コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ヒュ―――~~~
優しい春の風が吹いているその日、僕はいつも通り学校へ向かっていた。
僕の名前は瀬戸侑里(せと ゆうり)。友達と楽しく話すようなタイプでは無く、一人時間が楽しいと思えるタイプだ。
だから、いつも話すような、仲の良い友達はいない。僕は別に、それでも良いんだけれど。
たぶん、他の人からは「変な人」と思われているだろう。だけど、一人が良い。なぜなら、落ち着くから…
そんな事をいつものように ボォ〜っと考えていたら、学校に着いていた。
…あれ…?不思議だな。
何故か、今日は誰かと話したい気分だ。 でも、そんな日でも、誰も話してくれない。
僕が話しかけないから、それもそのはずなんだけどね。
他の人が話しているのを見ると、少し寂しくなってしまった。
なぜだろう。いつも、一人が好きな僕なのに…
なんで、今日に限って寂しくなってしまうんだろう。
そう思いながら、教室に入る。まだ、誰とも会話をしていなかった。
「おはようございます。」
いつもより、ちょっと明るめに挨拶してみる。
でも案の定、誰も反応してくれなかった。
やっぱり寂しいな….
――椅子に座って、荷物を置いて…
今日は勇気を出して、いつも静かに本を読んでいる中田さんに話しかけてみた。
中田さんとはちょっとだけ話したことがあるから、話しかけやすいんだ。
「中田さんっ」
「? どーしたの?」
「何の本読んでるのかな〜って。」
「あ、これ?これは、植物の本… かな?」
「へ〜〜!」
そうだ、中田さんは、植物が大好きな人なんだった。
いつもこんな本を読んで、勉強に励んでいる様子。中田さんが読んでいる本は、国語辞典みたいな物凄く分厚い本だった。
よくこんな本読めるなーー 僕なら、読む気もしないけどね〜
改めて、中田さんには感激した。
だけど、一つ気になることがあった。
「あのさ、その今開いてるページ、何の植物?」
「これはね…」
そう言って中田さんは、僕にその植物のことを教えてくれた。
どうやら、これは「竹」と「笹」らしい。
その違いや、中の構造についても詳しく書かれてあった。
「中田さん、凄いね…!こんな本読めるなんてさ。」
「そうかな…?意外と見やすいよ?こういう本って。」
そう言いながらも、中田さんは少し嬉しそうな表情をしていた。
普段あまり表情を変えない中田さんだけど、こうやって褒められると嬉しそうにするんだ..!
何だか、当たり前のことが この時だけは凄く嬉しく感じた。
話しかけてみて良かったなー と思えた。
すると、中田さんがこんなことを言った。
「瀬戸くんって、何か静かなイメージあるけどさ、喋ってると楽しいね!」
「! 本当?」
「うん!だからさ、もっと話しかけてみたら良いと思う!きっと友達出来るよっ!」
「そうかな?じゃあ、そうしてみる…!」
「瀬戸くんみたいな人がいると、何か落ち着くんだよねーー。」
「僕も、中田さんといると楽しいよ!」
「そう?」
「うん!」
「ははっw」
「あははw」
僕達はお互いに笑い合った。
「それにしても、今日は色々話してくれてありがとう!楽しかった!」
「僕も楽しかったよ。じゃあ、また明日話そ?」
「そうだね。じゃ、また!」
「また〜」
そんな会話を交わして、学校を出た。
ほんのちょっと、中田さんと仲良くなれた気がした。
帰り道――
「ふぅ…」
今日は凄い楽しかったな… 中田さん、僕と話してくれたし。
良い日だったと思えた。そんな事を考えていた時、いつも聞かない音が聞こえてきた…
ササァ~~~~~~~
「?(何この音…?)」
この音はどこでなってるんだろう…?後ろから聞こえるのは確かなんだけど…
いや、それよりこの音は何なんだ?葉っぱとかの音かな…?
そう思っていたら、誰かが話しかけてきた。
普段、知らない人が話しかけてきたらすぐ反応してしまうのに、今日は何故か、歩く足が止まるだけだった。
「この音、何の音だと思う?ふふっ… 綺麗でしょ?もっと聞かせてあげる。」
「….!」
どうやら、話しかけてきた人は女の人らしい。独特な話し方の人だ。
声は低めで、ちょっと怖い感じもする。だけど、堂々としていて、逆らえないような強い圧も感じる。
僕は、恐る恐る振り返ってみた。
「!!」
「今夜は… 決まりね! ふふっ。」
彼女はそんな事を言った。僕には意味が分からなかった。言葉を返すことも出来なかった。
彼女を見た瞬間、その姿に驚いてしまったから。それもそのはず。彼女は僕より少し背が高くて、綺麗な顔立ちだった。
だけど、恐ろしいぐらいの笑顔を浮かべて、こちらを見ていた。
怖いのか、美しいのか、自分でもよく分からない。ただ、圧がかかっただけだった。
でも、返さないと、話が進まない。この人が誰かも分からないのに 立ち去るわけにもいかないし….
「あの…. すみません、誰ですか__?」
「私?」
「は、はい…」
「私はね….」
“君と秘密の遊びをしに来たの”
「…. 秘密の… 、 遊び…?」
「そう。」
「でも、今教えるのもアレだしねぇ… そうだ!今夜教えてあげるから、花道公園に来てくれない?」
「え…」
急にそんな提案をされて 僕は驚きを隠せなかった。
だけど、僕には 彼女の提案を断る勇気は無かった――
彼女は一体、何者なのだろうか….