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私は途端に自分が無防備で隙だらけになった気がした
あまりのショックで、私はよろめき、数歩後ずさりしたが、でも心の底ではいつかはこうなるのではないかと思っていた予感が的中した
俊哉は私を見て、その微笑みを崩そうとはしなかった
まさに悪夢の様だった、1年数か月ぶりに見た俊哉は、結婚していた頃より少し太ってふっくらしていた、顎に肉がついている
しかし彼らしく身なりはきちんとしていて、薄紫色のコットンのシャツに、上品なチャコールグレーのパンツ、ベルトも靴もブラックの皮で出来た上質のものをしていた
いつもブカブカのボックスTシャツにGパンのカジュアルファッションの華奢な柚彦君を見慣れていたせいか、どういうわけかこの人が大きく危険な存在に見えた
途端に深く染みついた苦悩と恐怖と怒りがごちゃまぜになって、わっと虫が体にたかるように、一斉に押し寄せてくる
この感覚こそ、二年間の結婚生活にずっと付きまとっていた感覚だった
めまいがしドッと冷汗がでる
「ここで何をしてるの?」
私の敵意を含んだ言葉に戸惑ったように彼が言った
「君が働いている店に行ったら、店長さんが君はもう退勤したって・・・俺が別れた旦那だって言ったら、君は今退勤したばかりだからここで待ってたら会えるだろうって・・・彼女すごく良い人だね 」
なんということ!榊原さんにはどうにも我慢がならない!
怒りが一気に吹き上がる
彼女には別れた旦那とは、顔も会わせたくないとあれほど最初に話したのに
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