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回復の泉を拠点にしたレベル上げは、思っていた以上に順調だった。
阿部の魔法で魔物が消える。
「よし、次!」
佐久間が勇者の剣を振るう。
「はぁっ!」
康二の拳が魔物を吹き飛ばす。
深澤は必要最低限だけ回復し、残りは補助魔法で三人を強化していた。
最初は一体倒すのにも苦戦していた魔物が、少しずつ楽に倒せるようになっていく。
「レベル上がると気持ちいいね。」
佐久間が笑う。
「分かる。」
阿部も嬉しそうに頷く。
「敵がどんどん弱く感じる。」
康二は拳を鳴らした。
「ゲームって、これが楽しいんよな!」
「もう一回!」
「あと一匹!」
気が付けば四人とも、夢中になっていた。
ゲーム好きな四人にとって、レベル上げそのものが遊びになっていたのだ。
___________
阿部が魔法を放つ。
バチッ。
魔物は悲鳴を上げる間もなく消えた。
「……。」
四人は顔を見合わせる。
佐久間が笑う。
「今、一撃だったよね。」
「うん。」
阿部も少し驚いている。
「普通の敵なら、一発で倒せる。」
康二は楽しそうに笑った。
「ほんなら。」
「もう雑魚は無視してええんちゃう?」
深澤も頷く。
「目的を変えよう。」
「銀色のスライムだけ狙おう。」
「経験値効率が一番いい。」
「賛成。」
それから四人は、銀色のスライムを探して森中を歩き回るようになった。
見つけるたびに。
「あべちゃん!」
「お願い!」
「任せて!」
阿部は毒針を構える。
「えいっ!」
ぷすっ。
銀色のスライムは毎回きれいに命中し、大量の経験値を残して消えていく。
「また当たった!」
「百発百中やん!」
康二が笑う。
佐久間も苦笑する。
「もうあべちゃん専用アイテムだね。」
深澤は呆れたように笑った。
「毒針の命中率じゃなくて、阿部ちゃんの運が異常なんだと思う。」
そんな日々を繰り返し――
ある日。
阿部が冒険者証を開く。
「え?」
「レベル70……。」
深澤も確認する。
「90。」
「俺も90だ。」
佐久間が目を丸くする。
康二も嬉しそうに笑う。
「俺も90や!」
阿部は三人を見て苦笑した。
「賢者って、やっぱりレベル上がりにくいんだね。」
「20も差がついちゃった。」
「でも。」
深澤が肩を叩く。
「あべちゃんの魔法、一番火力あるよ。」
「レベル以上に強い。」
「それは嬉しい。」
阿部は照れ笑いを浮かべた。
___________
泉のそばで休憩しながら、四人はアイテムボックスを開く。
「……。」
「……。」
「……。」
全員が固まった。
佐久間が苦笑する。
「いっぱいだ。」
康二が中を覗き込む。
「武器も。」
「防具も。」
「魔石も。」
「売れるもんだけ残したのに、パンパンや。」
深澤はため息交じりに笑った。
「完全に稼ぎすぎたね。」
阿部も頭をかく。
「ちょっとやりすぎたかも。」
「いや。」
佐久間が笑う。
「“ちょっと”じゃないと思う。」
四人は顔を見合わせる。
そして同時に吹き出した。
「完全にレベル上げしすぎたね。」
笑いが落ち着くと、佐久間が地図を広げる。
「次の街まで半日くらい。」
「そこで装備を全部新しくしよう。」
康二も頷く。
「お金は腐るほどあるしな。」
深澤は魔王城の方向を見る。
「装備を揃えたら。」
「寄り道はなし。」
阿部も静かに杖を握る。
「真っ直ぐ魔王のところへ行こう。」
「うん。」
「今度こそ。」
「ハードモードの魔王が、どれくらい強いのか試してみよう。」
四人は立ち上がる。
その背中には、ゲームを遊び尽くしたような余裕と、仲間への信頼が自然とにじんでいた。
___________
次の街へ到着すると、四人は真っ先に商業ギルドへ向かった。
「売却をお願いします。」
受付へアイテムボックスの中身を取り出す。
魔石。
魔物の素材。
使わない武器や防具。
受付の女性は最初こそ笑顔だったが、積み上がる品物を見て目を丸くする。
「……まだございますか?」
康二が次々と品物を並べていく。
「まだまだあるで。」
しばらくして査定が終わる。
受付の女性が金額を読み上げる。
四人は思わず顔を見合わせた。
「すごい。」
阿部が苦笑する。
