テラーノベル
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「大丈夫?」
友達の美咲が聞いてきた。
「うん、大丈夫だよ」
私はすぐに答えた。
でも本当は、大丈夫じゃない。
テストの点はボロボロ。
部活ではミスばかり。
家では親とケンカした。
全部うまくいかない。
でも。
「大丈夫」
って言うのが、もう癖になっていた。
心配かけたくないから。
迷惑かけたくないから。
だから私は、いつも嘘をつく。
大丈夫じゃないのに。
「大丈夫」って。
その日の放課後。
教室に残って、ぼーっとしていると
担任の先生が入ってきた。
「まだ帰ってなかったのか」
「はい」
「最近どうだ?」
先生は何気なく聞いた。
「学校、楽しいか?」
私はいつものように笑った。
「はい、大丈夫です」
その瞬間。
先生は少しだけ黙った。
そして、ゆっくり言った。
「…それ、嘘だろ」
ドキッとした。
「え?」
「先生、長くやってるからな」
先生は椅子に座る。
「大丈夫な顔してない」
胸が、ぎゅっとなる。
でも私は、また笑う。
「本当に大丈夫ですよ」
すると先生は小さくため息をついた。
「なあ」
「人ってな、弱いんだ」
「だから助け合って生きてる」
私は黙って聞いていた。
「もしみんなが『大丈夫』って嘘ついたら」
「誰も誰も助けられない」
その言葉が、胸に刺さる。
先生は続けた。
「つらいときは、つらいって言え」
「助けてって言え」
「それは弱さじゃない」
「人間だからだ」
私は、気づいたら泣いていた。
「……私」
声が震える。
「全然、大丈夫じゃないです」
先生は、静かにうなずいた。
「そうか」
それだけだった。
でも。
その一言だけで、少しだけ心が軽くなった。
私は初めて思った。
本当のことを言うのって、
怖いけど。
きっと、大切なんだ。
だから私は__
もう、自分に嘘をつかない。
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