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みどりいろwith友
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注意事項
この作品は、実在する実況者様の名前を借りた二次創作です。
また、この作品には
・腐要素
・暴力表現
・捏造
が含まれております
日を跨いで書いてるので、内容が矛盾している可能性が大。
コメントでは検索避けのご協力お願いいたします。
上記が可能な方だけお進みください。
______________
丑一つ時。
優しい風が吹いて、熱くなった身体を冷やす。
「あんのクソ上司…ぜったいゆるさん…」
久しぶりに定時で上がれると喜んでいたら、上司から「飲み行くぞ」のオサソイ。
酒は好きだが、それは一人だったり、身内と飲むから好きなのだ。
好きでもない上司と飲んだって苦痛になるだけ。
立場上断ることもできず、そのまま流れるように居酒屋へと連行された。
「あぁ゙〜…きもちわる…」
油モノやアルコールが大量に入ってきて、胃が悲鳴を上げている。
「(コンビニ…胃薬あったっけな…)」
そんなことを思いながら、暗闇の道を進んでいく。
たまに設置されているチカチカと点滅する街灯が地面を照らしている。
「はよかえ…ろ”ッ゙…!?」
ゴンッ——!
鈍い音が鳴ると共に、頭に痛みが響く。
視界が暗転して、何も見えない。
zmはそこで意識を手放した。
◇◇◇
気が付くと、zmは知らない場所にいた。
「は、なんや、これ…」
zmは自分の身体を見た瞬間、顔を青く染めた。
それもそうだ。
zmの身体には至るところに、鎖やら手錠やらが付いていたのだから。
「とれへんっ…」
鎖を引っ張るが、鎖はびくともせずガチャガチャと音がなるだけだった。
そのとき、キイィ…と金属製の扉を引きずる音が聞こえた。
音の聞こえた方へ目をやると、そこには男が一人立っている。
「音が聞こえると思ったらもう起きたんだ?早いねぇ」
語尾を伸ばすような、ゆったりとした喋り方。
「おはよ。ゾムさん」
男はzmの名を呼んだ。
教えていないはずの、名前を。
「……」
「無視なんて酷いなぁ」
男はにっこりと笑って、zmの目の前に屈む。
「あそうだ!ゾムさんにね、プレゼントがあるんだ」
男はそう言って立ち上がり、小さな紙袋を一つ持ってきた。
紙袋の中から取り出されたのは、藍の色をした首輪。
「ゾムさんに似合うと思って買ったんだよね〜」
意味がわからなかった。
俺に似合うと思って?
何を言っているんだこの男は。
「な”、に”言っとん”ね”ん… 」
「やっと喋ってくれたね。ふふ、ほらつけるよ」
男の手がzmのうなじまで回された。
「や、やめ”っ」
カチャリ。
「わぁ!やっぱり…めちゃくちゃ似合ってるよ」
「ッ取れ”っ!」
手錠のされた両手で、首輪を引っ張る。
「…こーら、そんな雑に扱っちゃだめでしょ?もう、悪い子だなぁ」
背筋に悪寒が走った。
表情も、喋り方も、行動も、全て気味が悪い。
「悪い子にはお仕置きが必要かな?」
「はっ”…」
こちらに少しずつ近付いて来て、男との距離は1mを切った。
「…そんなに怖がらないでよ」
男はまるで本気で傷ついたかのように眉を下げ、悲しそうな顔をした。
その表情が余計に気味が悪い。
「俺ゾムさんに酷いことするつもりないのに」
「じゃあ外せや”これッ”…」
喉はかなり乾いていて、掠れた声だけが出る。
男は少しだけ考えるように首を傾げて、困ったように笑った。
「うーん…それは無理かな。ごめんね」
「なん”でっ… 」
「だって逃げちゃうでしょ?」
当たり前だろ、という言葉が喉まで出かかるが、出来る限り刺激を与えたくないので飲み込む。凄い今更だけれど。
