テラーノベル
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この物語に、政治的意図・戦争賛美の意図はありません。また、現実とは関係はありません。
旧国が出てきます。
原子爆弾の描写があります。
それでもいい人は…先に、お進みください。
日本は、ある者から呼び出されていた。
…大日本帝国・陸軍。アジアの狂犬、狂猫(きょうびょう)とすら言われた者。実際には、弟や父を始め、家族を思いやり、国民を思いやった末に「なにか」で死んでしまい、その後も何年も帰ってこなかった、「人」だ。
日本は、困惑していた。何故、自分がそのような人に呼ばれたのか。恐怖はない。ただただ、首をひねるばかりであった。
しかし、呼ばれて行かない理由にはならない。
日本は、彼の部屋に足を運んだ…
「失礼します…」
そっと部屋のふすまを開けて入り、静かに閉める。部屋に入ると、生活感が出ている風景が、僕を出迎えてきた。
だが、生活感といっても、それは普通のものとは違った。
部屋の隅には机と座布団、机の上には恐らく日記であろう物と文鎮、そして彼が描いているであろう絵がある。机の横には救急箱。さらに薬品が、病院でよく手渡されるような袋に入って横たわっている。それも、一つや二つではない。
空間は圧迫されていないにしろ、ただならぬ何かを感じる。
そうして部屋を見渡している途中、部屋の主と目が合った。
その目は血のように赤く、何かを悟っているかのように、僕を見据えている。片腕は無く、軍服を着用し、物音一つすら立てずに、そこに座っていた。
…その瞬間、声が響く。
「日本。」
「はっ…はい…っ」
汗がじんわりと出始める。息が少々乱れ始める。刹那、もう一度と言わんばかりに声が響いた。
「落ち着け。何も、私は説教をする訳ではない。」
我に返り、ゆっくりと深呼吸をし、返事を返す。「…はい」
「今回呼んだのは、私事ではあるが…」
陸さんは一呼吸置いた後、口を開いた。
┃
「八十一年前。私が、亡くなった原因…」
「原子爆弾について。私の、最期について。
一方的に語ることにはなるだろうが、話しておきたい。」
┃
「へっ…?」
一番最初に出てきたのは、本当に?という疑いだった。彼は、そんな事をする人ではなかった。
いつも秘密主義で、自分のことは何も言わなかった。
ただ…
僕にとって、こんなに重要な記憶はないだろう。
いや、僕だけではない。「日本」という国にとって…というのが正しいだろう。
だから、僕は悩むことなく、こう言った。
「分かりました。聞かせてください…!」
彼は、微かに微笑み…僕に、言葉を投げる。
「…そう言うと、思っていたよ。」
「ここでは、会話を聞かれる。私は、なるべく心配はして欲しくないんだ。ついてきて欲しい。」
「…えっ…どこに行くんですか…?」
「今の所私しか知らないかつ、訪れないところだ。まあ、森の中の、開けたところ…と言ったところか。」
「…!ついて、行きますよ。」
「…ありがとう。日本。」
そうして僕は、彼についていった。
そこは、物語に出てくるような場所だった。
青々と茂っている木々、草花…。
ちょうど椅子のようにそこに生えている切り株。小鳥や野良猫、野良犬から狼や狐、挙句の果てには熊がいるという、生き物の豊かさ。
しかも、どの動物も攻撃はおろか、甘えたいとでもいうような雰囲気をかもし出しているのだ。
「陸さん…ここが、」
「私しか、知らなかった場所だよ。今ので、お前も知ったことになったが。」
陸さんは、ちょうどいい大きさの切り株に腰掛けた。
「そこに、もう一つあるだろう。座りなさい。」
「あっ…はい!」
振り向くと、待ってましたと言わんばかりの切り株があった。遠慮気味に、そこに座る。
彼は、僕が座ったことを確認すると、ゆっくりと手袋を外した。
手は、関節ごとに縫われた跡があった。
「…これ、は…?」
「今回の話とは関係のないものだが…いつか、話す日が来るかもしれぬ。お前以外見ていないうちに、見せておこうと思ってな。」
「そうですか…いつか、話してくださいね…?僕が、『現在国』でいるうちに。」
彼は、ゆっくりと頷く。そして、語り口調に話し方を変え、言葉をこぼし始めた。
「さあ、語っていくとしようか。」
…
これは、軍人としても、国としても死ぬことができなかった…
空虚な、名も無きものの話だ。
コメント
1件
プロローグから重厚な空気感がすごいですね。擬人化された「日本」と軍人・陸さんの対話、それも原子爆弾を主題に据える構図にゾクッとしました。手袋の下の縫われた手の跡――あれはきっと後で効いてくる伏線ですよね。「空虚な、名も無きものの話」というラストの一文が、もう物語の核を予感させてくれます。続きがすごく気になります。あまさん、素敵な世界をありがとうございます。
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#カンヒュイラスト
いちご
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