窓の外の道路の向かいには、八百屋の看板が光っていた。その下に編みかごを腕にした女性がいて、さっきから鼻の下に髭のある店主と立ち話をしている。店主がピーマンを差し出すと、女性は首を振った。レモン。首を振る。茄子。バスが黒煙を立ててやってきて、視野を遮り止まった。路駐車が行く手を邪魔しているらしい。ウインカーを出してレーンチェンジを待っている。
ヨーグルトが底をついた頃、バスはゆっくり動き出した。ギョルメの前には女性の姿はすでになかった。おそらく何も買わなかったことだろう。席を立つと、椅子が後ろの人にぶつかった。俺はすいませんと言おうとしたが、それより一瞬早く「この小僧」という、低く小さな呟きが聞こえてきて思いとどまった。
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