言葉を飲み込んだ代わりに男を睨みつけた。
男と目が合うが、どこか嬉しそうにしている。
「でもその代わりにちゃんと優しくするよ?安心して」
そう言って、男はゆっくりと手を伸ばしてくる。
反射的に身体を引こうとするが、鎖がそれを許さない。
「ほら、じっとして」
「触んなッ゙…!」
俺の言葉が聞こえていないかのように、男の手が頬に触れる。
ひんやりとした冷たい感触。
思っていたより優しい触れ方で驚く。
叩かれたりするのかと少し身構えていたので、目を見開いてしまった。
「ふふ、かわいい。叩かれると思った?」
「… …はな”せ」
「えー?」
男は俺の両頬を優しくつついてから、「仕方ないなぁ」と言って手を離した。
「そうだ。喉渇いたでしょ。 水飲む?」
男はどこからかペットボトルを取り出して、キャップを開ける。
そして、またどこからかプラスチック製のストローを取り出しペットボトルの口に差し込んだ。
「…」
「沈黙は肯定として受け取るからね。」
「い”らん…」
「嘘だぁ。喉カラカラでしょ」
図星だった。
けれど、素直に頷くのが癪で、男から顔を背ける。
すると、男は少しだけ強引に俺の顎を掴んできた。
「ほら、いいから。飲んで」
ストローの先が唇に押し当てられる。
このまま吸わないままでいても埒が明かないので、 何か入っていないかと警戒しながら、少しだけ吸った。
生ぬるい水が喉を通る。
zmはその瞬間、僅かに表情が緩まった。
男は満足そうに微笑む。
その顔が、さっきよりも少しだけマシに見えた。
「いい子だね、ゾムさん」
ぽん、と頭に手を置かれ、優しく撫でられる。
zmは吃驚し、肩がビクリと少し跳ねた。
「そうだ。そこ寒いでしょ。部屋行こ」
言われてみればと、周りを見渡す。
zmがいるのは、いわゆる地下室のような場所だった。
窓は無く、壁と床はコンクリートでできていて、電球などは小さなものが一つしか無く、薄暗い。
「へや”ぁ゙…?」
「うん。ちゃんとゾムさん専用の部屋用意したんだ。きっと気に入るよ」
念のためと言われ、目隠しをされた。
一時的に鎖から解放され、足が自由になる。
男の声と手に頼りにしながら…というより無理矢理引っ張られながら歩いていった。
◇◇◇
暫く歩くと「ちょっと待ってね」と声が聞こえた。
ガチャ、と音がなり、扉の向こうへ足を数歩進める。
「ここがゾムさんの部屋だよ」
目隠しを外され、目を開ける。
木製の楕円型テーブル。
セミダブルのベッドと、鉄紺色の毛布。
黒檀の引き出し。
真っ黒なクローゼット。
グレージュ色の壁に、ダークウッドの床。
視界に映るのは、一般的な部屋だった。
なんなら、相場より少し高そうなものばかり。
「どう?気に入ってくれた?」
「…」
「気に入ってくれたんだ!良かったぁ。準備した甲斐があったよ」
男は嬉しそうに笑った。
「ゾムにはこれからここで過ごしてもらうからね。早く慣れるといいよ」
「…」
「そういえば自己紹介してなかったね。俺はらっだぁ。好きに呼んでね」
誰がお前の名前なんか呼ぶか。
そのとき、ブーッブーッ、と音が鳴った。
音の正体はコイツのスマホのようだ。
「…今日はここまで!また明日来るね」
そう言って、男は部屋から出ていった。
「……」
足音が完全に聞こえなくなったことを確認してから、ドアノブに触れる。
外側から鍵が掛かっているようで、内側からは開けられなくなっていた。
「…気ぃ悪…」
身体に疲労が蓄積し、限界が近くなっている。
ベッドに近づき、吸われるように倒れ込んだ。
そのまま瞼が段々重くなって、闇の中に墜ちる。
◇◇◇
「ふぁ…」
小さな欠伸をして、目を擦る。
時間を確認しようにも、この部屋には窓も時計もついていない。
「(…まさか、監視カメラとか盗聴器ついてへんよな…)」
