テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
20
14
白いぼうし
二
松井さんは、車をおりて、空き地へ、歩いていきました。
近づいてみると、白いぼうしは、小さな麦わらぼうしでした。
そして、その下から、何かが、せわしなく、動いているのが見えました。
「おや、これは。」
松井さんは、しゃがみこみました。
ぼうしの下には、なんと、一匹の、大きな、モンシロチョウが、閉じ込められていたのです。
チョウは、出ようとして、はねを、ばたばた、いわせていました。
「かわいそうに。だれだ、こんな、いたずらをしたのは。」
松井さんは、ぼうしを、そっと、もち上げました。
そのとたん、モンシロチョウは、ぱっと、外へ飛び出しました。そして、うれしそうに、ひらひらと、五月の青空へ、舞い上がっていきました。
「よかった、よかった。」
松井さんは、チョウを見送りました。
でも、そのとき、松井さんは、はっと、気がつきました。
「これを置いた子は、きっと、また、もどってくるにちがいない。そのとき、ぼうしの下に、何もなかったら、がっかりするだろうな。」
男の子か、女の子か、わからないけれど、一生懸命に、つかまえたチョウだったはずです。
松井さんは、ポケットを、探ってみました。
しかし、チョウの代わりに、入れられるようなものは、何もありません。
そのとき、松井さんは、車の中の、夏みかんのことを、思い出しました。
「よし、これを入れておこう。」
松井さんは、車へ走っていって、あの、大きな、黄色い夏みかんを、一つ、持ってきました。
そして、それを、白いぼうしの下に、そっと、閉じ込めました。
夏みかんは、まるまるとしていて、まるで、大きな、黄色い、お月様のようでした。
二段階 終わり
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!