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翌朝。
雨はすっかり上がって、
空気がまだ少し湿っている。
教室の窓から差し込む朝日が、
机の上をゆるく照らしていた。
こさめは教室のドアの前で
胸の前でぎゅっと傘を抱きしめて
立っていた。
(……昨日の“すっちー”、
普通に呼んでいいのかな)
頭の中で何度もリハーサルしながら、
深呼吸してから教室に入る。
「おはよ〜!」
こさめの明るい声に、
LANがすぐ反応した。
「おはよ!あ、昨日雨大丈夫だった?
風邪とかひいてない?」
「うん!こさめは元気いっぱいです!」
「いるまくん大丈夫だった?」
と心配した声で聞くとLANが元気に
「少し寝たら治ったとか言って」
「いるまくんらしいね」
いつも通りのテンションで席に
向かう途中、
後ろのほうに座る“彼”の姿が目に入る。
すっちー。
一瞬、心臓がぎゅっとなる。
机の上に肘をついて、
みことと何か話している横顔。
笑ってる。
(昨日もそんな顔してたな……)
こさめは意を決して声をかけた。
「おはよ、すっちー!」
その瞬間。
教室の空気が、ぴたりと止まった。
みことが「えっ!?」って振り返って、
LANが「え、今“すっちー”って言った!?」と笑い出す。
なつは口に入れたお菓子を
吹き出しそうになり、いるまは腕を組んで「……お前ら何驚いてんだよ?」
とぼそっと言った。
こさめは顔を真っ赤にしながら、
慌てて両手を振った。
「ち、違うの!昨日ちょっと話してて、
いいって言ってくれたから!」
「へぇ〜〜〜〜」とLANがニヤニヤして、
「すっちーと話してたんだ?」と追撃。
すちはというと、
その全部を聞きながらも、
頬をかすかに赤くして視線を
逸らしていた。
「……別にいいって言ったし」
そのぼそっとした一言で、
さらに教室がざわつく。
「え〜!?すっちー、照れてる〜!」
「やめて らんらん//!」
こさめは笑いながらも、
心臓が暴れて仕方がなかった。
“ちゃんと呼べた”ことが、
なんだか夢みたいに嬉しくて。
頬を抑えて、こっそり呟いた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
放課後。
部活の時間が始まる前の廊下。
こさめは靴箱の前で、
一枚の手紙を見つけた。
『放課後、中庭で待ってます。
――1年C組 あおい』
(……またか)
苦笑しながら、手紙をポケットに入れる。
モテるのは悪いことじゃないけど、
本当は“その誰か”にだけ見てほしいのに。
そのまま中庭に行くと、
ベンチの前に女の子が立っていた。
「来てくれたんだ、ありがとう!」
「ううん、こさめのほうこそ。
どうしたの?」
「えっと〜!、、あの…、」
「ゆっくりで大丈夫だからね」
「あの!ずっと前から……好きでした!
もしよかったら、付き合ってください!」
まっすぐな言葉に、
こさめは少し困ったように笑った。
「気持ちはすごく嬉しいけど、こさめ
今は誰かを好きになる気持ちにちゃんと
向き合えないんだ」
女の子はしょんぼりしながらも、
「ありがとう」と言って去っていった。
こさめはその背中を見送りながら、
(……俺って、ほんと最低だな)
と小さく呟く。
その時だった。
ふと視線を横に向けると、
中庭の端の方――
同じように女子に呼び出されている
“すち”の姿があった。
女子が頬を赤らめて、
小さな紙袋を差し出している。
すちは少し驚いたように受け取りながら、
穏やかに何かを話している。
(……すっちー、笑ってる)
胸の奥がぎゅっと掴まれたように
痛くなる。
“あんな顔、
自分には向けてくれないのに”。
傘の下で見た笑顔よりも、
今のほうがずっと柔らかくて優しかった。
「……なんだよ、これ」
こさめは息を吐いて、
自分の胸を押さえた。
“モテる”って言葉が急に遠く感じた。
空は夕焼けに染まりはじめていて、
遠くで野球部の声がまだ響いていた。
(……すっちー、笑ってたな)
あの女子に向けていた笑顔が、
何度も頭の中でリピートされる。
心臓の奥がじんじんと熱い。
(なんで、こんな気持ちになるんだろ)
(誰かと話してただけなのに)
手に握っていたカバンの持ち手を、
ぎゅっと握りしめた。
──廊下の角を曲がった先で、
ちょうどすちとばったり目が合う。
「あ、こさめちゃん」
優しく声をかけられて、
その瞬間、喉が詰まった。
(声、出ない)
頭では「お疲れ様」って言いたいのに、
唇が動かない。
胸が、苦しい。
すちが少し首を傾げて、
「大丈夫?」と心配そうに覗き込む。
その距離が近いのに、
言葉は出てこないまま。
こさめは小さく首を振って、
「うん」とだけ笑ってみせた。
──けど、笑えてなかった。
すちは「そっか」と頷いて、
先に廊下を歩いていった。
背中が遠ざかっていく。
そのたびに、心臓が沈んでいく。
こさめは立ち尽くしたまま、
胸の奥の熱を抱えて動けなかった。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
📢せんせー誕生日おめでとうございます
3番目に祝った人が🍍くんで
とても嬉しい😚😚