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夜になって――
僕は、帰り道で会った彼女に、花道公園に来るように提案された。
今思えば、知らない人からの提案なのに何で断らなかったんだろう。自分で自分に後悔する。
だけど…. あれを断っていたら、僕は彼女の正体を知ることが出来ないだろう。
その時、まずは彼女の正体を知りたくてOKをした。今もそう思っているから、正しい選択だった… はずだ。
「はぁ…」
会うのが嫌になってきた。あの時あんなに怖いと思ったのに、夜に会って「怖い」と思わないわけが無い。
ますます行く気がしなくなった。でも、行かないと…
僕は、勇気を出して家を出発した…
花道公園にて――
「….(来てるかな… あぁ、怖いよぉ…)」
僕はビビリだから、自分で 夜の公園は絶対に行かない!と決めていた。
でも、今日からそれをやめることになるかも知れない。
「あ…」
「こんばんは。来てくれたんだね」
「もちろんです..!」
「そう… じゃあ、ベンチ座りましょ。」
「! は、はい。」
「夜」というだけで、彼女がいっそう怖くなっているように感じた。
だけど、想像していたよりは怖くなかった、、かも知れない。
ベンチで――
「そう言えば、君の名前。聞いてなかったよねぇ?教えてよ。」
「僕の名前は… 瀬戸侑里 って言います。」
「侑里で良〜い?」
「あ、も、もちろんです…」
僕は、女子に「侑里」って言われたこと無かったから、ちょっと嬉しくなった。
…って、あれ…?何で僕、嬉しくなってんだ?
気のせいか、な… そう思い、話を続ける。
「侑里。私のこと、ため口で呼んで話してちょうだい!」
「あ、うん。分かった…。」
僕はそう言われた。だけど、彼女の名前は聞いてないよな…?どこの学校かも分からないし…
色々と聞いてみることにした。
「あのさ、名前何て言うの..?」
「私の名前?ああそっか〜、言ってなかったわねぇ…」
「私の名前はね… 」
“なつみ って言うの。”
「なつみ… 良い名前だね!」
そうやってさり気なく褒めて、話をまた続ける。
「じゃ、私のこと、何て呼んでもらおうかなあ?何が良い?」
「え… じゃ、なつみ で。」
「分かったわ。」
「… なつみ ってさ、漢字、何て書くの?夏に美しい で「夏美」??」
「ううん、違うねぇ。」
「菜っ葉の【菜】に花を摘む、とかの【摘】で菜摘 って読むの。」
「へ〜…!ちょっと変わってる..!」
「ふふっ。」
菜摘は、少し不気味な笑みをもらした。
でもやっぱ、美人なんだよなぁ… 少し長めで、サラサラの黒髪がよく似合っている。
雰囲気はどこか不思議だけど、一緒にいると意外とそうでもない部分もある。
僕はそんな菜摘に、更に質問をしてみることにした。
「じゃあ、どこの学校通ってるの?」
「侑里は?」
「っと… 華川高等学校。菜摘も教えて?」
「私… 高校通ってないの。」
「! そうなんだ… 何か..、 ごめんね…?」
「何謝ってるのよ?何も思ってないけど?ふふっ。 侑里は、これまで会った人の中でも面白いわ。」
「? .. そう?」
「うん。」
「じゃあ良かった!」 「…」
「ってか、今何歳?」
「私? 私、17歳だけど。」
「! 同じだ!高校同じなら、同学年だな!」
「そう… 同学年、ねぇ…」
「…?」
菜摘、“これまで会った人の中でも” って言ってたな..
しかも、高校には行ってない…
同学年って言葉に妙に反応してたし、何か理由がありそうだ。
だけど、あんまり深堀りしないほうが良いと思った。だから、僕から違う話に移った。
「そう言えばさ、僕と会った時、笹みたいな物持ってたよね?あれ、何?」
「アレのことも説明してなかったっけ。私ったら、何にも言ってないね。じゃあ、説明するね?」
「うん。」
アレ….
何故か分からないけど、急に緊張してきた。何を隠しているわけでも無いのに――
いや、そもそも、菜摘の前で隠し事なんで出来ない。そんな事したら….
そんな恐ろしい妄想をしながら、菜摘の話に、ただひたすら耳を傾けた。
「あの笹はね、魔法の笹なのよ?」
「魔法…?」
菜摘の言っていることは、絶対有り得ない事でも本当のことだと思ってしまう。
いやきっと、本当なんだろう..!
「だけど、侑里!!」
「!! は、はいぃ..!?」
「そんな驚かなくても。」
「あはっ、ごめんー」
「…! 侑里が笑ってるとこ、初めて見た。」
「!」
「嬉しいな、見れて。」
「……// 」
「ふふっ。可愛い。」
菜摘の褒め言葉は、他の誰から言われても何も感じない言葉かもしれない。
だけど、菜摘に言われたら何か嬉しい…
『菜摘の言葉は魔法の言葉だ〜〜』
思わずそう思ってしまった。
――僕は今、何の感情を抱いているのだろう…
菜摘の前では何故か、自分に素直になることが出来ない。
僕は….
菜摘のこと…..
「侑里、何してるのよ?ほら、説明するよ?」
「あ、ごめん… ちょっと考え事しててさ。」
「ふ〜ん…」
その話をしたせいか、僕が考えてたことを忘れてしまった。
菜摘、やっぱり不思議な人物…
僕はまた、菜摘の話を聞き始めた。