「しばらくお金には困らなさそう。」
___________
武器屋では、それぞれが最上級に近い装備を揃えた。
阿部は魔力を大きく増幅する賢者の杖。
深澤は回復効果を高める神官の杖。
佐久間は勇者専用の剣と盾。
康二は軽くて丈夫な武闘着と籠手。
「これで準備万端だね。」
深澤が満足そうに頷く。
その時だった。
「ねぇ。」
深澤が街の奥を指差す。
「あそこ。」
酒場の看板が見える。
「ちょっと行ってみない?」
阿部が首を傾げる。
「前の世界であべちゃんと会えた場所だから。」
「今回はどうかなって。」
「確かに。」
四人は酒場へ入ることにした。
___________
昼間の酒場は静かだった。
冒険者たちが食事をしたり、依頼書を眺めたりしている。
四人は席へ座り、それぞれジュースを注文した。
「こういう雰囲気、好き。」
佐久間が店内を見渡す。
「ゲームみたいだね。」
「ほんまや。」
康二も楽しそうに笑う。
その時。
「……あれ?」
聞き慣れた声が聞こえた。
「もしかして。」
四人が振り向く。
そこには大きな盾を背負った長身の青年が立っていた。
「ラウ!?」
阿部が立ち上がる。
「あべちゃん!」
ラウールも嬉しそうに駆け寄ってきた。
「やっと知ってる人に会えた!」
五人は席へ座り直す。
「ラウも転生したの?」
「うん!」
「目が覚めたらこの世界だった!」
「職業は?」
「パラディン!」
ラウールは嬉しそうに胸を張る。
「でも……。」
急に苦笑いになる。
「レベル。」
「5。」
「5!?」
四人が同時に驚く。
ラウールは頭をかいた。
「敵が強すぎて。」
「倒せなくて。」
「ずっと逃げてた。」
「逃げて逃げて。」
「気付いたらこの街だった。」
「なるほど。」
深澤は納得したように頷く。
「この世界なら普通だね。」
阿部はラウールの装備を見る。
初心者用の盾。
初心者用の剣。
防具もほとんど初期装備だった。
「まずは装備だね。」
「え?」
「お金あるから。」
「買いに行こう。」
「いいの!?」
ラウールは驚く。
佐久間が笑う。
「仲間なんだから。」
「遠慮しなくていいよ。」
康二も親指を立てる。
「任せとき!」
「一番ええ装備買ったる!」
___________
四人はラウールを連れて武器屋へ向かった。
最新の剣。
頑丈な盾。
白銀の鎧。
パラディン用の装備を一式揃える。
「すごい……。」
ラウールは鏡の前で照れ笑いする。
「みんな、ありがとう。」
阿部も笑った。
「似合ってるよ。」
___________
五人は魔王城近くの街を目指して歩き始めた。
道中の魔物が襲い掛かる。
しかし。
「俺が前。」
佐久間が剣で受け止める。
「左は任せて。」
康二が一瞬で敵を倒す。
阿部の魔法で残った敵が消える。
深澤が回復魔法をかける。
ラウールは呆然と立ち尽くしていた。
「……。」
「え?」
「終わり?」
戦闘は数十秒。
魔物は一匹残らず倒れていた。
「みんな。」
ラウールが苦笑する。
「強すぎない?」
阿部たちは顔を見合わせる。
「そうかな?」
「普通じゃない?」
深澤が言う。
ラウールは首を横に振った。
「普通じゃないよ!」
「俺、一匹相手でも逃げてたんだよ!?」
佐久間は笑う。
「じゃあ。」
「ラウは俺たちの後ろにいて。」
康二も笑顔で頷く。
「守るんは俺らの仕事や。」
ラウールは四人の頼もしい背中を見つめる。
(この人たち……。)
(強すぎる。)
(というか。)
(本当に同じ世界から来た人たちなの?)
そんなことを思いながら、ラウールは安心して四人の後ろを歩いていくのだった。
コメント
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第2話、読んだよ!レベル上げに夢中になってる四人の様子、すごく楽しそうでこっちまで笑顔になっちゃった。特に阿部ちゃんの毒針が百発百中なの、笑った(笑)ラウくんが登場したところもびっくりしたけど、装備を揃えてあげる優しさにほっこりしたな。みんなの絆が強まってる感じが伝わってきて、次の魔王戦がすごく楽しみ!
kaede🍁
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