凍えるような寒さに息をするのを躊躇った私は街の小さな公園のベンチで彼女の手を握りこう言った。「今日でハルカとは離れ離れになってしまうけどいつまでもハルカのことを想っているから、だから私のことは忘れて幸せになってね」私は泣いている目を擦って彼女を見つめた。「このままカナちゃんと離れてしまうのはしょうがないことなのかもしれないけど忘れてしまうなんて絶対に無理だよ。ハルカにとってたった一人の家族なんだよ」私は消えかけていくハルカの身体を眺め何もできない喪失感ともどかしさを押し殺すのに必死になっていた。最初から全て分かっていたのになんで好きになってしまったのだろう、どうして大切にしたいと思ってしまったのだろう、私が男ならよかったのにもっと普通の出会い方をしていたらよかったのにそう後悔するばかりで時は進んでいく。「ハルカになんて会いたくなかったよ。もうここでバイバイしよう。」これでいいんだ、こうやって突き放すのが正解なんだって自分に言い聞かせて私は握っていた手を解きベンチから腰を上げ公園から出ようと歩いていったすると何かに包まれるような感覚がした。後ろを振り向くとそこにはもうほとんど消えかけているハルカの姿があった。「ハルカねカナちゃんの考えてることわかるよ。本当はカナちゃんすっごく辛いのにハルカのために嘘ついてくれてやっぱり最後まで素敵なカナちゃんだね、ありがとう。」そのままハルカは冷たい二月の風に包まれて消えた。私はハルカと過ごした日々をここに書き記そうと思う。もしもハルカがまた時を超えて戻ってきてくれた時に、また私のことを思い出して欲しいから。
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