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確信もなく「大丈夫」と言いきるところは、彼も涼と似ている。
それに「友達」というのも微妙だ。でもその笑顔は、素直に受け入れてしまう程に優しかった。
「ていうかさ、喧嘩したのに怒るんじゃなくて落ち込む所が准君らしいよねぇ。何を食べたらそんな純粋に育つの?」
「いやいや、それは俺も悪い所があったと思うからで……でも何が悪いのか分からないから、……結局愛想をつかされて」
まだ言ってる途中だったが、彼の視線に気が付いて口を噤んだ。
熱が冷めていく。
話を聴くために来てもらったのに、いつの間にか聴いてもらっている。聞き上手な人あるあるだけど、これは良くない。今日だけは、彼の力になりたくて家に呼んだのだ。
「すみません、俺の話ばっかり……加東さんのお話を聴かせてください」
「あれ、もういいの? 俺でよければいくらでも聴くのに」
「いえ。有り難いんですけど、良ければまた今度。……今日は、加東さんの話が聴きたくて」
彼も気を遣ってくれるから話が進まない。だからわざと強めに言った。
「ありがとう。でもごめんね、ちょっと言いづらい話なんだ。准君は創君と玲那さんと親密な仲だろうから、なにか知ってるかなって思って」
「は、はい。何ですか?」
突然出てきた彼らの名前に、不意打ち過ぎて戸惑う。けど、さっきのレストランでの会話から、創達のことの様な気はしていた。
……しかしその内容は、耳を疑うものだった。
「創君と玲那さん、婚約したでしょ。でもあの二人、お互い別の恋人がいるって噂が社内で流れてるんだ」
お互い。……って、それはもしかして。
「ダブルで浮気……ってことですか? あはは、まさか」
「まさか、って思ってるけどね。准君はそういう噂聞いてない?」
すぐに首を横に振った。動揺してないと言えば嘘になるけど、
「それは有り得ませんよ。俺はあの二人のこと、ずっと見てきたから」
誰が何と噂しようと、彼らのことは信じてる。
「あの二人は我が強いから、本当に結婚したくなかったら婚約自体しないと思います。創は責任感の強い奴だから、親の顔を立てる可能性もあるけど……それでも、それだけの為に霧山を巻き込むとは思えない」
創も玲那も絶対にブレないものを持っていて、他人になにか言われたからって簡単に意見を変えるような奴らじゃない。
それがたまにめんどくさい時もあるけど、自分は密かに彼らのことを尊敬していた。