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ショッピングモールの中央広場に、期間限定の巨大なお化け屋敷が設置されていた。暗幕で覆われた入り口の前には「心臓の弱い方はご遠慮ください」の注意書き。

休日とあって行列ができ、時折中からは悲鳴が響き渡っている。



「……ほんとに入るの?」


緊張した様子でみことが不安げにすちを見上げる。


「怖いけど、せっかくだし……大丈夫、俺がついてる」


すちは少し強がるように笑い、みことの手をしっかりと握った。


薄暗い通路に足を踏み入れると、すぐに空気がひんやりと冷たくなる。壁には赤黒い染みや古びた絵画が並び、風が吹き抜けるたびにカーテンが揺れ、何かが潜んでいる気配を感じさせる。



「ひっ……!」


どこからともなく突然、鎖の引きずる音と共に骸骨の人形が飛び出す。みことは飛び上がって叫び声をあげ、すちの腕にすがりついた。


「大丈夫、大丈夫……」


すちは肩をすくめながらも必死に笑顔を作る。だが彼自身も心臓が早鐘のように打っていた。


その後も、暗闇から白い手が伸びてきたり、床板の下からうめき声が聞こえてきたりと、仕掛けは次々と襲ってくる。


みことは「やだっ!」「来ないでっ!」と半泣きで叫び、すちのシャツをぎゅっと握りしめる。すちはそんなみことの反応が可愛くて仕方がないのに、怖さも倍増するという複雑な心境だった。



そして、出口が近づいたその時。

「うあああああっ!!!」

真っ暗闇の奥から、チェーンソーを構えたゾンビが轟音を響かせながら走ってくる。


「――っ、うわぁぁぁ!!」

みことは目を潤ませながら悲鳴をあげ、すちの胸にしがみつく。腕にすがる力が必死で、まるで置いていかれまいとする子どものようだった。


その必死さに胸が締めつけられるようになって、すちは思わずみことの身体を抱き上げた。

「もう走るぞ!」

お姫様抱っこのまま出口へと駆け抜ける。みことは顔をすちの胸に埋め、ぎゅっと目を閉じた。



ようやく外の光が目に入った瞬間、二人同時に肩で息をした。


「……はぁ……怖すぎ……」


みことは涙で濡れた瞳を潤ませながら、すちの首に回した腕を緩めない。


「……俺も怖かったけど……みことが可愛すぎて、それどころじゃなかった」


すちは額にかいた汗を拭いながら、安堵の笑みを浮かべた。


「ば、ばかっ……っ」


みことは真っ赤になりながら顔をすちの胸に埋め、さらに強くしがみついた。



すちはそんなみことの顔を覗き込み、口元に悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「もう一度並ぶ?」


軽い調子で冗談めかして言ったのに、みことはぎょっとしたように大きく首を振る。


「やだっ!絶対無理!……俺、ほんとに泣くから……」


半泣きの声で抗議しながら、袖をぎゅっと掴んだまま離さない。


その様子が可愛くて仕方なくなったすちは、堪えきれずクスクス笑いを漏らす。


「そっかぁ。じゃあ次は俺が驚かしてやろうかな」


「や、やだ…っ!」


情けない声をあげるみことの頭をすちは優しく撫で、安心させるように背中をさすった。



___





みことが少しむくれたように頬を膨らませながら歩いていた時だった。

ふたりの足音に紛れるように、背後から気配が近づく。だが、夢中で会話していたみことは全く気づかない。


「――わあっ!」


突如、背中のすぐ後ろから大きな声。

みことの肩がびくんと跳ね、全身が硬直する。次の瞬間、反射的に隣にいたすちへ飛びついた。


「うわぁっ……! す、すち……っ!」


驚きのあまり腕をがしっと回し、胸に顔をうずめてしまうみこと。

すちは一瞬驚いたものの、すぐに両腕でみことを抱きとめた。

温かく柔らかな体が胸にしがみついてくる感触に、思わず心臓が早鐘を打つ。


すちは目だけを鋭く動かし、声のした方向をにらむ。

そこには、にやにやと口元を押さえて笑うこさめの姿があった。



「っぷは! びっくりした〜??」


悪戯を成功させた子供のように、肩を揺らして笑っている。


その横にいたらんが、半ば呆れ顔で腕を組みながらこさめの頭を軽くこつんと叩いた。


「おい、やめてやれ。こいつ本気でビビってんじゃねぇか」


「えぇ〜? だってさ、あまりに隙だらけなんだもん。脅かしたくなるって!」


「お前の“ちょっと”は全然ちょっとじゃないんだって」


こさめは悪びれる様子もなく舌を出し、らんは深いため息をつく。


一方で、すちはまだ胸にしがみついて震えているみことの背中をゆっくり撫でていた。


「……大丈夫だよ、みこちゃん」


低く穏やかな声に、みことの肩が少しずつ落ち着きを取り戻す。


みことは顔を赤くしながらも、まだ恥ずかしさに逃げ場を失っているのか、胸元に額を押し付けたまま離れようとしない。


「……もう、ほんとに心臓止まるかと思った……」


小さな声でそう漏らすと、すちは苦笑しつつもその頭を優しくぽんと叩いた。


「……ほんと、油断してるとすぐ狙われるね」


「う、うるさい……」と拗ねたように呟くみこと。

その頬の赤みを見て、すちは少しだけ口元を緩めた。





落ち着いた頃、らんは少し真面目な顔で「ちょっとお願いがあってさ」と切り出す。


「お願い?」と首をかしげるすち。


「来月、みんなで集まる日があるだろ? その週……できれば一週間、休み取れないかなって」


唐突な話にみことは目を丸くし、すちは少し驚いたように眉を上げる。だが、らんの真剣そうな表情を見て「……まぁ、なんとかなると思う」とあっさり答える。みことも「俺も大丈夫」と頷いた。


らんは満足げに微笑む。


「じゃあ決まりだな。パスポート持って、空港集合で」


「えっ、空港!?」


「おいおい、旅行か?」


すちは呆れ混じりに尋ねるが、らんはニヤリと笑って肩をすくめるだけ。


「場所は秘密。……でも楽しみにしとけ」


そう言い残して、こさめの手を取り、そのまま歩き出す。


こさめはふり返って「ばいばーい!」と大きく手を振り、にこにこと笑顔を向けていた。

取り残されたすちとみことは顔を見合わせる。


「秘密って……どこ行くんだろう……」


半ば困惑しながらも、妙な胸の高鳴りを覚えていた。


――次の再会は、どうやら特別なものになりそうだった。





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君がいないと生きられない🍵×👑

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