ついていたら自分の行動は全て相手にバレてしまう。
かといって、それらを見つけ壊しても、相手にバレるので結局意味はない。
「(どうしよ…)」
「ゾムさーん?起きてるー?」
扉の向こうから声が聞こえた。
「入るよー?」
ガチャリと鍵の外れる音がして、扉が開かれる。
「なんだ。起きてんなら返事してよぉー」
弾んだ声と一緒に、rdが部屋に入って来た。
rdの手には、ご飯と共にトレーが乗せられていた。
「はい、ご飯。ちゃんと食べないと体壊しちゃうからね」
rdがトレーに乗っていたご飯たちをテーブルに並べる。
テーブルの上に並べられる料理は、 コンビニ飯でもなければ、適当なものでもない。
あたたかみのある、家庭的料理がだった。
「……」
「そんな警戒しないでよ。別に変なもんとか入れてないよ」
「…誰が誘拐犯の言葉なんか信じんねん…」
「誘拐犯だなんて、酷いなぁ。」
rdはテーブルの前に胡座をかくよう座ると、頬杖をついてこちらを見る。
「まあ、いいよ。食べるまで見てるから」
「は?」
「だって食べないでしょ、その感じ」
「(当たり前やろが…)」
誰が自分を誘拐したやつの飯なんて食べるんだ。
rdは本気のようで、zmは渋々箸を取り、 一口、口に運ぶ。
「…」
「どう?」
「……普通」
「なら良かった」
ああ、本当に気味が悪い。 なんなんだこの男は。
zmは黙々と食べ進めていく。
その間、rdはずっとzmを見続けている。
「…見んな」
「えー?別にいいじゃん」
「…食いにくい」
「ふふ。そっか、ごめんごめん」
からかうように笑って言うが、視線は永遠とこちらに向けたまま。
食べ終わる頃には、吹っ飛んでいったはずの疲れが戻ってきていた。
「ごちそうさん…」
「全部食べれたね。えらいえらい」
ぽん、とまた頭に手が置かれる。
「…触んな」
反射的にその手を払いのける。
ほんの一瞬だけ、空気が止まった。
「(…やばいかも)」
少し、やりすぎたかもしれない。
この逃げ場が無い状態ではこちらが不利すぎる。
「……ほんと、素直じゃないなぁ」
くすり、と笑う声。
怒るどころか、どこか楽しそうだった。
「でもそういうとこも好きだよ♡」
ゾワワッ、と背筋が凍る。
「…きっ…しょ…」
「言っちゃってんじゃんw。俺泣いちゃうよ?」
また少し笑って、rdは立ち上がる。
「そうだ、着替えようか」
「…着替え…?」
「うん。ずっとスーツのままじゃ疲れるでしょ」
確かに、今自分が着ているスーツは、2日間着たままなので、シワだらけで着心地も最悪だ。
「ゾムさんに似合いそうなの用意したから」
rdはそう言って、クローゼットを開ける。
中には、シワ一つない綺麗な服がいくつも並んでいた。
「サイズはゾムさんぴったりだと思うから安心してね」
「…なんでわかんねん」
「んー?なんでだろうね」
rdははぐらかすような言い方をする。
「ほら、これとかどう?」
差し出されたのは、落ち着いた色の服。
趣味の悪いものが出されるかと身構えていたが、そんな必要は無く、 むしろ、普通に着られそうなものだった。
「着替えさせてあげようか?」
「…いい。…自分で着る」
「遠慮なんかしなくていいのにぃー」
「…着替えっからこっち見んといて」
「恥ずかしがり屋なんだからぁ。しょうがないなぁ」
rdは弱々しく両手を上げ、後ろを向く。
「見ないから、ほら。着替えな」
zmもrdに背を向けるように、ベッドの方に身体を回した。
「…」
喉元に指先を滑らせて、タイの結びを緩める。
首から引き抜いた布をベッドに投げるように置く。
流れるように、ジャケットのボタンに指をかけ、穴から滑り出させた。
両手でラペルを掴み、重みのある生地を腕から滑り落とす。
そして、ベルトのバックルを鳴らし、革の帯をループから引き抜いた。
