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もう、なんなの? この狼達……
邪悪、そうジャアック! それ以外の言葉では表現できない程邪悪なんだけど……
しかし、私、観察者の嫌悪感を無視するようにおばあちゃん、コユキの嬉しそうな声が場に響き渡ったのである。
「へぇ~! 殺さなかったのねん! そりゃ良かったわよぉ! アンタ等(ら)分別勢だったんだねぇ、ほっ、良かった良かった、んじゃあ首だけとは言え生きてんのね、温羅(うら)君って!」
茶色一色、吹木(フイギ)悠亜(ユア)さん謹製のオリジナル、秋田犬っぽいタイリクオオカミに身をやつしたオルトロスのチロが答えたのであった。
「ですね、その温羅が死に掛けた時のカルラのヤツが最高だったんですよぉ! 鳥に変身できるコイツは本当の悪じゃない! 許してやって欲しい! って柄にもなく主張しやがりましてねぇ~、んでモモタロさんが受け入れて温羅(うら)は頭だけになったんですけど見逃して貰えましてね、弟の王丹(おに)に抱かれて帰る前にね、クソ真面目な声音で言ったんですよ、『貴女の様な美しい心を我ら兄弟は知らずに今生(こんじょう)を生きて参りました、カルラ様…… これより我らは貴女の眷属(けんぞく)です、どうぞこの忠誠をお受けくださいませ』ってね、んでもね、そん時、アイツら温羅と王丹の兄弟が頭を下げた方向が、カルラの反対でぇ、ククク、カルラのヤツはお尻を突き出されたわけですよぉ! ほら? ほらっ! 見えないからっ、プププ! 見えないから適当にぃ、プッ、プハハっ! 最っ高っじゃないですかぁ? 馬鹿でしょ? 馬鹿すぎるでしょぉぅ? プフフフフぅ!」
うん、確かにそうかも知れないけど、そろそろそうゆうの止めよっか、何か聞いてるっぽいし、主に羽が……
パサパサ小刻みに動いてんじゃんっ! 怒っているんじゃないのぉ? ってか絶対怒ってるよね? だってさっきから、コユキの背中が氷河期みたいにカッチコッチになってるんだからさ……
嘲笑とかやめようよ、ってかアンタ等鈍いの?
この怒りに気が付かないとか無いでしょ?
これがコユキの偽らざる気持であった、さて、どうするの? おばあちゃん!
「ば、馬鹿ではないと思うわよ! 立派だと思うわぁ、アタシはねっ! ねえ、ちゃんと聞きなさいよ? アタシだけは立派な行いだと思うわ! 立派よ! ねえ、敵と味方の見極めは大事よぉ! アタシはビリビリやられたお猿さんが大好きだし、鳥類の守護者として自分の考えを貫こうとしたカルラちゃんとか大好きだし、尊敬してるし、なに? なんだろう? はっ! 嘲笑う奴らこそ馬鹿なのよぉ! こんな馬鹿犬どもとアタシや善悪を一緒にしないでねぇ、ね、ねっ、聞いてる? 恐い人ぉ?」
必死に自分と善悪、二人だけの安全を願ったコユキの祈りが届いたのだろうか……
答えは分からないままであったが、コユキの背に有った悪寒はすっきりと消え去っていたのである。
心中でコユキは一人ガッツポーズをするのであった。
――――良しっ! 抜けたっ! 何とかアタシと善悪だけは『殺すっ!』リストから外れたわね、ふぅぅ~、にしてもおばあちゃんはじめこの馬鹿どもっていったい何なの? 良し、いっぺん聞いてみるか!
「ね、ねぇアンタ等ってさぁ! そんなに嘲って(あざけって)たらお猿やお鳥に怒られるとか、恨まれるとか考え無いわけぇ? 恐く無いのん?」
チロが堂々とした風情で答える。
「ええっ? んだってあいつ等アーティファクトですよぉ? 何を怖がる必要があるんですかぁ? 確かに昔のあいつ等は恐ろしかった、それは認めますよぉ? 体力バカ世界一と完璧な暗殺者でしたからねぇ、んでも、魔核が無かったら復活不能っ! んな消え行く思い出の中だけに生きている儚い馬鹿に気を遣うんですかぁ? 全くの無駄ですよねぇ? ね! ね! 笑い飛ばしてナンボなんじゃないですかぁ! コユキ様ぁ?」
そう言う事か……
コユキはツナギのポッケに手を入れると幾つかのほぼ真っ白になった魔核を掌(てのひら)にのせて呟くのであった。
「……ごめんね、今日帰りに千里の天神様に寄って来てね…… ライコー様達に加えて様々な御伽噺(おとぎばなし)のアーティファクトの主人公たちの魔核、ついでにモモタロさん、お猿、雉、ついでのついでだけど蟹さんと神レベルの漫画家さんの魔核もゲットして来ちゃったんだけど…… ゴメンね…… あらら、何故だか薄っすらとしていた魔核の色目が鮮やかに? ふむ……?」
「「「「「ヒっ、ヒィィィィっ!」」」」」
震えあがる広縁のメンバーとは裏腹に、ご本尊の左に置かれたアーティファクトが大きく怪しく残虐に光り輝くのであった。
因果応報、一年後が楽しみである、そんなちょっとS属性に振られた私、観察者であった、ふふふふ。