「さて…ようやく来れたわね。」
あたし達は長い時間をかけてここ、地獄に来た。
「ほんと。時間かかりすぎですよぉ。」
リタはクタクタになって言った。
「こんなんでくたびれてたらダメよ。今からアイツに会いに行くんだから。」
「うへぇぇ〜…」
(…とは言ったものの、このままは可哀想だし…)
「じゃあ、ちょっと待ってて。」
「じゃあってなんですか?」
あたしはリタの言葉を無視して言う。
「あと、何があってもここから動かないで。わかった?」
「りょ〜かいで〜す!」
明るい声だった。
水を買いに行くのは良いものの、ここから近いところに自動販売機はない。
(少し遠いけど、行かなきゃね。)
謎の責任感を感じて、遠くの場所へ行った。
そのとき。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫び声が聞こえた。振り返ると─────
「…怨霊!?」
そこには巨大な怨霊がいた。
「アイさん、遅いですねぇ〜…」
そう呟いた。
アイさんはぼやかして言っていたけど、僕には分かる。
あの人のことだ、僕のために水を買いに行ったんだろう。
正直、もう大丈夫だ。
…今の僕を作った、そしてお姉様を殺した。
その博士はどこにいるのか。誰なのか。
まだ情報が掴めていない。
やはりヤツと協力関係にあった、アイのお姉さん─────
ウアさんと話さなければいけないか。
でも、博士と一緒で、ウアさんの尻尾も掴めない。
今の僕に出来ることはあるのだろうか。
このままアイさんといていいのだろうか。
いつも暇がある時こんなことを考えてしまう。
考えても無駄だと知りながら。
僕はなんで─────
「ひっぐ、ぐすっ」
近くで声がした。
「…泣いてる?」
小さい声で言った。
(動くなって言われたけど…)
近くに、泣いている子がいる。
止まってはいけない。
そんなことを考えている時にはもう、その子の隣にいた。
「大丈夫?どうしたの?」
優しく聞いた。
「ぐす…あそこに…っ 大きい変なのがきて…っ ピンクのツインテールのお姉ちゃんが…っ」
「戦ってたんだけど…っ そのお姉ちゃんが…っ」
ピンクのツインテール。女性。
彼女のその次に発された声を聞かないように耳を塞いでしまった。
「っ… お姉ちゃん、そのお姉ちゃんに覚えがあるの。絶対に大丈夫だから、安心して待っててね。 」
僕は全力で走った。
彼女の血の跡をたどって。
そこには…
「アイ…さん…?」
血に塗れたアイさんがいた。