最後にシャツを脱ぎ、 先ほど渡された服に腕を通す。
サイズはぴったり、zmにジャストフィットしていた。
「…着替えた」
zmに声に反応して、rdが振り返る。
「お、似合うじゃん。 やっぱ俺のセンスいいわ〜」
「…」
否定するのも面倒で、何も言わない。
「ね、ゾムさん」
ふと、距離を詰められる。
rdとの距離は数十センチ。
「俺のこと好き?」
「…なわけないやろ」
「そっかぁ…。…ははっ」
「何笑っとん…お前…」
「んー?いやぁwふふ」
「……」
zmはrdのことが理解できなかった。
「かわいいねぇゾムさんは。」
否、理解しようとしても理解できない。
そんな状態だった。
「あ、そだ。俺、明日予定入っちゃっていないんだよね。だからゾムさん一人になっちゃうんだけど大丈夫そう?」
「え…」
rdがここから出ていけば、zmは一人きり。
この家から出る絶好のチャンスである。
「大丈夫じゃなさそうなら人呼ぶけど」
「ぃや…ひとり、で大丈夫」
「…そぉ?ならいいけど。」
◇◇◇
「じゃあ行ってるね」
頭に手を置かれるが、とりあえず今はそんなのどうでもいい。
「(はよ出てけ…)」
「…流石に無いと思うけど、逃げようとか考えちゃダメだよ」
rdの雰囲気が一瞬変わるのを、zmは感じた。
「…」
zmは反射でコクリと肯く。
「ん、いい子。出来るだけ早めに帰ってくるね。」
「行ってきます」と言って、rdは部屋から出ていった。
◇◇◇
「……」
アイツが出て行って、きっと十数分は経っているはずだ。
念のため、扉に耳を当て、少しでも音が聞こえないか確認する。
「…出てったか…」
逃げるチャンスは一度だけ。
バレたら終わり。
「…」
今までなく慎重に。
「鍵…」
鍵は内側からは開けられない。
内側のドアノブには鍵穴もサムターンも無く、開けれる手段が見つからない。
「(強豪突破で行くか…?)」
扉に近付き、ドアノブに触れる。
すると、ガチャリ。
「え」
鍵は閉まっていなかったようで、ドアノブは滑るように回った。
rdが鍵を閉め忘れたのだろうか。
「(この好機を逃すわけにはいかん)」
扉を開け、外に出る。
そこには廊下が続いていて、すぐそこには階段があった。
家の作りは、どこにでもあるようなもので、特別改造されたりした家ではなさそうだ。
忍び足で、出来るだけ早く進む。
階段を降りていくと、リビングらしきところに着いた。
「…」
外へ出るドアはまだ見えない。
が、リビングには大きな窓があった。
「鍵開けれる…!」
指先で、三日月型をなぞり、その部分を押し下げる。
すると、カチリと音が鳴って、空気の入れ替わりが始まった。
「(出れる!)」
窓から飛び出て、走って、走って、走って、走る。
行き先なんてそんなもの無い。
とりあえず遠くまで行って、あの家に戻されないようにするだけ。
◇◇◇
あれからどれくらい走っただろうか。
靴なんて履いていないから、足の裏はボロボロで、一歩進む度にズキズキと痛みが襲ってくる。
「は”ぁッ…はぁ”ッ …!」
身体に限界が近付いて来て、歩くのも精一杯だった。
「…にげ、きらな」
zmは気付けなかった。
「あ”ッ゙…!?」
首輪が後ろからぐいっと引っ張られる。
身体が重心を保てなくなり、地面に膝を打ちつけた。
後ろから、聞き慣れた声が聞こえる。
「言ったよね、 逃げちゃダメだって」
「…っ”!!」
振り返ると、そこにはrdがいた。
「なん、で…」
あの家から出て、1時間は走ったはずだ。
なのに
「なん”で、ここに…」
rdは少しだけ首を傾げて、困ったように笑う。
「なんでって…w」
zmは反射的に後ずさるが、意味はない。
「全部見てたからに決まってんじゃん」
「は…?」
「鍵もね、わざと開けてたんだ」
