズールの気持ちにこたえることは、この先も無いよ」
「はい、わかっています」
「うん。でも伝えてくれてありがとう。そう想ってくれることは、本当に嬉しい」
「俺も…ありがとうございます。俺を傷つけないようにと|有耶無耶《うやむや》にせず、はっきりと仰ってくださって嬉しいです」
「ふふっ、断わられてるのに嬉しいって変なの」
「あなたに、俺の全てを知ってもらえるだけで嬉しいのですよ」
「ラズール…。僕の傍にいてくれて、心から感謝してる」
「はい」
ふと、フィル様の白い頬に汗が流れ落ちた。顔色もいつもよりも白いことに気づく。
俺は慌ててフィル様に寄り添い身体を支えた。
「フィル様、気分が悪いのでは?長距離の移動でお疲れなのに、連れ回してしまい申し訳ありません」
「ううん、ラズールのせいじゃないよ…。ごめんね…急にしんどくなっちゃった。ラズールの誕生日を祝うために来たのに、世話をかけちゃったね…」
そっと握ったフィル様の手が冷たい。
俺は自分に腹が立った。しばらく離れていたとはいえ、フィル様の体調の変化に気づかないとは!それでよく、愛しているなどと言えたものだ!
俺は「失礼します」と言って、フィル様を抱き上げた。そして足早に城内に戻り、部屋へと急いだ。