テラーノベル
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「行くぞ。あいつらが待っている。」
「…はい」
立てない。力が入らない。
「どうした」
「……」
立たなければならない。バビルス教師として、いつもの、あの”俺”で。できるはずだ。
「…っ」
立てない。体が言うことを聞かない。
「……立て。」
「……うす」
もう一度、力を込める。
立て。立て立て立て。ーー立て!
「…んで、立てない…! 」
情けない。分からない。怖い。違う。どうして…
「当然だろう」
冷たい声が上からのしかかる。
「自分を騙して立っていられるほど、都合のいいものではない。」
「っ…」
「お前は今、”壊れている”」
ー否定したかった。俺は、違う。
「…問題、ありま、せん。」
やっとの思いで絞り出した声は、かすれてしまっていた。
「…そうか」
1歩近づく音が聞こえる。俺はやはり、教師失格だ。
バチンッ
破裂したかなような音が響いた。頬が痛い。気がついた。俺は、ビンタされたらしい。
「それは教師としてのお前だ。なら、”本当のお前”はどうするのだ」
ー息が止まる。
「…今だけは、教師であることを捨てろ。ここには俺とお前以外いない。 」
「…ただの、お前でいてくれ」
「っ!」
ーその瞬間、距離が無くなった。気が付けば、抱き寄せられていた。
「…今だけだ。こうしていれば周りからも見えない。」
低い声がすぐ近くで落ちる。厳格な声、だけどどこかあたたかい。
「少しくらい頼れ。」
声が震える。
「頼る、なんて…そんな資格、」
「あるだろう」
即答だった。
「親が死んだら、誰でも泣く。」
「っ…」
「泣かない方がおかしい」
ーその言葉が、耐えられなかった。1番、苦しかった。
「…ちがっ、」
喉がつまる。上手く声が出せない。
「わたしは…っ」
違うと言いたい。否定したい。なのに、
「…また、」
声が崩れる。保てなくなっていく。
「また、間違えた…」
ーそこで、切れた。ずっと張り詰めていた糸が、プツンと音を立てて切れていった。
「……っ、あ、」
呼吸が乱れる。
「ぁ、あ……っ」
止まらない。
「ああ…っ、あ”あ”あ”…! 」
声が崩れ落ちる。声も、涙も、何もかも抑えられない。
「なんで……っ」
「なんで、あんな顔で……!」
「なんで、避けなかったんだよ……っ!!」
掴むものもないまま、先輩に縋るように服を握る。
「俺は…っ」
「……わたしは…っ」
「っ、あああああああああああ…!!!」
子どもみたいな泣き方だった。それを咎める声はなかった。ただ、離されることもなかった。
「…」
何も言わず、背中をさすってくれる。その手が、やけに優しい。
「…今だけだ」
もう一度、低い声が響く。
「終わったら、戻れ」
「教師に」
ーーそれだけが、救いだった。
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#魔入りました入間くん
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