頭の中が真っ白になった。
「外出るかなって思って。試してみたかったんだよね」
「…ゃ、嘘、や…」
「嘘じゃないよ」
くすくすと笑う声。
「気付いてるかは知らないけど、あの家にはそこら中にカメラが設置されてるから 」
そして、rdはzmの首元をとん、と軽く叩いた。
「それに、”コレ”もあるしね。GPS付き♡」
全身の血が一気に冷える。
「ふざ、けっ…」
「ふざけてないよ?」
声調は変わらない。
優しいけれど、気味の悪い声色。
「ゾムが逃げるかどうか、知りたかっただけ」
一歩、また一歩と距離が詰まる。
zmに、逃げ場は無かった。
「で、逃げちゃった」
「…」
「悪い子だね」
今までに無いぐらいに、身体の体温が下がった気がした。
「”ごめんなさい”、しよっか?」
「っ、誰が…!」
zmが言葉を言い終わる前に、rdが腕を思いっ切り引いた。
次の瞬間、視界がぐるんと回り、 頭部に鈍い衝撃が響く。
zmはrdに地面に押し倒された。
「…っ”はッ”…」
「…ね、なんで逃げたの?」
「あたり”っ、まえ”やろ”ッ…!」
「そっかぁ」
少しだけ間が空いて、
「じゃあ、仕方ないね」
首元が締まった。
「ぁ”ッ…!?」
呼吸がうまくできない。
視界が滲む。
「ちゃんと覚えないと。 どこにいればいいのか」
ぐぐ、と力が強まる。
「っ”、ゃ…め”…」
「 逃げるから、こうなるんだよ」
意識が遠のきかけた、そのとき。
首元から手が離れた。
「げほッ”…ひゅ”っ”…はぁ”ッ…!!」
zmは空気を貪るように吸い込む。
「…ごめんね」
ぽん、と頭に手が置かれる。
さっきまで締めていたのと、同じ手。
「でも、ゾムが悪いんだよ」
rdは優しく、zmの頭を撫でる。
「逃げなければ、痛くなかったでしょ?」
息が上手く整えられなくて、言葉が出ない。
「…ほら 足、ひどいじゃん」
rdはzmの身体を起こした。
そして、酷くボロボロになったzmの足に視線を落とす。
「こんなになるまで走って…ばかだなぁ」
rdは本気でzmを心配しているような素振りをした。
「寒いでしょ」
rdは、自身の着ていた上着をzmにかけた。
「帰ろ」
その言葉に、身体が強ばる。
さっきまでの感覚が、まだ首に残っていて。
「(逆らったら…また…)」
「ほら。」
優しく、手を引かれる。
zmはその手を、振り払えなかった。
「……躾が必要かな…♡」
思考が停止してしまったzmに、最後の言葉は、上手く聞こえていなかった。
◇◇◇
「ゾム」
知らぬ間に、自分を呼ぶ名は呼び捨てになっている。
「反省した?」
「…」
「…まだしてないの?」
「…」
返すのは沈黙だけ。
「はぁ…俺もあんまりしたくないんだけどなぁ」
rdはそう言って鍵を開けて、部屋に入った。
倒れ込んだzmの身体を、rdは持ち上げて、頬を撫でる。
次の瞬間、部屋には、鋭い打撃音が響いていた。
「またこんなに腫れちゃって…可哀想」
rdは、またzmの頬を撫でて、その後に優しく抱きついた。
「大人しくしてたらこんなことにならなかったのに…」
とん、とん…と一定のリズムで背中が撫でられる。
「…今日はもう休みな。疲れたでしょ」
「ぇ…」
さっかまで触れていた体温が、急に消えた。
「じゃあね、しっかり休むんだよ」
rdはそう言って、どこかへ行ってしまう。
一人きりの部屋に、取り残される。
自分の早くなる鼓動だけが、頭の中に響いて、先程まで聞こえていた優しい声は、聞こえなくなってしまった。
◇◇◇
zmが浅い眠りから目が覚めると、目の前には知らない男が立っていた。
「へぇ…あんたがゾムさん?」
「は”…あんただッ”!?」
男は勢い良く、zmの鳩尾を蹴る。
「ぉえ”っ…」
髪をガッと掴まれて、頭を上に持ち上げられた。
「案外かわええ反応するやん。それに顔綺麗やなぁ。」
