テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第10話
「……私は、何も守れない無能。無能な笛吹ですよ。私は、何もかも……」
そう言いかけた所で、何かの気配を感じた。
「斬り伏せる。そうじゃないと、俺が主人に選んだこの目がお飾りだって、認めてるようなもんだ」
黒猫が、いつの間にか、隣で青い顔をしてベットの上で座っていた。
いつの間にっ……!!
やっぱり、六感を極め無いと……次こそは、もう無い。
「……黒猫。ごめんね」
「何で、謝るんだよっ! お前は、死にかけても尚、剣を握りしめて、戦った。勝った。なのに、なぜ謝る?」
黒猫は怒ったそのままの勢いで、獣化していた。
……獣化。
獣化すると、獣人の五感、筋力がズバ抜けて良くなる。
だけど、使い過ぎると……私の副作用と同じ。
能力の使い過ぎで、色々支障が起こる。
今回は不本意に発動したのだろう。魔法の暴発と同類だ。
「そっか……でも、私はあの時は死にかけたとは思わなかったよ。確かに、危ないとは思ったけど、『小さな希望』を現実にしてきた私なんだ。今回は運の尽きとしか言いようがないけど」
黒猫は、猫の姿になって私のベットに飛び乗った。
黒猫の瞳は、涙でいっぱいだ。
「嫌なんだ。お前が逝くかもしれないって事。俺は、ずっと、一緒に……ッ」
「大丈夫だって。私は命かけで、守ってくれた人ができてしまったたもの、簡単には死ねないわ」
私は、黒猫の頭を撫でた。
……ルイス。私、意地の張り合い――殺し合いは嫌いだけど、生きるよ。勝つよ。無駄にしないよ。
だから、この修羅は私が勝つ。だから、見てて。
私、強くなるから。
私は、空にそう語りかけた後、起き上がって笛を取り出した。
でも、いつの間にか、椅子でうとうとし始めていたミヒャエルさんがパチリと目を覚ました。
「……そろそろ寝たらどうですか? 私は、自分の身の回りの事をできないくらい、ダメ人間ではありませんから」
「いや、覚醒してしまった。後もう少しだけ起きてる」
私は『そうですか』というように、頷いた。
ここの三人を囲うように防音結界を張った。
すぅ〜。ふっ、はっ!
エコ

182
#探偵
橘靖竜
6,553
#オリキャラ
凱
76
上野文
9,247
そんな呼吸をしてから、笛を鳴らした。
魔力を込めてないから能力として換算されない。
私が吹いたのは、どこか懐かしい子守唄。
誰が歌ってくれたのかは覚えてない。どんな関係なのかも、さっぱり。
でも、曲調と音の進み方と……曲については分かる。
そして、それが今世って事。
「上手いな」
「今まで、笛と、剣以外あまりやってこなかったですからね……」
私は、包帯だらけの自分の体を見た。
……クッソ。
なのに……こんなボロボロにっ……!
「ほら、大丈夫だ。お前と同じ事が、できるなんてこの時代には、殆どいない」
「まぁな。これでも、学校で一番の腕っぷしだがなぁ……」
私は無言で、笑顔になった。
悔しさも、痛みも、全部隠してやる。
「……それにしても、作り笑顔、下手だな」
「なっ……!」
「そうだな。こいつは、昔からそうだ」
「黒猫までっ……! しょうがないじゃん。下手でも、笑わないと」
……ルイスも、心配しちゃう。
「俺は、傷は治っても、血は戻らないんだよな……」
「それを私もなんだけど……って、なんで藪から棒に……」
と言いかけた所て黒猫が「ウッ……」と唸りながら、血混じりのお腹に溜まっていた食べ物を吐いた。
私は、背中をゆすりながら、魔法を重ね掛けしようとしたけど、ミヒャエルさんに先を越された。
「駄目だな……三日連続だ」
「えっ……」
衝撃的過ぎて、言葉がでなかった。
「術の反動だ。使い過ぎたんだろう」
術をかけながら、唇を噛んだ。
「……あの、黒猫に先、越されますか?」
「そんな事無い。というか、ハンナも同じくらいに、ボロボロだ」
呆れられながら、ミヒャエルさんは掃除を初めた。
え?
「他人より、自分の心配をしろ。というか、絶対に歩けないような体で、歩けたんだ。というか、普通は立てないぞ」
「えぇ……というか、立ってないと負けですよ。剣を振るわない時点で負けです。なのに、立ってないから立たないわけないじゃないですか」
「は、はぁ?」
「腕や足を四本くらい無くしても、鼓膜を二枚くらい破られても、体に穴が空けられようとも、痛みに襲われようとも、死ぬような毒に塗れたとしても、絶対に立って、剣を振るう。それが意地の張り合いです」
私は、真剣な眼差しでミヒャエルさんの事を視線で刺した。
でも、目を丸くするだけで、魔力の動きに変化は無い。
「はぁ……腕と足は、四本しか無い。鼓膜も二枚だ」
「あははっ! そうでしたね」
私は空笑いをして、黒猫のぐったりとした体を優しく撫でた。
ごめんねっ……
コメント
1件
こはるさん、第10話読みました。 黒猫が涙でいっぱいの瞳で「一緒にいたい」って言ったところ、すごく刺さりました……。ずっと無理に笑ってる主人公を見抜く黒猫とミヒャエルさんの視線、優しいのに痛いほど伝わってきました。 「腕や足が四本なくなっても立つ」って台詞、強くて切なくて。でもそれだけ無理してるのが泣ける……。早くちゃんと休んでほしいです🥀