テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「あいにく、スイートルーム、またエグゼクティブも全てご予約とご利用で埋まっております」
彼は、スイートルームでなくても、という次の私の言葉を封じた。
それだけでなく、ドアのところに立っていたスタッフが私の横に立って圧を掛ける。
【アンタの来るところじゃない】
と今にも聞こえてきそうだ。
「「またの機会に、ご利用お待ちしております」」
カウンターの向こうで、お姉さんと男性スタッフが、心にもないセリフを揃って言う。
私は素直にそのままエントランスの外に出ると、徒歩5分のところにあるホテルへと入る。
東京だもの、ホテルはたくさんあるのだ。
でも……全く同じ、と言っても過言ではない対応をされ、トボトボとエントランスを歩く。
――この作戦は札束を見せながら突撃しないと無理なのか
最期は快適に暮らしたいという願望はある。
だから、三度目の正直となるよう願いつつ、次のホテルへ行こうとした時、腰を半分落としたような恰好で見るからに困っているおばあさんが目に入った。
「あの……どうかされましたか?」
「ぇ、あ、お財布をね……」
ほんの一瞬私を見ただけで、またバッグを探り、大きなため息をついたおばあさんに
「お財布、忘れたの?」
と聞いてみた。
「すぐ裏にあるお寺さんへ納めるものは持っていたんだけどねぇ……ここならタクシーがあるから、ここから帰ろうと思って。電話も、財布も、困ったわ……」
「電話も財布も忘れて来た?落とした?」
「……それもよくわからないけど、お寺さんには納めたわ、ちゃんと」
おばあさんは、お寺に強い思いがあって他の事がいまひとつあやふやだ。
私はリュックを前にして、銀行でおろした100万円をそのままおばあさんに渡しながら、タクシーのドアをノックして開けてもらった。
「これでどこまででも帰れるからね」
ポカンとしているおばあさんをそのままに、私はタクシーの進行方向と逆に歩き始める。
すると、すぐに男の声で引きとめられた。
「おい。今、札束を渡したのか?」
コメント
2件
事情を聞くとかもないんだ😞ギャー札束なんて危険すぎる😱ヤバい男?良い人であって欲しい〜🙏
はぁ…どのホテルも… でも菊ちゃん逆に札束見せつけると、おかしいと通報されかねないかも。 っていうか!菊ちゃん!100万?公衆の面前で!ここは大都会、ヤバいよ😱 ほら…変なのが声かけてきた…