男はニマニマと気色の悪い笑みを浮かべながら、そう言う。
「(いやだいやだ…気持ちわるいっ…)」
元々、rdのせいで精神が崩壊しかけていたzmにとって、この男からの暴力は”とどめ”になった。
◇◇◇
薄暗い部屋の中。
いくつものモニターが淡く光っている。
その映るのは、ボロボロになったzmの姿。
「…ふふ」
rdは頬杖をつきながら、画面を眺めていた。
床に倒れ、蹴られているzm。
痛みに歪む顔。
震える身体。
「ほんっとかわいい…♡」
rdは小さく、満足そうにそう呟いた。
モニター越しに聞こえる鈍い音と、掠れた声。
普通なら目を背けるような光景を、rdは、まるで自分の子供を見るような、微笑ましい目で見つめていた。
「(ゾムはどうするんだろう)」
rdは期待するように、目を細める。
そのとき。
『…ら…だぁ』
「あぁっ…♡」
じわりとrdの口角が上がった。
「(呼んだ。俺のこと呼んだ…!♡)」
rdはそれはそれは嬉しいそうに笑う。
「ちゃんとわかってんじゃん。ゾム♡」
rdは椅子から立ち上がった。
モニターに映るzmは、まだ殴られている。
苦しそうに、息を乱して。
「もうそろそろかな」
ぽつり、とrdの口から零れる。
「迎えに行ってあげるよ…♡」
◇◇◇
zmの意識が飛びかけたとき。
キィ、と扉の開く音が鳴る。
「ねぇ。」
「…」
「早くどっか行ってくんない?」
「…ハイハイ。お望みドーリ」
zmの目の前にいた男は、両手をひらひらと上に上げて、地下室から出ていった。
「…ゾム。遅くなってごめんね」
「ら”、だ…」
「大丈夫。もう大丈夫だからね」
rdは優しく、zmのことを抱きしめる。
「(あったかい…)」
それからしばらく、無言の時間が続いた。
それが何故かとても心地よくて、気付いたらzmは弱々しくも、rdの背中に手を伸ばしていた。
「ゾム。身体、痛いでしょ」
「ぃ、あ”ぃ…」
「喋るのも辛そうなら大丈夫だからね」
「…ぅ…」
「手当しよっか。ちょっと持ち上げるよ」
rdはひょいっ、とzmを抱き上げ、地下室から出ていった。
◇◇◇
「消毒染みるかもけど、頑張ってね。」
アルコールが染み付いた消毒用コットンボールで、腕をぽん、ぽん、と軽く押される。
「ひぅ”っ…」
「雑菌入ったままにしちゃおけないからさ」
「う”ぅ…」
全体の手当が終わり、zmはrdから渡された水を飲んでいた。
「大丈夫?落ち着いた?」
「おん…」
「…ねぇ、ゾム」
rdはzmの隣に座り、距離を縮める。
「俺ね、ゾムのこと…大好きなの」
zmは目を大きく見開いた。
rdはzmの右手に、自身の左手を覆いかぶせる。
「大好き。本当に、愛してる。」
rdは、優しい声で、「ねぇ、ゾムは?」と、問いかけてきた。
きっと、前のzmなら、すぐ否定していただろう。
だが、今のzmは違う。
頭の中には、rdしかいなくて。
身体はしっかりと躾られて。
ただ、rdを求めることしかできなくて。
ここでrdを拒絶したら、見捨てられしまうのではないだろうか。
zmは無意識のうちに、rdを求めて、rdに好意を抱いていた。
「…俺も、好き…❤︎」
rdは心底嬉しそうに笑った。
額に一瞬あたたかいものが触れて、zmは肩を震わせる。
「ら、だぁ…?ん、」
次は、瞼に触れて。
次は、首に触れて。
次は、耳に触れて。
次は、唇に触れた。
「らだ、好き…もう離れんといて…」
「もちろん。これからはずーっと一緒だよ❤︎」
______________
2026⁄3.27~2026⁄4.2
TNT様より、ストックホルム症候群のネタをお借りして書かせていただきました!
前半いい感じだったんですけど、途中でどう終わらせようってなって、結構無理やりで書いてしまいました…
本当に申し訳ないです…🙇